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41.暗殺者、暗殺者集団を余裕で壊滅させる



 鳳凰を討伐した翌日。


 街に偵察に出ていた妹・ひなたから、火影の里が動き出したという噂を聞いた。


 とは言え俺は村から動く気はさらさら無い。向こうが来るのを出迎えることにしよう。


 俺は神社にて迎撃態勢を取る。

 目を閉じて、強化した【影探知】を使用する。


 いくら気配が消せるからといって、人間である以上、影を消すことはできない。


 俺の進化した【影探知】は影そのものを探知する。


 火影の人間たちは、俺の寝首をかくためだろう、夜中にやってきている。


 森の中に置いてある影式神たちを、火影たちは倒していく。


 なるほど。火影の里の人間は、腐っても極東人。


 モンスターくらいなら容易く倒せると言うことだろう。


 ……なら、これならどうだ。


 俺は新しい影式神を出す。

 影の魔神……つまり【影魔神】たちだ。


 山羊バフォメットめずししがみほうおう


 俺の取り込んだ魔神たちだ。


 1匹1匹が魔王を超える強さを持つ魔神。

 それを4柱を、奈落の森の中に解き放つ。


【うぎゃぁあああああああああああああああああああ!】


【な、なんだこのバケモノぉおおおおおおおおおおおおおお!】


【ひぎぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい! グレンさまぁああああああああああ!】


 俺は式神の目と耳を通して、火影の里の人間たちの動向を見守る。


 山羊頭悪魔バフォメットが、馬頭めずが、猪神ししがみが、地上の暗殺者たちをなぎ払っていく。


【影繰り】で俺が操るまでもなく、自動的に、魔神はその圧倒的なパワーを持って、暗殺者たちを次々と屠っていく。


【たすけ……べぶっ!】


 山羊頭悪魔と馬頭が、敵をわしづかみ、その口に運んでボリボリと食べる。


【こ、こっちに来るなぁ! ひぎいいぃいいいいいいい!】

【うぎゃぁああああああああ!】


 猪神は猪突猛進に、暗殺者集団をひき殺し続ける。


 ひゅ~~~~…………………………。

 ドガガガガガガガガガッ…………!!


