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3話 「職業」

 少し歩いていると二つの人影が見えた。

 リクトは、素早く崩れ掛けの建物に隠れる。

 幸い、辺りには遮蔽物が多いので気づかれていない。


「全く、肝心なアイツはどこに行ったのよ!親に黙って来たっていうのに」


「もう少しで来るんじゃないかな?あの女神に同じ所に転移させて貰えるしさ」


 声から察するに、男女ペアだ。危険な奴ではないので安心する。


(ってか、知ってる声なんですが·····)


 顔を出すと、そこにはマサキとユウナた。


「なんでお前らがいんの?」


 リクトが出てきたことにより、二人は驚く。

 そして、リクトの背負っている物を見て────


「「ぶはっ」」


 二人は爆笑した。

 ユウナは、指を指しながら口を抑え足をばたつかせてる。

 マサキに至っては、顔に似合わず顔面崩壊レベルで笑っている。


 さっきまで壁を蹴って発散したストレスも、蓄積されていく。


(話が進まねぇ)


 数分後。


「マサキ、説明頼む」


「おう、実はだなぁ····」


 マサキは、ユウナの分までここに至る経緯を話した。


 リクトが通り魔から逃げている時間、6時からゲームをする約束をしていた、マサキは直接リクトの家に行った。

 そこで、親にコンビニに行ったきり帰ってこないことを聞き探していた。

 その時、偶然ユウナに会い、人手を増やすため事情を話して捜索した。

 探している途中、突然白い場所に移動していてあの女神にリクトの事情を聞き異世界に転移してきた。


「マサキ····俺のせいでお前を巻き込んでごめん」


「気にすんな。それにゲームより面白そうだしな、とりあえず異世界攻略しょうぜ?」


「マサキ····よし!それじゃ街に向かってみるか!」


「私の事も心配しなさいよぉ」


 完全に空気だったユウナは、リクトに絡む。

 しかし、リクトとマサキは攻略話に夢中だ。


「バカぁああああ」


 ユウナは、リクトを思いっきり殴る。


「痛てぇえええ!なんで俺だけ?理不尽過ぎる」


 こうして、三人の冒険は始まった。


「ところで、お前ら異世界に来る前に何、貰ったんだよ」

 仲間のスペックを確認するために、異世界に行く前に一つだけ叶えられる願いを聞いた。


「俺は、強い剣が欲しいって言ったらこれを貰った」


 そう言って、マサキは(さや)から抜き、剣を見せてくる。

 一言で言い表せない、剣だった。

 光沢で自分の顔が写っている。

 そして何より柄から刃まで派手さはなく、黒一色。

 明らかに、初期武器では無いことが分かると、リクトは逃げるようにユウナにも聞いた。


「これよ···壊さないでね」


 弓だ。

 弓は、木で出来てる。

 しかし、金の装飾が施されていて、弦はしっかりとしている。

 ファンタジーと言うよりも、古風と言った感じの弓だった。


(いいなぁ、俺ランドセルだよ····)


 リクトは、弓を返し街を目指すため歩き始めた。


 しばらく歩いていると、大きな街が見えた。街の周りには塀があり、侵入者を街に入れない造りになっていた。


 門の近くまで行った所でリクト達は引き止められ、声をかけられた。

 どうやら衛兵のようだ。


「止まれ!カードを見せろ」


 リクト達は、そんなものを持っているはずもない。


「すいません。持ってないです」


「そうか、早く作るように!とりあえず、このプレートに手を当ててくれ。」


 衛兵は、そう言って黒い板のようなものを差し出す。


 リクト、マサキ、ユウナの順に手をかざして、衛兵に渡す。


 衛兵は、一瞬眉をひそめ、すぐに俺達を見た。


「召喚者の方でしたか。とんだ御無礼を致しました。すぐに案内を付けますのでお待ちください。」


 突然の衛兵の態度が変わった。

 ここでは、召喚者は偉いのだろうか。


 衛兵は、すぐに門を開け、案内役を呼びに行ってしまった。


 マサキやユウナは、街の雰囲気に気を取られていたがリクトは、さっきのプレートが気になったので見てみた。

 プレートには、リクト達の個人情報が書かれていた。


 ───────────

 雨宮 龍空翔 (16)

 性別:男

 レベル:1

 種族:人族

 職業 :なし

 技能:言語理解

 ───────────

 ───────────

 上条 柾 (16)

 性別:男

 レベル:1

 種族:人族

 職業:なし

 技能:言語理解、剣術


 ───────────

 ───────────

 木戸 友奈 (16)

