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47.暗殺者、かたき討ちに来た義母を服従させる



 風神と雷神を倒したその日の夜。


 俺の元に、見知った人がやってきた。

 火影の関係者だ。


 グレンを産んだ女暗殺者、【くれない】。

 彼女が俺の元へとやってきたのである。


 場所は村近くの神社。

 俺は正面に座るくれないを見やる。


 くれないは女性にしては、身長は高い。

 長くつやのある黒髪。前髪で右目を隠している。


 左目のつけねと口元には泣きぼくろ。

 白い肌に……そして特徴的なのが、恐ろしくふくよかな乳房だ。


 この村一番の爆乳アリーシャと比肩するくらい、でかすぎるおっぱいをしていた。


「ヒカゲさん。このたびは息子が、大変ご迷惑をおかけしました」


 くれないが深々と、俺たちの前で頭を下げる。


 息子、つまりグレンのことで謝罪に来たというわけだ。


「……頭を上げてくれ。俺は別に、なんとも思ってねえしさ」


 迷惑とは思ってない。まあ面倒だなくらいは思ったが。


「……それに、悪かったな。グレンを、その……」


 殺して、とは言いにくかった。

 

 向こうからしたら息子を殺した殺人鬼にくせに! と内心で腹を立ててるかもしれないけれど。


 ピクッ、とくれないが体を震わせる。

 こわばった表情をした後、ふるふると首を振る。


「いえ、あの子は自業自得でした。部下や父……夫の命を私利私欲のため利用し、彼我の実力差を見誤り、最後は散った。……当然の結果だと思います」


 淡々とくれないが言う。

 なんだ、思ったより怒ってないのか……?


 妙だった。息子が殺されたって言うのに、嫌に冷静じゃないか……?


「ひかげさんにはなんとお詫びしたら良いのか……」


「……別にわびなんていらねえよ」


 そうですか、とくれないがホッと安堵の吐息をもらす。


 謝罪して許されて安心したのだろうか。

 まあ別にこっちはくれないのことを糾弾する気はさらさら無かったしな。


「……火影の里は今どうなってるんだ?」


 俺は気になっていたのだ。


 今、親父が死にかけている。

 次期後継者に俺を選んだ。

 グレンはそれを妬んで襲ってきた……くらいしか、情報が入ってないからな。


「里の人間は今、混乱しています」


 くれないが語ったところによると、里の人間は大きく2つの派閥の分断されているらしい。


 グレン派閥は、俺に恐れをなして火影を抜けどこかへ逃げた。

 

