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116/119

116.



 森羅万象を食らう、黒獣の衣を手にした俺は、最後の戦いを挑んでいた。

 相手は暴走状態となった竜一。



「グラァアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」



 彼は何度も突っ込んでこようとする。

 だが俺は相手の勢いを食らうことで、止めることができる。



 衣が変形してケモノとなり、竜一に襲わせる。

 彼はケモノを両手で引きちぎろうとする。



 だが攻撃は当たらない。

 ケモノはそのまま問題なく、竜一の右腕を食らった。



 だが別に彼を攻撃する意思はない。

 彼を包んでいた黒い力だけを、くらった。



「ど、どうなってんだ……?」

「あのケモノは衣でできてる。ダメージは入らない。のれんに腕押しって言葉を知ってるか?」

「ああ……つまり、黒獣の衣にはいくら攻撃しても当たらない……天衣無縫……そういうことか……すげえ……」



 竜一の右腕が、元の状態に戻っていた。

 やはり暴走させていたのは、彼の全身を包んでいる、黒い靄みたいな力なのだろう。



 ならばやるべきことは一つだ。

 黒獣の衣を使って、あの黒い力だけを食らうのだ。



「いけ!」



 黒獣の衣がいくつもに分裂。

 形のない力なのだろう、この黒獣の衣は。



 だが俺は形のない影をずっと操ってきた。

 だから、同じ感覚で、この衣を自在に、まるで手足のように使える。



 分裂した黒獣たちが竜一に襲いかかる。

 彼は左腕に黒い刀を持って、それらを切りつけようとする。



 だが、無駄だ。

 どんな攻撃も黒獣の衣には通用しない。


 天衣無縫。

 それが、俺の手に入れた力。



 あらゆる攻撃は当たることはない。

 逆に、こちらはあらゆるものを食らう。


「なんてことだ……最強じゃあねえか……」



 次郎が感心してる。

 俺もこんな力が、自分の中に眠っていたとは思わなかった。



 いや、向き合ってこなかったのだ。

 俺の、暗殺者として、影使いとしての力について。



 俺は自分を否定していた。

 人殺しの一族に産まれたことから、逃げようとしていた。



 だから、俺の中に、人を殺さないですむ、すごい力が眠っていることに気づかなかった。

 馬鹿だよなほんと。



 でも、今はいい。

 エステルが、俺に気づかせてくれたんだ。



 俺は、人殺しじゃない。

 防人さきもりでもない。



 俺は、俺だってさ。


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