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16.暗殺者、美少女たちと温泉に入る



 四天王ドラシルドを倒した俺は、その後英雄王とエリィを、森の外へと送り届けた。


 森の入り口にて。

 英雄王は俺を見て言う。


「ヒカゲ。迷惑かけたな」

「すみません、ヒカゲさん。ビズリーは……私たちが行方を捜します。準備でき次第、またご連絡差し上げますので、しばしお待ちを」


 結局俺は、ビズリーたちの魔王討伐に、力を貸すことにしたのだ。


 いずれにしろミファとあの村を守るためには、厄災の根源たる魔王を倒す必要があるからな。


「……承知しました。それまで力をつけておきます」


「まだ強くなるつもりなのか。良い向上心を持っている。さすがだな、ヒカゲ」


 にかっと笑う英雄王。

 魔法使いエリィが、しずしずと俺の前にやってくる。


 背が高く、すらりとしたモデル体型。

 桃色の髪をおさげにして、メガネをかけている。


 エリィはぺこっと頭を下げる。


「ヒカゲさん。四天王退治に力を貸していただき、ありがとうございます。それと……私を助けてくださって、本当に、本当に感謝しています……」


 何度もエリィが頭を下げる。


「……気にすんなって。仲間だろ?」

「ヒカゲさん……」


 エリィは頭を上げると、自分の胸の辺りを、きゅっ、とつかむ。


「あ、あの……ヒカゲさん。その……こ、このたびはビズリーが本当に迷惑をかけてしまって……だからそのっ、その、あの……お、おわびと今日のお礼をかねて、いつか王都でお、お食事でもおごらせてくださいっ」


 エリィが顔を真っ赤にして、目をキュッと閉じて言う。


「……いや、そんなの別に」


「ヒカゲ。けじめは必要だ。エリィの提案に乗ってあげな」


 そう言うものか。俺がうなずくと、エリィがパァア……! と表情を明るくする。


「じゃ、じゃあ決まりですねっ! 魔王を倒した後、お、王都でお食事っ!」

「……魔王倒すって、だいぶ先だろ?」


「いいえっ! 大丈夫ですよ。ヒカゲさんがいるんですもの。きっとそう遠くないうちに、平和は訪れます!」


 エリィが笑顔で言う。……訪れる、かな。自信ないな。


「そうだ。みんなで力を合わせれば、きっと倒せる」


 ぽんっ、と英雄王が俺の肩をたたく。


「そしたらエリィもヒカゲを誘ってデートへ行けるわけだ。早く倒さないとな」


「で、デートじゃないですっ! 単にお食事にいくだけで……」


 もにょもにょとエリィが顔を真っ赤にしてつぶやく。なんなの……?


