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53.暗殺者、3体の魔神を同時に余裕で倒す




 村の女子たちとアホなことをやった、その日の夜。


 魔神たちが俺の元へと襲来。

 数は3。


 俺はいつものように、村の外、奈落の森の中で、魔神たちと相対する。


「出たわね黒獣! アタシたちはあんたを殺しにきたわ!」

「仲間を殺して……許せないんだなぁ……!」


 犬耳の女は賢狼。

 巨大な女は牛鬼。

 そして……白いスーツを着た男は、名乗らなかった。

「……3柱か」


 賢狼と牛鬼は、俺が魔神を殺したから、その恨みを晴らそうとやってきているそうだ。


「……で、おまえは白スーツ?」

「私は純粋に邪血を戴きに参りました」


 ……白スーツからは、不思議と殺気をまるで感じなかった。


 それに妙な気配を感じる。

 要注意だ。


「……で? 1柱じゃ勝てないからって、3柱で束になってかかってきたのか?」


 賢狼と牛鬼が、額に青筋を立てる。

 白スーツは平静を保っていた。……やはり要注意か。


 俺は賢狼と牛鬼よりも、得体の知れない白スーツへの警戒心を強めていた。


「どこ見てるんだなぁ……!!!」


 牛鬼がいつの間にか、変化していた。

 先ほどまではでかいだけの女だった。


 しかし今は、人間の倍ほどの身長のある、筋骨隆々の、二足歩行する猛牛となっていた。


 牛鬼はその手に大剣を持っていた。

 両手で剣を振りかぶり、思い切り振り下ろす。


 俺はそれを、バックステップで避ける。

 俺の身体能力は、魔神最強の竜神王ベルナージュを越えている。


 ゆえにこいつらごとき攻撃に、後れを取らない……と思っていたそのときだ。


 俺の体が、ブレた。

 目の前の光景が、変わった。


 先ほどまで、目の前には牛鬼がいた。

 だが牛鬼が一瞬にして、俺より速い速度で、消えたのだ。


 どうなっているのだ……?


