エピローグ
《ヒカゲSide》
あれから色々あった。
まず聖騎士たちと和解した。
彼らはどうやら魔神シュナイダーにそそのかされていたらしい。
俺はエステルとともに聖騎士たちの拠点へといって、自らが危険でないことを証明した。
結果、彼らと手を組むことになった。
もうこちらを攻撃してこないことを条件に、俺は彼らが困ったときに手を貸すことを約束した。
また、諸外国たちにも、俺が無害な存在であることをアピールした。
どうやら聖騎士たちが所属する、天導教会ってところは、世界中に影響力があるらしい。
教会が黒獣を保護すると宣言したことで、ほかの国々も俺、そして奈落の森の連中には手を出せなくなったそうな。
もしも馬鹿が俺たちを手にかけようとしたら、協定違反ってことで裁かれるようになった。
天界とかいう場所、そして神々という存在については、正直よくわからん。
今のところ天罰的なものがくだることはないので、シュナイダーの妄言……だと信じたい。
まあ、何はともあれ、これで俺も、そして奈落の森の連中も、安全が保証されたって訳だ。
★
それからの話を少しだけしよう。
俺は相変わらず、エステルたちとともに平和に暮らしてる。
森には昔魔物がたくさんいたのだが、黒獣を恐れて誰も襲ってこなくなった。
俺という存在が抑止力になってるみたいだ。
数年後、俺はエステルと結婚し、子供をもうけた。
子供には暗殺とか関係なく、平和に過ごしてほしい……っておもったんだが、どうやら影呪法が遺伝されてしまったらしい。
しかし暗殺者になるようなことはなく、その力を使って、冒険者として活躍してるそうだ。
エステルの友達、ミファ。
彼女の邪血についての問題も解決した。
天衣無縫の衣を手に入れた俺は、彼女の邪血だけを喰らった。
その結果、ミファの体にはただの血液が流れるようになり、もう、ミファを狙う悪い奴らもこなくなった。
俺たちは平和に暮らしている。
これからも、ずっと、平和にこの日常が続いていくだろう。
……最初、俺の体に宿ったこの暗殺の力は、呪いだと思っていた。
でも、今にして思えば、この力がなければ勇者パーティに入ることも、追放されることも、その後エステルと出会うこともなかった。
すべては、まあ、課程なのだ。
そのときは呪いと思っていても、実は祝福だったと後から気づくこともある。
そのとき辛くても、実は幸せの前振りだったなんてことは、ざらなのだ。
辛くても、苦しくても、もう死んじゃいたいくらい落ち込んでいても……悲観することはない。
未来には必ず、光が差している。必ず、幸せはそこで待っている。
俺は今回のことで学んだ。多分、人生ってやつはそういうもんなんだ。
山があって谷があって、でも……最終的には、満足いくエンディングを迎えることができる。
人殺しの一族に産まれた俺が、今こうして、幸せを享受できてるんだから。
影は、光があって初めて存在できるように。
不幸もまた、幸せがあって初めて成り立つ物。
不幸を嘆かず、幸せのための伏線くらいに捕らえて……
これからも俺は、生きていこうと、そう思うのだった。
《おわり》
これにて完結です。
読了、ありがとうございました!