 その後準備が整ったら連絡すると行って、通信用の魔法石をおいて、ふたりは帰ることになった。


「ひ、ヒカゲさん」


 エリィが緊張しているのか、顔真っ赤にして言う。


「魔王を倒した後……その、お食事の時にですね。言いたいことが……あるんです。あなたがパーティに入ったときから、ずっと言いたくても、言えなかったことが」


「……? 今言えばいいじゃないか?」


「今はちょっと。けど、この魔王を倒す戦いが終わったら、必ずあなたに言うと約束します」


 よくわからないが、俺はうなずいた。そしてふたりは、王都へと帰っていったのだった。


    ☆


 用事が済んだので、俺はホームへ帰ることにした。


 その前に、ドラシルドとの戦いで汗をかき、返り血を浴びたので、神社の裏手の温泉に寄ってから帰る。


 村へと帰り、世界樹の根元の祠へ。

 俺はここで寝泊まりしているのだ。


 エステルが用意してくれた食事を、俺は、ミファ、エステル、そしてアリーシャとともに食べる。


 ミファはもともとこの祠に住んでいる。エステルはミファのお世話係なので、食事の時は同席してる。


 アリーシャは護衛なので同上。サクヤはここの家主だが、普段は用事がない限り表に出てこないのだ。


 ヴァイパーは影に引っ込んでいる。式神は食事を必要としないのだ。


 ……最近はこうして、大人数で飯を食うのが当たり前になってきているのだ。


 さて。

 話は食後、空いた食器を片付けた後。


 食後のお茶を飲んでいると、エステルが俺のとなりへやってきて、こう言ったのだ。


「じー……?」

「……な、なに?」


「ひかげくん……肌つやが、いいね!」


 にかっと笑うエステル。

 ミファがすす、っと俺の反対側へとやってくる。


「た、たしかに……です。とてもきれいです。それに……良い匂い。温泉のにおいです」


 すんすん、とミファが小さな鼻をひくひくさせる。


 ……どうでもいいけど、エステルたちのほうが良い匂いすんだけど。花とか、果実の甘いにおいがする……。


「およよん? 温泉? ひかげくんあんな遠いところまで行ってるの?」


「……遠い? 近いだろ」


「「え?」」


 きょとん、とミファとエステルが目を丸くする。余談だがアリーシャも目を丸くし、犬耳をぴーんと立てていた。


「近くは……ないです。ここから半日以上、歩いていったところに温泉はありますけど」


「……いや、神社の裏手に露天風呂あるから……って、どうした?」


 その場にいた女性陣全員が、くわっ! と目を見開く。


「ひ、ヒカゲ様! ほ、ほんとうですかっ? そんなに近くに……あるのですかっ!」


 物静かなミファが、血走った目で俺に詰め寄る。俺はたじろぎながらうなずく。


「ひ、ひかげくんっ! まいブラザー! きみはお姉ちゃんのブラザーだよねッ!」


 なぜかしらんが、エステルがすごい剣幕で、俺の肩を掴む。


「BBFだよね!」

「なんだよそれ……」


「ベスト・ブラザー・ふぉーえばー、だよ!」

「わけが……わからない!」


 この人たまに脳みそないんじゃないかって思う発言、するよね。


「ひかげくん、お姉ちゃんたちも……その温泉使わせてくれないかなっ?」


 なんだそういうことか。


「……いいんじゃないか。というか、別に俺の許可いらないだろ」


「いやねマイブラザー。あの神社は神聖な場所だからお姉ちゃんたち一般人が入れないんだよぅ。だから防人さきもりさまの許可がいるんだい」


 なるほど……。温泉の存在を知らなかったのは、村人があそこへあまり立ち寄らないからか。


「つことでお風呂使わせてぷりーず!」


「……まあ。どうぞご勝手に」


「「やったー!」」


 ミファとエステルが、笑顔で両手を合わせる。


 俺は飯を食い終わったので、自分の部屋に戻って寝るか……と思ったそのときだ。


 ガシッ、とエステルが俺の腕を掴んできたのだ。


「え?」

「それじゃあひかげくんっ、一緒に温泉へごーごー、だよ!」

「はぁ!?」


 ちょ、何を言ってるんだこのアホ姉は!


「ひっ、ひとりで行けよ。神社の場所わかるだろっ?」

「温泉までの道のりが、わかりませんぞ!」


「神社の裏に回ってすぐだから!」


「えーいうるせー! とっととお姉ちゃんたちを案内するんじゃーい! そして一緒に入るんじゃー!」


 いやいやとエステルが駄々っ子のように首を振る。

 って、一緒にはいるだと!?


「う゛ぁ、ヴァイパーに案内させよう。いけヴァイパー!」


【……ご主人様。わたくしはラブコメ推進派でございます。世継ぎの顔が早くみとうございますゆえ、今回はお力添えできません】


 おぃいいいいいい。何を言ってるんだこの変態エルフは!?


「ささっ、さくっと行ってこようかっ!」


 ガシッ!


「その……ヒカゲ様。案内……よろしくおねがいします」


 ガシッ!


 ……両方から、俺は捕まれてしまった。

 まあ、最強のステータスがあるので、振りほどくことは可能だ。


 しかし力が強すぎて、このか弱い乙女たちを傷つける結果になる。


 ……結局、俺は逃げることができず、彼女たちを露天風呂まで案内する羽目になったのだった。


    ☆


 俺が拠点としていた神社。

 その裏手には、川へと続く道がある。


 その途中に、少し開けたスペースがある。

 そこには天然のお湯が沸いていた。


 奈落の森の近くに、活火山があるからだろうか。温泉が森の中にも、あちこちあるのだ。


 俺は神社にやってきて、この温泉に気付いた。


 あとは俺が使いやすいよう、整地したり、邪魔な木を切って景観をよくしたりしたのだ。


「「はぁ~~~~♡ すっご~~~~~~~~~~~~~い♡」」


 女性陣ふたりが、俺の作った露天風呂を見て、キラキラと目を輝かせる。


 ……ちなみにふたりは、体にタオルを巻いている。……前から思ってるんだけど、生活必需品ってどうしてるの、こいつら?


