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【完結】影使いの最強暗殺者〜勇者パーティを追放されたあと、人里離れた森で魔物狩りしてたら、なぜか村人達の守り神になっていた〜  作者: 茨木野
2章

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39.暗殺者、魔神を遠隔で楽々と撃退する



 エステルと川で泳いだ後。


 お昼前に、魔神の襲撃があった。

 

 魔神はまたご丁寧に、空から降ってきた。

 その瞬間、村長サクヤとともに作った【迎撃システム】が作動。


 俺はすぐさま手印を組み、戦闘態勢に入る。


 まず俺は【影式神】と【五感共有】スキルを使い、やってきた魔神を、【式神】の目を通して見やる。


【クソッ! ここはどこだー!? この真っ暗空間はなんだー!?】


 そこには巨大な白いイノシシがいた。

 また脳みそ筋肉っぽい。

 これなら、遠隔迎撃システムの動作テストができるな。


 俺は村の中、祠にいながら、魔神と戦う。

「……魔神か?」

【そうだっ! 猪神(ししがみ)だ! 出てこい!!!】


 魔神・猪神は現在、俺の出した【影領域結界】の中にいる。


 なぜこいつが【領域結界】内にいるかというと、俺とサクヤが作った新しい結界が正常に作動しているからだ。


 何度も魔神などから、上空からの侵入を許してきた俺たち。


 そこで俺はサクヤと協力して、新しい結界を作成したのだ。


 俺の【能力統合・変質化】スキルを使い、サクヤの巨大な結界に【影転移】と【影領域結界】を組み合わせた。


 やってきた魔神が結界に触れると、神社近くに設置した【影領域結界】へと転送される仕組みになっている。


 これなら結界がいちいち破壊されない上に、俺に有利な条件で戦える。


 もっとも、領域結界を破壊するほどのやつだった場合は、俺はそこへ赴いて直接バトルする必要がある。


 ただこの猪神は、あまり強くないみたいだ。俺の結界を破るほどの技術は無い。【闘気(オーラ)】の量も俺以下。


 まあ雑魚だ。


 なのでこいつには、動作テストの良い実験台になってもらおう。


【ぬぅうん! 地面が沈むだとー!】


 領域結界内は全方位影となっている。

 入った瞬間、【影喰い】が発動し、地面が影の沼となる。


 そのまま沈んでくれれば良いのだが、猪神はダッシュして沈むのを回避する。ああそうかい。


 影沼で沈まないと、【織影】が自動で発動。

 四方八方から、影の槍が突き出て猪神を串刺しにする。


【影領域結界】も、【闘気(オーラ)】を流すことで進化した。

 こうしてあらかじめ、発動する術をインプットすることができるようになったのである。


 今回は影沼で沈まないということを条件に、【織影】による【影の槍】が生成するようになっているのである。


【こしゃくなぁ! ふんぬー!】


 刺さっていた槍がすべて吹き飛ぶ。


【ふははっ! どうだこれぞ我が必殺の【全反射(フル・カウンター)】よぉ!】


 ヴァイパーから聞いた情報によると、触れた物体(物理攻撃)を弾き飛ばすスキルだそうだ。


 便利なスキルだな。

 ……まあ、だからスキルに頼っている魔神の時点で、雑魚確定なんだけど。


 しかし【全反射】は厄介なスキルだな。


 影槍が防がれた後は、影の弾丸が雨のように降り注いでいる。だが反射持ちの猪神は、それをすべてはじき返していた。


【きかんきかんきかんぞーーーーー!!】

「……ああ、そう」


 んじゃ別の手段を取るか。

 俺は【影式神】を、領域内に召喚する。


 影エルフを結界内部に召喚する。

【影式神】は闘気で進化しており、影のある場所(俺のじゃなくても)召喚できるようになっているのだ。


「……ヴァイパー。焼き払え」

【かしこまりました】


 さらに進化した領域結界においては、影式神(というか影エルフ)は、呪力(魔力)無限状態で魔法が撃ち放題である。


 もともと俺は奈落の森(アビス・ウッド)内では呪力無限で戦えた。


 進化した影領域結界は、それと同じ現象を、影エルフに起こすことができる。


 影の世界では、影から呪力を作り放題。その呪力を使って、影エルフは結界内で魔法を使い放題なのだ。


【汚らわしい畜生が。ご主人様の領域に無粋にも立ち入った大罪に罰を与えよう】


 ヴァイパーが領域結界から呪力を引き出し、火属性最上級魔法【煉獄業火球(ノヴァ・ストライク)】を発動させる。


 地獄の業火が影の中にいる猪神を焼く。


【ぬぅうううううううううううん! きかんぞおぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!】


【全反射】は物理攻撃だけをはじく。

 魔法攻撃は通っている……はずだが。

 

