102.
《竜一Side》
……屈辱だ。
竜一は地面に倒れながら、自分をくだした相手をみやる。
ただの、ガキだった。
まだあどけなさの残る子供。
そんなガキに、自分が負けてしまった。
それも屈辱だが、もっともゆるせないのは、己の弱さだ。
神に背いた、犯罪者に後れを取ってしまった。
しかも卑怯な手を使われてだ。
力の差は歴然だった。
神から授かったこの神器は、敵を圧倒していた。
なのに虚を突かれて負けた。
それはつまり、神の敗北ではなく、己の弱さが招いた結果。
許せない。
「ゆるせ、ない……」
許せない……許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない!
弱い自分が、許せない。
人外ごときに負けてしまった自分が許せない!
「なんだ……こいつ……」
竜一の持っている神器、極光剣がどす黒い光を放つ。
それはまるで己の中にある、憎悪の心を移しだしているようだ。
「おれは……自分が許せない……! こんな人外に……神に背いた存在に、負けたことが……!」
竜一は影の触手をといて、立ち上がる。
黒い光が神器を通して、自分の中に入ってくる。
とてつもない力のほとばしりを感じた。
「! まずい……」
力が自分の体の隅々までいきわたり、意識が遠のいていく。
「おれは負けないんだぁああああああああああああああああ!!!!!!」
そこにいたのは、聖なる騎士では無かった。
黒い力に支配されて、自分を見失った存在……。
暗黒の騎士が、そこにいたのだ。