118.
《シュナイダーSide》
「素晴らしい! 素晴らしいですよヒカゲくん!!!!!!!!!」
全ての黒幕、魔神シュナイダーはヒカゲの活躍を、使い魔を通して見ていた。
彼がいるのは、奈落の森の遥か上空。
シュナイダーはヒカゲの活躍を喜び……。
そして、己の目的を達成できたことについて、狂喜乱舞していた。
「やりました! 神殺しの兵器の完成です!」
神殺し。
シュナイダーの目的だ。
彼は元々天界(神々の世界)を追放された神の1柱。
追放したやつらに復讐するため、神を殺す存在をほっしていた。
そこに、ヒカゲが目をつけられたのだ。
「全てを食らう天衣無縫のケモノ! こいつがあれば、神々はあっというまに全滅でしょう! ふふふ……最高だ、ひかげくん! 君は最高のモルモットです!」
その様子を見ていたベルナージュが、シュナイダーの首をはねる。
だが……クビだけになったシュナイダーはにやりと嗤う。
「無駄ですよ、ベルナージュ。これは私の本体ではない。無数に存在する、ネズミの群れが私なのですから」
「【そうか。だが、問題ない】」
……シュナイダーは目を剥いた。
目の前に居る、竜の魔神の少女から……。
「ひ、ヒカゲくん!?」
「ああ、俺だ。焔群ヒカゲだ」
ずずずう……とベルナージュの姿が、ヒカゲへと変化する。
「ば、馬鹿な!? いつの間に……!」
「あんた、俺の本職を忘れたか?」
彼は暗殺者だ。
敵の意表を突いて、必ず殺す。それが彼の職業。
「まさか……! 最初から、ベルナージュは! 本体じゃなかったのか!?」
「そのとおり。最初からおまえを見張っていたのは、ベルナージュに変装した俺の分身体だ」
……本物のベルナージュは木花村に存在する。
シュナイダーは、ヒカゲに注目するあまり、ベルナージュが偽物である可能性に気づけなかったのだ。
「やっと、隙を見せたな魔神」
ヒカゲは天衣無縫の衣を纏っている。
全てを食らう、白きケモノ。
全てとはすなわち、全てだ。
たとえばこの世に無数に存在する、シュナイダーの分身体をも食らうことができる……。
「い、いやだ……! いやだ……! 私は死にたくない! 死にたくないぃ!」
シュナイダーは追い詰められていた。
白きケモノに全てを食らわれて、あとはこの本体を残すのみ。
これを食らわれたら、もう消滅してしまう。
「おまえが全部仕組んだんだってな。聖騎士どもをそそのかし、黒獣討伐に向かわせたのとか。周りの奴らが木花村をねらうようにしくんだのも、てめえだ」
すべては神殺しを作るための実験だった。
そういって、ヒカゲが許してくれるはずもない。
「お、お願いしますヒカゲ様! ご理解ください! 私は、あなた様を強くするためにあえて!」
「……黙れ」
ごごご……とヒカゲの白い衣のが変形する。
ケモノの顎へと変形し、シュナイダーの目の前までやってきた。
……死が、目の前にあった。
「エステルたちの平和を脅かす悪は、俺が食らう」
「ひいぃいいいい! お助けぇええええええええええええええ! わ、私はただ神に復讐を……!」
「てめえのくだらない復讐に、周りを巻き込むな」
白きケモノが大きく口を開くと……。
そのまま、ばくり! と飲み込んだ。
……黒幕は完全に消滅した。
黒獣を悪だとそそのかしていた存在は消えたのだ。
ヒカゲは息をついて、その場をあとにする。
空を飛びながら、愛しい彼女のもとへとむかう。
「ひ~~~~~~~~~か~~~~~~~~げ~~~~~~~~~く~~~~~~~~~~~~~~~~ん!」
やがて、木花村が見えてきた。
エステルが笑顔で、両手を広げて、待ってくれている。
ヒカゲは地面に降り立つと、彼女の胸の中に飛び込んだ。
ふたりは抱き合って、笑い合う。
「ただいま」「おっかえり!」
次回、最終回です。