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(4) ゴブリン退治

 僕の元いた世界にはチンパンジーてのがいましてね。

 世間的には「肌色の顔をした人懐こいお猿さん」のイメージがあるかもしれませんが、そんなファンキーモンキーはモンキーベイベーの時だけらしいのですわ。

 実はアダルトのチンパンジーは顔が真っ黒で、荒々しい気性の猛獣さんなのよ。

 同族でも殺しあうし共食いとかもしちゃう。いろいろヤバい奴らなの。

 しかもね奥さん、腕力なんか僕らの五倍くらいあるんですって。


 何の話か?

 いえね、ユーたちゴブリンさんとよく似た奴がいたんですわ。

 ああでもユーたちの方がずっと強そうですよ? 

 腕力なんか僕らの十倍くらいありそうですしね。


 やだなあ、そんなに怒らないでくださいよ。お猿さんに例えたのは謝りますから。

 それじゃ人間に例えますと。

 ええと、包丁を持った全裸の麻薬中毒者かな? 最低でもその十倍はヤバい奴っすね。

 そんなイカした兄貴が、イカれた兄貴が、イカ臭い兄貴が千人もいるなんてシビレちゃいますよぉ。

 だって皆さん、僕たちのことお客さんでなく獲物だと思ってますよね?

 こちらを「慰みもの」にする気マンマンですよね?

 苗床にする気マンマンですよね?


 だけどブラザー、レディーの前ですぜ?

 せめてパンツくらい履きましょうよ?

 アダルトのノーパンツは法的にアウトっすよ?

 まあチャイルドのノーパンツならもっと激しくアウトですが。


 あとね、実を言いますとね、獲物はユーたちの方なのですよ。

 実は僕たち、ユーたち千頭のゴブリンさんを狩るために藪を掻き分け山を越え河を渡ってここまで来たのですよ。


 ん? 違う違う、狩るのは僕じゃなくて。

 僕はホラ、親分の荷物持ちと言いますか、親分に持たれたお荷物といいますか。


 でもさあ。大揺れの背中にしがみついているだけでも結構疲れるのよ?

 いやあ疲れたわー。

 背後の美女さんたちに殺されるから絶対に言わんけど、いやあ疲れたわー。



 おっと始まりましたね。

 天然ジャンキーのゴブリン軍団のただ中に四本足の親分がふわりと飛び込んで、千切って、砕いて、なぎ倒して、踏み潰して。

 いやあ強い!

 親分強いっす!

 そして速いっす!

 三倍速っす! 

「当たらなければ大したことないのだよ」くらいに速いっす!


 おっと訂正。結構当たってますね。

 でも勇者様はゴブリン軍団の長ドス攻撃も錆びた鎌攻撃も気にしてらっしゃらないのね。

「当たっても大したことないのだよ」みたいな?

 なんかバシャバシャのピラニアの群の中で暴れまくる戦車みたいっすよ。


 なにせこの勇者様ときたら防御力がやたらと高い上に自動回復機能まで搭載なんです。

 セリエイヌさんいわく「あのスキルがあればたとえ死んでも生き返る」とか。

 さすがはカラアゲ君さん。ぱねえっす。


 それにしてもブラザー、レディーの前ですぜ?

 せめてハラワタくらい中にしまいましょうよ?

 脳ミソもダメ。

 絵的にグロいし、オイニーもツイキーです。


 あ、ダメ、また吐きそう。

 それじゃ失礼して。おろろろろろろろ。



 さてと。吐きながら状況説明。

・この世界には「流星落とし」という大魔法があります。大岩を敵地の遥か上空に転移させて落とすんです。まともに喰らえばキノコ雲が上がって町がひとつ消えるとか。なにその核ミサイル。

・ただし異世界核ミサイルの「流星落とし」はコストが馬鹿高い。照準を合わせて魔力をチャージするのに一万人の生贄が必要だとか。あと魔力チャージに最短でも一週間掛かります。

・ちなみにこれで大都市への攻撃はできません。王都みたいな大都市には自動迎撃ミサイルである「星砕き」の大魔法が常備されているからです。こちらは魔力チャージに生贄が千人ぽっちという驚きの低コスト。ですので、大都市へのミサイル攻撃はコスト的に割に合わないことになります。

・しかし敵さんはこちらのメインアタッカーである勇者様を葬るために上空に監視を張り付け、高価な流星落としを隙あらばバンバン撃ってきます。

・なので勇者様の行動にはいろいろと制約がつきます。流星落としの準備が整う一週間後に勇者様がどこにいるか、敵に悟らせるわけにはいかないのです。

・たとえば。勇者様は星砕きもないような中小規模の町には、三日以上は滞在できません。行き先が特定されてしまうので移動に街道は使えませんし、大規模な軍隊とは行動を供にできません。つまり勇者様は少人数で常にちょこちょこ動いていないと敵の核ミサイルに狙われてしまうのです。

・なので勇者様はその目的地を悟らせないように、藪を掻き分け山を越え河を渡るのです。目的地とは敵の戦力の集中する場所です。そう、このゴブリン砦のような。

・勇者様は妖怪アンテナ機能も搭載していますから、敵の集中する場所が分かってしまうのです。

・ちなみに敵の根拠地は魔族の勢力圏のはるか奥深く。てことは現時点では魔王討伐なんて夢のまた夢。だって道々雑魚モンスターを倒しながらそこまでたどり着くだけで、いったい何年掛かるものやら……。



 おっとどうやら試合終了ですね。

 ドロドロでグチャグチャの血の海の中、カラアゲ君が天に向かって勝利の雄叫びをあげています。

 崖の上で狼が月に吠えるあのポーズですよ。



「さすが勇者様」


「なんと見事な」


「いつ見ても凄まじい」


 はい。背後からさすゆうを頂きましたよ。

 つかキミたち今回戦闘に参加しなかったよね?

 皆さん今日は女の子の日で見学っすか?





 んん? いつ見ても? 



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