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72/119

72.



 千の軍勢が奈落の森(アビス・ウッド)に攻めてきている、らしい。

 森の主であもある、精霊のサクヤから状況を聞いた。


「この神木を黒獣……つまりひかげの住処と定めておるのじゃろうな。こっちへ向かって、囲うように攻めてきておる」


 物量作戦ってわけだ。

 こっちの戦闘員はひとりなのにいいことに……。


「どうする、ひかげ」

「……どうもこうも、俺がやる」


 この村には女しかいない。

 訳ありの女達が逃げる、最後の楽園が、木花村このはなむらなのだ。


 みんな戦う力は持っていない。

 戦えるのは……。


「わがはいもいるぞー!」


 すぱーん! とふすまを開けて入ってきたのは……。

 竜魔神、ベルナージュだ。


「ベルナージュ……おまえ話聞いてたのか?」

「むろんだー!」


 小柄で、胸のデカい女だ。

 オレンジ色の髪の毛をしてる。


 一見すると溌剌とした少女に見えるが、その実、凄まじい力を持った竜の化身なのだ。


「わがはいが村を守る! だからひかげは、思う存分に戦えー!」

「!」


 サクヤも同調するようにうなずく。


「村の結界をさらに強固にしておく。ベルナージュもいれば守りは完璧じゃろう。ひかげ、おまえは後ろを気にせず戦うがよい」


 ……聖騎士達の戦いに際して、俺が一番気にしていたのは、このか弱い女達をどう守るかだった。


 波状攻撃をさばきながら、彼女らを守るのはなかなかに骨が折れる作業だと思っていたのだ。


「ひかげくん、後ろは任せな!」

「エステル……」


 にっ、とエステルが笑って、俺を抱きしめる。


「ひかげくんは、精一杯戦って。それで負けたら……そんときゃそんとき! このエステル姐さんが、ひかげくんはわるい子じゃ無いって、訴えまくってやんよ!」


 ……ああ、なんて温かいんだ。

 俺はこのぬくもりを……決して失いたくない。


 だから……。


「……ありがとう。いってくる」


 俺は影転移を使って、村をあとにするのだった。

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