 性別:女

 レベル:1

 種族:人族

 職業:なし

 技能:言語理解、弓術

 精神統一

 ───────────

(え?俺のステータスしょぼくね···)


 リクトだけ、ステータスが平凡だった。

(見なかったことにしよう)


 しばらくして、案内役が来て、リクト達を中央管理局と呼ばれる所に連れてこられた。そこは、二階建てで一階の屋根が吹き抜けになっており、二階から全体が見渡せる設計になっていた。


「ここでご自分のカードを作って下さい。作り方は先程門を通った時と同じでプレートに手を当てていただ手だけです。」


「ありがとうございます。」


 一応礼をする。


「それと、皆様にはギルトに入っていただきます。ギルトの説明も受け付けで聞けます。それでは。」


 そう言うと、案内役は帰って行った。

 リクト達は、受け付けに行き、説明を受けた。


 カードはプレートで見た物と変わらなかった。しかし、カードは、どの街でも使える通行証で、あると通行税を取られないで行き来できる。自分のステータスも常に確認が出来るので、失くすと面倒なことになりそうだ。


 どうやら、カード発行代はギルドに入るのが条件らしい。

 ギルドは、自分の職業にあたる。

 職業によって、魔法や戦闘に違いがあるので慎重に選ばなければならない。

 ギルト一覧を見ると、30種類以上あった。

 リクトが気になったのは、盗賊、魔術師、聖騎士、神官だった。

 何にしようか迷っている所に、マサキとユウナが職業を決めたのか話しかけてきた。


「遅いー!はやくしてよね····」


 ユウナは呆れている。


「お前らもう決めたの?はやくね」


「そうかな?俺は聖騎士にしたよ。元々、技能に剣術があったからオススメされてね」


「あっ!それ私も。弓術があるから狩人を推された。」


「そ、そうか」


(言えない。俺は技能何も無いなんて···)


「あの····技能に秀でたところも見られませんし、どの職業についても大丈夫ですよ」


 俺が悩んでいると、受け付けの女性が余計なことをいった。


「マジか、技能何も無いって」


「もしかしてあんた、この中で1番弱い?」


「畜生ぉお!頭にきた。もうアシストするから生産職でいいや」


 リクトは職業一覧の1番下にあった、よく分からない職人を選択した。


 受け付けの女性は、リクトにカードと何かが入ってる小袋を渡した。


 「こちら、ギルド加入に必要な貨幣です。余った、貨幣は宿代、食費、装備品などを購入するのにご利用下さい。」


 「ちなみにギルドを辞めたい場合はどうすればいいんですか?」


 「辞めるのに貨幣は取りません。加入には掛かります。それから宿はここの上を使うのもいいですし、近くの宿をとるのも良いでしょう。」


 「わかりました。」


 リクトは、貨幣の入った小袋とカードを受け取った後、待っていた二人と合流する。


 「さて、まずは宿だね。近いしここにしようか」


 マサキが提案する。しかし、リクトは違う提案をした。


 「いや、ここは高い。さっき通った道でここより安い宿屋を見つけた。それに、人がほとんどいないのを見ると、ここはカードを発行、ギルド加入脱退以外に来る必要がないと思う。」


 リクトは、案内役が案内した道を歩きながら、看板などを見ていた。その時に、技能の言語理解で宿屋の看板を見つけ値段を見ていた。


 「さすが、抜かりない洞察力は現実でも変わらないな。」


 「たまたまでしょ?まあいいわ、安いならそっちにしましょ」


(そのたまたまを見逃していたのは誰かな?)


 そう思ったが殴られるのが嫌なので黙っておく。


 無事に、宿屋に到着した。

 貨幣節約のため、リクトとマサキは同じ部屋、ユウナは女子なので色々と問題があるという事で一人部屋をチェックインした。


 リクト達の部屋全体は、不自由なく、かといって広くもない二段ベットの部屋だった。

 ユウナの部屋は、一人にしては大きすぎる部屋だ。

 その理由は、部屋にシャワー室があるためだ。

 もちろん、その分値段はリクト達の部屋の2倍は高くなるが女の子であるユウナには、その程度の出費痛くないらしい。


 リクト達は、シャワー室がないので公衆浴場で体を洗った。

 宿屋に戻って来た頃には、ユウナは既に寝ていて、マサキも「お先に」といってすぐに寝息を立てていた。

 ここに来るまで歩いたのと、リクトに至っては通り魔との一件で精神的に疲れていたので、リクトも寝るのに時間はかからなかった。


 こうして、異世界初日を何事もなく乗り切るリクト達であった。

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