 残りはみな、次期党首である俺を熱烈に支持している。


「……なんで俺を支持しているんだ?」


「グレンの部下から、ひかげさんの強さを聞いたのでしょう。当主に求められるのはまず何よりも強さですからね」


 なるほど……厄介だ。


「……俺は当主をやる気なんてさらさら無いぞ」


 俺は自分と、恋人と、その大切な人たちを守ることで手一杯だ。


 出て行った里のことなんて、構っていられない。


「しかしグレンが……死に。シンラ様は病床に伏しているとなると、残りはヒカゲさんが継ぐしかありません」


「……別に火影は世襲制度じゃないだろ」


「ですが当主が指名し、なにより火影頭領の証である影呪法を身につけているのはあなたしかいません」


 別にリーダーなんて誰がやっても同じような気がするだけどな。


 くれないは俺に当主をやらせようとしている。そこを譲る気は無いらしい。


 どうしてもやってくれと何度も頭を下げてくる。


「……少し考えさせてくれ」


 結局、検討すると言って、話を先延ばしにすることにした。


 具体的な解決策は見つからないが……まあ、今はいいか。


「……遅くなったな。里まで送る」


 ぞ、といおうとした……そのときだ。


 ぐらり……と、俺の体が、傾いたのだ。


 なんだ……? と思う前に、俺の体は地面に倒れ伏した。


「ようやく効いたようですね。私の【花炎かえん呪法】が」


 冷たい声音で、くれないが言う。

 その目には先ほどまではなかった、明確な殺意が、ありありと浮かんでいた。


 立ち上がるくれないの周囲に、炎の花がいくつも咲いている。


「……呪毒か」

「ご明察。私の炎の花の毒は、相手に気取らせないよう静かに相手の体をむしばんでいくのよ」


 くれないが懐から小刀を取り出す。


「……何が目的だ」

「決まっているでしょう? 息子のかたき討ちだ!!!!」


 小刀を両手で持って、くれないが振りかぶる。

 そして俺に向かって、小刀を振り下ろす……が。


 ビタッ……! と刃が俺に触れる前に、止まる。


「な、なんだっ!?」


 魔王から仕入れた対物・魔法障壁が自動的に発動したのだろう。


 女程度の腕力による攻撃など、俺が闘気で防ぐまでもなく、スキルで自動で防いでくれるのだ。


 俺は素早く呼吸を整え、闘気を練る。

 体の中の毒を闘気で中和する。


 闘気は身体強化の応用で、こうして体内に入った異物(毒物)を取り除くこともできるのだ。


 体の自由を取り戻した瞬間、俺は闘気をさらに練る。

 するとくれないは、俺の体からあふれ出る闘気によって吹っ飛ばされる。


「ぎゃっ……!!!」


 神社の壁を突き破り、外へと吹き飛ばされていった。


 俺は立ち上がって、外に出る。


「ゲホッ……! ゴホッ……! な、なにをされた……。透明な何かに……げほっ! ごほっ!」


 くれないはその場に倒れ伏し、一歩も動けないようだった。


 当然だ。闘気を使えない体で、闘気をもろに受けたのだ。


 瀕死の重症を負って当然だった。


「……俺を殺そうとしたんだよな。グレンの、かたき討ちか」


 バカなことをする。

 グレンの部下から、俺の強さは聞いてるだろうに。


「そうだ……息子を殺したおまえを……許すわけがないだろうが……!」


 くれないが強い恨みと殺意の波動を飛ばしてくる。


 子供のかたき……と言われても、俺は別に何もしてない。向こうが勝手に俺を殺しに来て、返り討ちにあったんじゃないか……と言いたくなる。


 なのに俺のせいにされる。……理不尽だ。

 俺はくれないに近づく。

 右手に影の刀を作り出す。


「南無三……!」


 くれないが炎の花吹雪を飛ばしてくる。

 必殺の奥義だろうが……俺の前では児戯に等しかった。


 俺はかるく刀を振る。

 それだけで、膨大な量の花吹雪は、一瞬でかき消された。


「……ばけものめ」

「……よく言われるよ」


 今のでくれないは戦意を失ったようだ。

 ぐったりと脱力する。


「殺すなら殺せ。だが忘れるな。私の死後、貴様を呪ってやる」


 強い憎しみを込めてくれないが言う。

 死後なんてあるわけないだろうに。


 俺は敵であるくれないを葬ろうとした……そのときだ。


【ご主人様。お待ちください】


 俺の影から、ひとりのダークエルフが出現した。


「……ヴァイパー。何のようだ?」


 俺の式神、影エルフのヴァイパー。元魔王の側近のその女が、俺を呼び止める。


「ご主人様。この女を処分なさるのですよね?」

「……まあな」


 向こうは殺す気できた。

 逃げる気も無いようだしな。


「でしたらこの女の処遇、わたくしにお任せしていただけないでしょうか?」


 ヴァイパーがよくわからないことを言う。


「……こいつをかばうのか?」


「いいえ。そんな気はさらさらありません。ご主人様を殺そうとした罪は、万死に当たると思います」


「なら……」


「ですがこの女……」


 にぃ……とヴァイパーが笑うと、くれないのそばまでやってくる。


「とてもわたくし好みの体と顔、そして性格をしていますの♡」


 ……。

 …………。

 …………ええっと。


「つまり……どういうことだ?」


「この女をわたくしのペットとして飼うことをお許しいただきたいのです」


 つまりどういうことなんだよ!


「わたくし男も女もいけるいわゆるバイセクシャルなのです。見てくださいこの女のムチムチボディ。しかも人妻。しかも気が強そう!」


 うっとりとした表情で、ヴァイパーが言う。


「こういう女を力ではなくテクニックで骨抜きにし、身も心も屈服させ、わたくしなしでは生きていけない体にする……ああなんて楽しそうなのでしょう!」


 ……よくわからないが、こいつが変態だってことはよくわかった。


「もちろんご主人様に二度と逆らわないよう、この女を調教いたします。わたくしのかわいいペットとして、この女を飼うことをお許しいただきたいのです」


「…………」


 さて、どうするか……。

 俺は別に女だからと言う理由で、俺を殺そうとしてきた敵に容赦するつもりはない。


 くれないは俺を殺す気で襲ってきた。

 つまり敵だ。


 で、敵として俺はくれないを排除するつもりだった……が。


 まあ確かに血が繋がってはいないとは言え、この女は俺の関係者だ。


 殺すのは……寝覚めが悪いな。


「……わかった。好きにしろ」

「ありがとうございます♡」


 そう言って、ヴァイパーがくれないに回復魔法を施す。


 そして一瞬にしてくれないの服をひんむき、裸にする。


「ちょっと何するのよ!?」

「ペットが服を着ているのはおかしいでしょう?」


 ぱちんと指を鳴らし、首輪を出現させる。

 魔法でくれないの首に、それを着ける。


「さあいきましょう、かわいいワンちゃん♡ あなたをわたくしと、そしてご主人様の言うことを何でも聞いちゃう立派なメス犬に調教して差し上げますわ♡」


 うふふと笑うヴァイパー。

 ヴァイパーは裸のくれないを羽交い締めにし、俺の影の中に沈んでいく。


 ……その後俺の影の中で、女の艶っぽい悲鳴が何日も続いた。


 そして数日経った後。


「旦那様ぁ~♡」


 ……と、ヴァイパーが、すっかり調教されたくれないを連れてきた。


 その目に俺を憎む色は宿っていなかった。

 目に♡を浮かべて、俺に完全に服従していた。


「……ヴァイパー。とりあえずこの女に服を着させろ」


 全裸に首輪だけの女を連れて歩くわけにはいかないからな。


 くれないはヴァイパーの意向で、おそろいのデザインのメイド服? とでもいうのか、それを着ることになった。

 

 ……かくして、俺の部下? がまたひとり増えたのだった。

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