「すごいよひかげくん! お風呂があるよっ! 村からこんな近い場所にっ!」


 さっきも言ったが、村から一番近い風呂は、女性の足で半日行った場所にあるらしい。


 なかなか気軽にいけるところじゃないという。


 だから普段は近くの川で沐浴だけするのだそうだ。

 

「おふろっ! すごいっ! ひかげさま……すごいですっ!」


 ミファがエルフ耳をピコピコさせて言う。


「……おまえなんでそんな興奮してるんだよ?」

「ひかげくんっ! 女子はね、お風呂だいすきちゃんなんだよ!」


「はぁん……そういうもんか。そういえば、妹も風呂好きだったな」


 あいつ1日に三回くらい風呂入ってたもんな。そういや元気にしてるかな、【ひなた】のやつ。


「よぅし、風呂入るぞっ! いくぜミファ、突撃じゃー!」

「はいっ!」


 だーっ! とミファとエステルが湯船へ走って行く。


 後には俺と、アリーシャが残された。


「……おまえは行かなくていいのか?」

「わ、私は姫の護衛だ。風呂に入るわけにはいかない」


 それに、と赤髪獣人剣士アリーシャ


「わ、私は風呂が嫌いだ」

「はぁ……そう……」

「そうだ。湯につかるなど……」

「……その割にしっぽパタパタさせてないか?」


「う、うるさいっ!」


 アリーシャが顔を真っ赤にする。


「んもー! ひかげくんもアリーシャもなにやってんの!」


 エステルが怒りながらこちらへ来る。

 手を掴むと、


「そーい!」


 エステルは俺とアリーシャを、湯船に向かって、投げ飛ばしたのだ。


 俺たちは突然のことに対応ができず、そのまま湯船へダイブ。


 どっぼー…………ん!


「え、エステルおまえな……」


「はいこれで仲良くお風呂タイム決定! ほらさっさと裸になりなっ! 湯船に服を着て入るとはなにごとじゃー!」


 ……いきなり風呂に突き落とすほうも、何事じゃいなんですがそれは……。


 まあこうなってしまってはしょうがない。

 俺は影呪法を解いて、服を解除する。


「き、貴様なんだそれは? 服はどうしたんだ?」


「……俺、普段から織影で作った服を着てるんだよ」


 いちいち脱いだりするの面倒だからな。


「そ、そうか……。わ、私はあっちで着替えてくる。決して! 決してのぞくなよ!」


 アリーシャは犬耳をぴーんと立てながら吠える。


「……はいはい」


 のぞく気はさらさらないので、俺は湯船にゆったりとつかる。


 するとアリーシャが体にタオルを巻いて、戻ってきた。

 で、でけえ……。

 改めて思うけど、この獣人女おっぱいでかいな。この中で一番だ(アリーシャ>エステル>ミファ)。


「なぜのぞかない!?」

「……はぁ?」


 意味わからん。


「……のぞくなって言ったのは、そっちじゃないか」

「そ、それはそうだが……だとしてもちらと見るくらいは……」


 ブツブツと言いながら、もじもじするアリーシャ。なんなの?


「ふぉっふぉ。ひかげくん、おぬしもまだまだ恋愛経験値が足りてないようですなぁ」


 すい~っとエステルが、俺のとなりまでやってくる。

 ……おっぱいが、浮いてる、だと!?


 よく見るとミファも、湯船に乳房が浮いているではないか。

 で、でかいと浮くものなのか!?


