104.
《シュナイダーSide》
竜一が謎の力を手に入れた。
その様子を、魔神シュナイダーが見ていた。
「ふふ……どうやらあの騎士は、魔の力を手に入れたようです」
「おい貴様」
シュナイダーの首筋に、何かが当てられる。
鋭い竜の爪だ。
シュナイダーは微笑みながら、前を見ながら言う。
「ベルナージュ、ひさしぶりですね」
ヒカゲの仲間にして魔神、ベルナージュ。
かつてシュナイダーとは仲間同士だった。
「村の守りはいいのですか?」
「聖騎士どもはヒカゲが相手しているのだ。村にはこない。……今は、おまえをほっとくほうが厄介だ」
「それはそれは。しかし大丈夫ですよ、私はヒカゲ様の味方ですから」
……しばしの沈黙があった。
だが、ベルナージュは爪を離す。
嘘は言っていないのだ。
シュナイダーにとって、ヒカゲは大事な実験材料。
敵対することはない。……利用はするが。
「あの騎士を黒く染めた力は、なんなのだ? 神の力などといっていたが」
「ああ、あれですか。別に神の力じゃあないですよ」
「なに? どういうことなのだ?」
「簡単です。あの力は、私が付与したのです」
そう言って、魔神シュナイダーは懐から、一枚の呪符を取り出す。
「狂化の呪符。これを貼り付けた相手は、一時的に魔神の力を手に入れます。ま、もっとも理性を失った化け物となりますので」
「狂化……魔神の力なんて与えて、何がしたい? 味方とかほざいていなかったのか?」
「味方ですよ。私は」
シュナイダーは微笑む。
ベルナージュは困惑していた。何がしたいのかわからないのだろう。
「見ていればわかります。私はね、彼の……ヒカゲ様の進化を見届けたいのですよ。竜一はそのための踏み台に過ぎません」