「もらった!!!!」


 背後から牛鬼の声。

 振り返ることもできず、俺の首に、牛鬼の大剣が襲いかかる。


 ザンッ……! と、俺の首が、牛鬼の剣によって切断される。


「やったわね!」

「……なるほど」


 俺の首は、すぐにくっつく。

 手に影の刀を作り出し、背後にいる牛鬼に斬りかかる。


 その瞬間、牛鬼が消える。

 そこには背の低い賢狼がいた。


 俺は牛鬼の首めがけて刀を振った。だがからぶった。

 賢狼は牛鬼と比べて、背が低いからだ。

 牛鬼の首を狩ろうとしたら、からぶるわけだ。


「死になさい!!!!」


 賢狼が手に闘気オーラを集中させ、それを光線の如く射出する。


 闘気による射撃……闘気砲オーラ・キャノンだ。


 俺は避けない。

 賢狼の光線が、俺の体をぶち抜く。


「勝った!」

「……なわけないだろ」


 俺は影転移で賢狼の後に転移。

 賢狼の首めがけて、刀を振る。


 だがまた賢狼が瞬時に消える。

 そこには小石が転がっていた。


「……なるほど」


 ようやくカラクリが見えてきたな。


「ちょっと! どうなってるのよシュナイダー!」


 賢狼が離れたところで、白スーツの男の名前を呼ぶ。


「……シュナイダー」


 俺は白スーツを見やる。


「……グレンに力を授けたヤツか」

「おや、バレてしまいましたねー」


 白スーツことシュナイダーが、余裕ある笑みを浮かべて言う。

 ……こいつ、名前がバレたというのに、微塵も動揺してないな。


 名前をホイホイともらさない警戒心。

 たとえ仲間のミスで名前がバレたとしても、動揺しない胆力。


 ……ハッキリした。

 賢狼と牛鬼はたいしたことない。

 だがシュナイダーは……警戒すべきだ。


「どうしてアタシらの攻撃が、あの黒獣に当たらないのよ!」


「……そんなこともわからないのかよ」


 あまりに賢狼と牛鬼が、おそまつすぎた。

 俺の動きや術式を、見抜けないとはな。


「なんですってぇ!!!」


 吠える賢狼に対して、シュナイダーが余裕を持って答える。


「おそらくヒカゲくんは、体を部分的に影化しているのでしょう」


 ……シュナイダーにはタネがバレているようだった。


 そう、俺は牛鬼からの一撃や、賢狼からの砲撃受ける瞬間。

 体を部分的に黒獣化。


 攻撃を食らう前に、実体を影にしている。だから首を撥ねられようが、体が吹っ飛ぼうが、元通りというわけだ。


「……おまえ、何もんだよ」


 俺はシュナイダーに尋ねる。

 もっとも、こいつが答えるとは思えないが。


「お初にお目にかかります。私は操網神そうもうしんシュナイダー。十二神将の末席を汚す物です」


 予想に反して、こいつ自分から自己紹介してきやがった。


「……何が目的だ」

「目的? いえごあいさつをと思いまして」


 ヘラヘラと笑いながらシュナイダーが会話してくる。


 いったい何を考えているんだ……?

 不利なのは魔神側だろうに……。


「なにおしゃべりしてんのよ!!!」


 ぱっ……! とまた視界が変化する。

 俺の目の前に、牛鬼が出現した。


 いや……違う。

 俺の位置が、無理矢理移動させられているのだ。


 牛鬼の大剣に、闘気が纏っている。

 影化に気付いて対策してきたな。


 俺は牛鬼からの一撃を受ける前に、自分の影に潜ろうとする。


 ぱっ……! とまた俺の位置が、強制的に転移させられる。


 ちょうどそこに、賢狼の砲撃が襲う。

 さっきよりも強めに闘気をまぜていたのか、少しだけダメージを負った。


「……なるほど。強制的に、相手の位置を入れ替える術か」


「なぁっ!? あ、あんたどうして!? どうしてあたしの全力の砲撃を受けてピンピンしてるのよぉおおおおおお!」


 牛鬼の術とは思えない。

 シュナイダー……?