「れ、恋愛経験値ってなんだよ?」

「文字通り恋愛経験の多い少ないのことだよ」


 俺は動揺する。


「お、おまえ、まさか男と付き合ったこと……」「ないねえ!」「あ、そ、そうか」


 良かった……。って、なんだよ良かったって。


「……それでなんなんだ?」


「だからですな、アリーシャの機微をひかげくんは察知できてないね鈍感主人公だねこの野郎ってこと」


 はぁ? またアホ姉がよくわからないことをのたまっていた。


「え、エステルッ! それは言わない約束だろうが!?」

「まぁまぁ。お姉ちゃんに任せなって」


 にやっと笑うエステル。


「ひかげくん。アリーシャの剣、この間スキルで直したでしょう?」

「え、ああ……超再生でな」


 前にアリーシャとバトルした際、俺はアリーシャの大事な双剣を破壊してしまった。

 その後ものを直すスキルを得た俺は、それを使って、アリーシャの剣を直し、謝罪したのだ。


 ……そういえば、そのときから態度が変わったな、こいつ。軟化したというか。


「あのときからアリーシャはね、ひかげくんにお熱なのだよ~」

「熱? 熱って……なんだ?」


 風邪でも引いてるのか?


「え、エステルーーーーーー!」


 ぐわっ! とアリーシャが立ち上がる。

 そのとき……ぽろっと。


 アリーシャが巻いていたタオルが、体から落ちたのだ。


「「あ?」」

「へ……? き、きゃぁーーーーーーーーーーーーーーーーー!」


 アリーシャが顔を真っ赤にして叫ぶ。

 で、でけえ……なんてもんじゃない。


 なんだ……これは?

 本当に人体の一部なのか……?


 人間が備えていい大きさじゃないぞこれは……。


「じ、じろじろ見るなー!」「す、すまん……」目をそらす。「ばかっ!」ばぎぃ!「なんで!?」


 よくわからないが、目をそらしても、アリーシャに殴られた。

 わけわからん……。


「すさまじい大きさだったね、ミファ」

「はい……すごく、大きくて、やわらかそうでした」


 ミファとエステルが、並んでアリーシャを見やる。

 アリーシャは顔を真っ赤にして、自分の体を隠すように抱く。


 ……そのせいで白い乳房が、ぶにゅっと潰れて、余計にイケナイことになっていた。

「ひーかげくん♡」


 エステルがニコニコーっと笑いながら、俺に近づいてくる。


「……なんだ? って、おまえ!? タオルどうしたんだよ!?」


「やー、あれっすな。湯船にタオルはつけてはいけない。これ、常識ね」


 エステルも相当な大きさの乳房を持っていた。

 アリーシャと違って張りがあり、上を向いていた……なにが? いや何の話だ!


「お姉ちゃんはおっぱいだけじゃないぞぉ。おしりもおっきいのだ。ほれほれ~♡」


「ケツを見せるな!」


 俺は目をそらす。

 目線の先にミファがいた。


 真面目な顔をして……自分のおっぱいを手で掴んで、持ち上げていた。


「……なにしてんだよおまえ?」

「ひかげ様。日頃からわたしを守るために尽力なさってくださっているので……せめて、お返しにと」


 お返しって何だっ?

 お返しに何をどうするって言うんだっ!?


「どうぞお好きになさってくださいまし……」


 ミファもエステルやアリーシャほどではないが、十分に大きなおっぱいをしている。

 血管が透けて見えるほどの、白い肌。

 腰は驚くほど細い。手足は折れそうなほどだ。


 全体的に儚げな印象なのだが……胸だけは、立派なのだ。


「お姉ちゃんのも好きにしていいよっ? 吸う? はさむ? それともはさんで上下?」

「何の話してるんだよあんたっ!?」


「ヒカゲ様。どうぞご賞味くださいまし……」

「おまえちょっと黙ってろ……!」


 ……と、そんなふうに、ぎゃあぎゃあ騒ぎながら、風呂に入った。


 もう二度とこいつらと風呂に、一緒に入らない……。風呂はひとりで、静かに入ろう……。


 と思っていたのだが……。


「「「「防人さきもりさまー♡ 一緒にお風呂入りましょ-!」」」」


「ひかげくん、SDCのみんなもここのお風呂使いたいってさ~」


 俺の静かな入浴時間は、こうして完全に失われたのだった。

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