 なるほど、闘気の鎧を纏っているようだ。

 魔法攻撃はそれではじかれているようである。


「……ヴァイパー。強度のテストも兼ねる。気にせず魔法攻撃を続けろ」


【かしこまりました】


 ヴァイパーが次々と、魔法を撃つ。

 炎が、氷が、雷が、猪神を削っていく。


【ぬ、ぬぅうん! き、きかーん!】


 炎。炎。炎。炎。炎。炎。炎。炎。炎。炎。炎。炎。炎。炎。炎。炎。炎。


【ぐ、ぐぅう……!】


 炎。炎。炎。炎。炎。炎。炎。炎。炎。炎。炎。炎。炎。炎。炎。炎。炎。炎。炎。炎。炎。炎。炎。炎。炎。炎。炎。炎。炎。炎。炎。炎。炎。炎。炎。炎。


【ぎ、ぎぎが……!】


 闘気の鎧をまとっていも、熱さを感じるのだろう。

 ヴァイパーは休むことなく、炎で猪神をあぶっていく。


【ご主人様に楯突く愚か者め。灰となって消えるが良い】


 ヴァイパーが無慈悲に魔法の炎を出しまくる。

 猪神が苦しみもだえだしても、まだまだ炎は解除しない。


 炎は嵐となり、槍となり、槌となり、魔人の腕となり、猪神の体を絶え間なく焼き続けた。


【無限に魔法を出し続け、相手をいたぶり続ける……魔法使い冥利に尽きます。ご主人様のおかげです。さすがです】


 ヴァイパーが楽しそうに言う。

 こいつドMでドSだからな。

 相手をいたぶるのが大好きなのだ。変態め。


【ぐぁあああああああああ! や、やめろおぉおおおおおおおおおお! やめてくれぇええええええええええええ!】


 猪神がその場で倒れジタバタと醜く、手足を動かす。


「……やめなくて良い」

【承知】

【やめろぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!】


 しかし魔神相手に魔法攻撃が通じるのか。

 こいつが魔神として、俺より格下ってこともあるが、魔法にも【闘気(オーラ)】をこめれば、ある程度魔法も魔神に通じるみたいだった。


 良い実験台になったな。


「……ヴァイパー。良いデータが取れた。撤収だ」

【かしこまりました】


 ヴァイパーを転移させる。

 結界内には猪神だけが残される。


【に、人間ごときに……魔神が翻弄されるだと……! ありえん! まさか相手は魔神を越えるバケモノなのかっ!?】


 ……なんか俺、いつもバケモノ扱いされてる気がする。


 そんなにバケモノか?


「ご主人様。魔神を遠隔で倒せている時点で、十二分にバケモノだと愚考します」


 後に控えるヴァイパーが、楽しそうに笑いながら言う。


「……そうかな?」

「ええ。考えてもみてください。あの魔王よりもこの魔神どもは強いのですよ」


 そういえばそうだったな。

 今俺は魔王を越える存在を、遠隔で楽々と倒せている。


 つまりあのときの魔王も、今では楽勝で屠れるということか。


「……思えば強くなったもんだな」

「ええ。とってもお強くなられています。ああ、素晴らしい……強くて格好いいご主人様……しゅき……」


 ヴァイパーがでへでへとだらしのない顔で言う。


「……きめえ」

「ありがとうございます!!!!」


 別に俺は罵倒したわけじゃない。

 それでもこれはこいつにとってのご褒美なのだ。


 ……ヴァイパー、変態め。


【ふはは! バカめが!!! 貴様らがバカをやっている間に、我は完全に回復したぞ-!】


 猪神が調子に乗っていた。

 魔神は魔族以上に体力回復速度が速いのである。


 ……うん、知っていた。

 あえてだ。


【この目障りな結界を突き破ってくれよう! うぉおおおおおおおお!】


 猪神が結界の壁に向かって、文字通り猪突猛進する。


 ……意味ないがな。


 俺は手印を組む。

 領域結界のそばに、黒獣の頭部だけが顕現する。


 黒獣化と影食いの合成技、【黒獣食い】。

 領域結界ごと黒獣が丸呑みする。


 それは1秒にも満たない速度だった。

 竜神王(ベルナージュ)なら、結界を破って、なおかつ黒獣の顎から逃れていただろう。


 しかしこの猪神という魔神は、本当に良かった。そこまでのパワーもスピードも備わっていなかったのである。


「……テスト終了。まずまずだな」


 結界も正常に作動していたし、魔法に闘気を流す攻撃が有効であることも確認できた。


 さらに【全反射(フル・カウンター)】スキルと、【闘気】をゲット。


 ……まあ、魔神相手に【全反射】が有効かどうかは、ベルナージュ相手に後で検証する必要があるかな。


「……これで魔神は、残り8柱」


 俺は一仕事終え、ふぅ、と吐息をつく。


「さすがですご主人様ぁ!」


 ヴァイパーが俺の体に抱きつく。


「あの魔神をこうも翻弄するとは! 完全にあの魔神はご主人様の手のひらの上でした! さすがです! すごいですご主人様ぁん♡」


 ヴァイパーがふりふりと、下品に腰を振る。


「こんなにも強くおなりになられて……。強きものの下僕として飼われて、とても誇らしいです!」


 目を♡にしてヴァイパーが俺に艶っぽい視線を向ける。


 むせ返るほどの、甘い匂いが鼻孔をつく。

 南国の花みたいだ……。


「……は、離れろ」

「ご主人様ぁ! もっと強く! もっと汚く罵って!」


「……離れろってんだよ変態!」

「あ~~~~~りがとうございます~~~~~!!!」


 ……魔神と戦った後だというのに、俺には精神的な余裕があった。


 それだけ……強くなったってことだろうか。

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