101.
地面に這いつくばる竜一……。
その瞳には、憎悪の炎が燃えていた。
「くそ……くそが! たかが獣ごときに……! 地を舐めさせられるとは!!!!」
どうやら俺に負けたことが許せないのだろう。
俺に忠告に来た女騎士が言っていたな。
こいつらにとって神とは絶対のものであると。
神から賜った武器を使って、それでも俺に負けた。
つまり神が俺に負けたのと同義……とでもおもってるのだろう。
馬鹿らしい。実に。
「くそ……うごけ……ねえ……」
「無駄だ。闘気をこめた影の触手で縛っている。絶対に動けない」
それに神器は没収してるしな。
こいつ自身もまあ強いっちゃ強いのだが、神器込みの評価だ。
特別な武器を装備していない竜一は、あまり脅威に感じない。
「くそ……おまえら何を見ている! こいつを殺せ!」
竜一がギャラリーたちをにらみにつける。
彼らは俺たちの戦いをただ、見守っていた。
見守るというか、入れなかったのだ。
そのレベルに達していないから。
次郎は肩をすくめる。
「竜一、詰みだ」
「はぁ!? なんでだ」
「こいつらみんなびびっちまってる」
竜一が倒されたことで、騎士達の士気はかなり下がっている。
みんな動揺しているのだ、最強の騎士が倒されて。
「く、くそ! 本国に連絡を入れて、大量の騎士を……」
「それも無駄っぽいぜ? そこの影の兄ちゃんが、なんかこそこそやってたみたいだしよ」
そのとおり。
ずぉおお……という音とともに、黒い半球状の結界が展開する。
「な、なんだこれは!?」
「領域結界。相手を閉じ込め、自らの得意なフィールドに持ち込む技だ」
そう……結界でこいつらをつつむことで、もう増援は望めなくする。
ボスは倒し、増援も無理。
「ま、詰みだね」
次郎はあっさりと、敗北を認めるのだった。