 いや、こいつからは殺気を感じない。


 ……となると、強制転移は、賢狼の技か。こしゃくな。


「ちょっと! 答えなさいよシュナイダー!」

「……そんなこともわからねーのかよ。賢い犬が聞いて呆れるわ」


「な……なんですってぇええええええええええええええええええ!!! 牛鬼!! 殺せ!!!」


 賢狼が術を発動させる。

 俺はまた無理矢理位置を変えさせられる。

 牛鬼が大剣を振り回しているところに、強制的に転移させられた。


 大剣が俺の体にぶつかる。

 バキィ……!!! と、大剣が折れる。


「う、嘘なんだなぁ!? 全力で込めた闘気の大剣が、こうもやすやすと折れるなんて!!!」


 ……これで全力なのか。

 本当に弱いな。全員ベルナージュ以下だった。


「いったいどんなこざかしい術を使ったのよ!」

「……こざかしい術使ってるのはおまえだろうが」


 また俺の位置が変えられる。

 今度は地中だった。


 ……なるほど、地面の奥深くの土と、俺との位置を入れ替えたのだろう。


 確かにほかのやつらなら、これは即死級の必殺技だっただろう。

 だが……。


 俺は潜影を使って影の中を泳ぎ、地上へと脱出する。


 その際に一瞬で牛鬼の背後を取り、牛鬼を鬼神刀でまるごと消し飛ばした。


「牛鬼ぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!」


 牛鬼は一歩も動けず、反応できず、一瞬で消滅。


 賢狼が勝ったと油断したから、転移が間に合わなかったのだろう。


 ……これで残る魔神は2柱。


「な、なんでよ! 何で生きてるのよぉおおお!?」


「……おまえ、頭悪いだろ」


 俺は影に潜ることができた。

 地中なんて地中奥深くに送り込まれたって、影を潜って窮地をたやすく脱出できる。


「砲撃受けてもピンピンしてるし、地中深くに埋めて窒息しないなんて……あんたバケモノなの!?」


 またバケモノにバケモノって言われた……。


 まあ、もう言われなれた。


 ちら……っと、俺はシュナイダーを見やる。

 さっきからまったく、攻撃に参加してこなかった。


「ちょっとあんた!? なんでシュナイダーのほうばっか見るのよ!?」


「……いや。この程度の攻撃しかしてこないおまえらより、そこの魔神の方が怖いからな」


 得体が知れなさすぎて怖かった。

 不用意に近づけない。


「はあ!? あんたバカなの!? シュナイダーなんて魔神最弱の雑魚よ雑魚!」


 とは賢狼が言うが、バカ正直にその言葉を信じられなかった。


「ちょっとシュナイダー! あんたもぼさっとしてないで、手伝いなさいよ!!」


 白スーツのシュナイダーは、優雅に微笑みながら言う。


「いやしかし賢狼様。私はあなた様のいうとおり、魔神最弱。あなた様がかなわぬ相手に、私がかなうわけがないと思いますが」


「……そうだよ。おまえ、アホだろ」


 すると賢狼がピキッ! と青筋を立てる。

「……もういい。ぶっ殺す!!!」


 賢狼の闘気量が、跳ね上がる。

 賢狼は巨大なオオカミへと、変貌を遂げた。


【何世紀ぶりかしらね! アタシが全力を出すなんてね!!!!】


 こぉおお…………と賢狼が口に闘気を集める。


【牛鬼の、みんなのかたき! 死ねぇええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!】


 ゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!


 闘気が巨大な光線となりて、俺の体に襲ってくる。


 俺は右手を差し出す。

 俺は右手だけを黒獣化。


 黒獣となった右腕が、賢狼の光線を飲み込む。


【なぁ……!? ど、どうなってるのよ!? アタシの全力を受けて、なにぴんぴんしてるのよぉおおおおおおおおおおおおおお!!! なんなのよあんたぁあああああああああああああああ!!!!!】


 俺はそのまま、右手を広げる。

 俺の手が黒獣の頭になる。


 黒獣の頭部は、巨大化する。

 大きく口を開き、賢狼を、光線ごと飲み込んだ。


 俺は右腕を元に戻す。

 これで襲ってきた牛鬼、そして賢狼を倒したことになる。


「おおっ! すさまじいですね」と、シュナイダーが言い終わる前に、やつの背後に、【俺】が出現。


【俺】はシュナイダーの首を、影の刀で切り落とす。


「……死んだか?」


 今の【俺】は、織影で作った俺の影人形デコイだ。


 賢狼が倒されるシーン。シュナイダーの意識を本体と賢狼にさかせている間、その間に影人形を【影繰り】で操って、倒したというわけだ。


「……なわけないな。出てこいよ」


 俺が言うと、森の木の陰から、白スーツが出現した。


「おや、バレてましたか♡」

「……バレてねえよ」


 俺は影探知という技を使える。

 かなり高性能のレーダーだ。


 少なくともこの森にいる生き物なら、すべての位置を把握できる。


 ……だのに、この2体目のシュナイダーの存在に、まったく気づけなかった。


 こんな至近距離にいるというのに……。


「……今死んだヤツは、影武者か?」


「いいえ。それもまた【私】ですよ。あなたは襲撃に来た魔神三柱を見事撃退しました。いやぁ、お強いですね♡」


 俺は警戒心を強める。

 探知にひっかからなかったこと。

 もう一人のシュナイダー。


 ……この白スーツ、やはり侮れなかった。


「そう警戒なさらないでください。私はお話をしに来たんです」


「……話、だと?」


 ええ、とシュナイダーがうなずく。


「ヒカゲさん。私は牛鬼や賢狼と違って、あなたとお話をするべく、はせ参じたのです」

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