【あぢぃよぉ!】

【背中が! 背中が燃えるぅううううううううううううう!】

【おたすけぇえええええええええええええええええええ!!!】


 鳳凰は空中から【溶岩の雨】を降らせる。

 火影は今回、かなりの数を投入しているようだ。

 グレンのやつ、よほど火影の当主になりたかったのだろうな。


 だがしかし、グレンの部下は、俺の式神を前に歯が立たないようだ。


【こ、これは式神なのか!? ヒカゲの!】


【バカな! やつは影呪法を使えるだけの雑魚だったはずだろ!?】


 知った顔の暗殺者が、影魔神たちを見て驚愕している。


 まあ……昔は弱っちかったからな、俺。


【信じられねえ! こんなバケモノを従えるとは……】

【アイツの方がバケモノだ! さ、逆らったら殺される!?】


【お、俺は逃げるぞ!】

【俺も!】


 魔神たちの大暴れっぷりに腰を抜かしたのだろう。

 グレンの部下たちが、蜘蛛の子を散らすかのように、逃げていく。


 ……逃げていくやつらは追わない。

 彼らには【別の任務】があるからな。


 グレンに、俺がどの程度の力を持っているかを、伝えるという任務だ。


 魔神たちを従えている報告を受けて、グレンが俺の命を諦めてくれる……作戦だ。


 さて、臆病な暗殺者たちは逃げていく一方。


【貴様ら! このままオメオメと逃げ帰っては火影の恥! そしてグレン様の顔に泥を塗ることになるとわからぬか!!】


 と、逃げないヤツもいる。

 度胸のある暗殺者もいるってことだな。


 そういうヤツに限ってなかなかの強さを持っていたりする。猛者もさってやつだな。


 猛者たちは影魔神たちの間を抜けていく。影魔神の欠点は、その図体のでかさだろう。

 火影の暗殺者は小回りがきく。

 魔神たちの動きの隙を縫っていくことは可能。


 しかし……。


 俺は手印を組む。

【織影】を発動。


 暗殺者たちの影を刃に変えて、そのまま彼らの手や足を切り飛ばす。


【ぎゃぁああああああああああああああああああああ!】

【腕がっ!】


魔銀ミスリルを織り込んだ鎖帷子くさりかたびらをこうも易々と!】

【畜生! 化けものめぇ!】


 影の刃に【闘気オーラ】を混ぜている。


 魔銀だろうがなんだろうが、そんなもの無いに等しい。


 闘気は闘気でしか防げないのだからな。


 手足を欠損させた後、俺は魔神たちを使って掃除。


 逃げるものは追わない。

 立ち向かってくるもの……つまり、俺を殺す気まんまんのやつらは魔神に処理させる。


 ……火影は暗殺者集団。

 対象である俺は必ず殺すつもりでやってきている。


 黒獣といういもしないバケモノを倒しに来た冒険者たちと違って、暗殺者たちは【俺】という敵を明確に認識している。


 俺をハッキリと殺しに来ている。

 だから俺は容赦なく降りかかる火の粉を振り払う。


 かといって俺は快楽殺人者ではない。

 あくまで俺は突っかかってくる敵を払うだけ。


 逃げるものは逃がしている。

 それでもまだ立ち向かってくるものには迎撃する。


【畜生! あのバケモノを倒すには、俺たちもバケモノになるしかねえ!】


【グレン様ばんざぁああああああああああああああああい!!!】


 かっ……! と奈落の森が光り輝く。


 そこには様々な炎の獣たちが、並んでいた。


 ……火影の人間たちは、みなその体の中に【霊獣】を飼っている。


 霊獣たちから異能の力を引き出しているのだ。そして【黒獣化】同様、みな霊獣に体を分け与える【霊獣化】の自爆術式を使える。


 炎の獣集団が、森と魔神を燃やしながら、疾駆する。


 ……まあ、だからなんだって話なんだがな。


 俺は影の中から、【鬼神刀】を取り出す。

 刀の柄に、【影繰り】の糸をつける。


 そして釣りをするように、自分の影に向かって、鬼神刀を放り投げる。


【影転移】を使って、炎のバケモノたちの影に、鬼神刀を転送。


 影繰りを使って、鬼神刀を操る。

 回転させながら炎のオオカミの首を削り取る。


 次にまた影にもぐらせ、今度は炎の亀の土手っ腹をぶち抜く。


 さながら釣り糸につけた疑似餌ルアーのように、俺は遠隔で鬼神刀を操りながら、雑魚たちを倒していく。


 ただの影の刃は、炎のバケモノたちに効かないからな。こいつら実態のない炎の化け者どもだし。


 だから空間ごと削り取る鬼神刀を使って倒すのだ。わざわざ出向く必要は無い。


「……弱かったんだな、あいつらって」


 火影の里にはたくさんの優秀な暗殺者たちがいた。

 みな俺より強い奴らばかりだった。


 当主の使う影呪法は強力だった。

 だが俺のは里の奴らの炎呪法に完全に負けていた。


 だが……今ではやつらを、俺は圧倒できていた。

 暗殺者たちの炎なんて、俺の影の前では何の役にも立たない。


 さて。


 霊獣化した暗殺者たちは、あらかた始末した。


 あとは【逃げ遅れたやつら】の処遇だな。


 俺は式神の目を使って、逃げようとしたけど、逃げられなかった奴らを見つけ出す。


 ヴァイパーの治癒魔法と、俺の【超再生】を使って、そいつらの治療を施す。


【お、おまえ? なんだっておれらを治す真似をする……!?】


 治療を終えた暗殺者のひとりが、式神を通して、俺に言う。


「……戦意のない人間をいたぶる趣味はない。とっとと消え失せろ」


【くそぉ! なんでだよ! おまえなんてたった数年前はおれたちにかなわない雑魚だったじゃねえかよぉ!】


【どうしてそんなバケモノじみた強さを手にしたんだよ! 何かインチキしたんだんだろ!!!】


 ……こいつら。

 なおしてやったって言うのに、礼も言わないのかよ。……まあ、いいけどさ。


「……インチキなんてしてねえよ。地道にレベルアップして今があるんだ」


 奈落の森で1年半、魔王、魔神などを倒していき、俺は一歩ずつ強くなっていったのだ。


 一足飛びになんて強くなってない。

 インチキなんてやってないのにな……。


「……いいからとっとと失せろ。グレンに無駄なことすんなって伝えておけよな」


 アイツのバカな命令に従って、何人部下が死んだと思ってやがるんだ。


【畜生! ただですむと思うなよ!】


【そうだ! 我らがグレン様が、かならずや卑怯者の貴様を葬り去ってくれる!】


 ……卑怯者って。

 いやまあ、魔神たちに戦わせ、俺は安全な場所で操作していただけだからな。


 そりゃ卑怯者として認定されるか。


「……いっておくが俺はグレンより強いぞ」


【ハッ……! せいぜい減らず口をほざいているがいい!】


【グレン様は強いんだ! 貴様なんかよりもずっとずっとなぁ……!】


 暗殺者たちはそう言い残すと、里に向かって帰って行った。


 ヴァイパーがやつらを魔法で殺そうとしていたので、止めた。


「ご主人様。なぜ止めるのです?」


 いらだちげにヴァイパー。


「……無駄な殺生はしない」

「しかし……しかしやつらはご主人様を愚弄しました!」


「……別に良いよ。あんなやつらに何言われても、俺はなんも思わないさ」


 かつての俺は、あの程度の言葉に傷ついていただろう。


 だが今の俺には、核である守りたい物がきちんとある。だから何を言われようと傷つかない。


 俺は俺の、守り神としての使命を果たすだけだからな。


「ごしゅじんさま……ご立派でございます……」


 ぐすぐす、とヴァイパーが涙を拭く。


「……しかしここまで派手にやったんだ。グレンのヤツ諦めて……くれるわけないか」


 はぁ、と俺はため息をつく。

 もはや人間相手に苦戦をしなくなっていた。

 

 今は魔神たちの相手をしているのだ。

 人間グレンたちになんて構っている時間は無いって言うのにな。

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