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110/119

110.



 いったん村に戻った。

 ミファの血……邪血を取り込むためだ。

「ヒカゲ様」

「ミファ……」

「事情は、姉様からうかがいました」


 エステルとともにミファが戻ってくる。

 ハーフエルフの少女が、心配そうに俺を見てきた。


 多分彼女も、俺が邪血を取り込むことで、暴走することを危惧しているのだろう。


「大丈夫。俺は……防人さきもりだよ。何があっても」


 邪血を取り込み、自我がなくなったとしても、俺はこの体が朽ち果てるまで、村を守るだろう。


「ひかげくん……」


 愛するエステルが俺を見つめてくる。

 大丈夫、とうなずくも、彼女の表情は晴れない。


 ……不安にさせてしまって、ごめん。

 でも、俺がやらないといけないことなんだ。


「ミファ」

「はい……」


 彼女が俺の前でしゃがみこんで、クビを差し出す。

 艶っぽい雰囲気にはならない。


 俺はしゃがみこんで、彼女の首筋に、歯を立てる。


「んっ」


 痛がってるようなそぶりを見せるミファに、申し訳なさを覚えながら、俺は血を取り込む。


 その瞬間……。

 どくんっ、とうちなるケモノ……黒獣が活性化したように覚えた。


 どくん……どくん! と強く脈打っている。

 体のなかに凄まじい力が満ちていくようだ。


「ぐ……が……」


 俺はこの森にきたばかりのことをおもいだす。

 魔王を倒すとき、俺は自爆の技を使った。


 もう戻れないと思っていた。

 でも……俺は無事帰って来れた。


 それはエステルを何が何でも守るんだ、という強い意志の力が合ったからだ。


 エステル……。

 俺の、恩人。大好きな少女。


 この子がくらす森を、村を、守りたい。

 村人の日常を……守りたい……。


 そう、強く願った瞬間……。

 俺の意識は、ぶつりと途切れたのだった。

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