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2話 「異世界召喚」

 目が覚めるとそこは、異世界───ではなく、白い場所だった。

 ここはどこだろう。そして何故ここにいるのだろう。

 そんな疑問が頭をよぎる。


「可能性は2つ。1つ目は俺は死んでいて人間が死ぬと必ず訪れる死後の世界に連れてこられた。2つ目は、実は俺は生きていて何者か、もしくは自分の力でこの場所に転移したかだな」


 そんな馬鹿げたことを、ひとり呟いていると突然、上から光が差し込む。

 光により姿は定かでは無いが、この状況を説明してくれるであろう人物が、降下していき、地面から2メートルぐらいで止まる。


 美女だ。病的なまでに白い肌は、誰にも汚されることが出来ないぐらい輝いていた。

 顔もその美女を美女足らしめている要因の一つだ。

 整いすぎた目や鼻は、冷たい印象を受けるほどの美貌である。

 これで、リクトに微笑みかけたりしたならば玉砕覚悟で告白するところである。


 リクトがまるで、動かないのをみて美女は満足そうな顔で口を開いた。


「ようこそ。女神(わたし)の神殿へ。私は、光の神アウロア。貴方を異世界へと召喚させるものです。」


 異世界召喚───それはリクトの夢にまでみた光景そのものだ。

 しかし、異世界召喚に何も代償がないのは怪しい。


「何も代償が無いのはおかしくないですか?そもそも俺は死んでいるのですか?」


「ふふふ。思ったより頭がキレるわね。データでは、知能は低かったはずだけど···」


 先程とは打って変わって、人を食ったような性格だ。

(こっちが素だろ!データってなに?プライバシーはどこまで守られてるの····)


アウロラは、リクトの様子を見て微笑んでいる。


「あなたは、死んでいません。私が、落下中の貴方の身体をここへ転移させ、背中や頬にあった傷を癒しました。そして貴方は現在、行方不明として捜索されています。」


「傷の治療は助かりました。ですが、それはあなたに大きな借りがあることになりますよね?」


「安心して下さい。貴方が異世界召喚を望まないと言うなら、元の世界にそのままお返ししますよ。もちろん、元の場所にね」


 元の場所、それは即ち落下中の状態に戻すということだった。

 こうなってしまっては、リクトに拒否権はなかった。

 仕方なく首を縦に振った。


「あらあらぁ?もう少し抵抗なさっても構いませんのに····まだ貴方を釣るネタはいくらでもありますよ」


(この人はサディストかなにかなのかな。)


「では、召喚の儀式に入りましょうか。ああ、そうそう、異世界に行く前に、貴方が望むことを一つだけ叶えましょう」


(えー今絶対忘れたまま召喚しようとしてなかった!?)


 カイトはしばらくの間、考えた。

 異世界で無双できる能力、高い攻撃力を誇る剣や絶対防御の盾、神話級魔法。

 考えれば考えるほど、インスピレーションが湧いて時間が経過している。女神様はというと、退屈そうにリクトをみているだけで何も言ってこない。

 リクトは、これ以上長引くと何を言われるか分かったものでひとつに絞る。


「よし!決めました!」


「やっとですか?全く····私も暇じゃないのでとっとと言ってください」


「俺を─────」

 願いを言おうとした時、ポケットの中からアニソンが流れた。

 携帯が鳴ったのだ。

(圏外かと思ったが電話使えるのかよ)

 相手は「クソ担任」と表示されていた。

 そこでリクトは今日居残り補習があったことを思い出した。

 とりあえず、出ると───「小学生からやり直せぇぇ!」

 携帯から大音量の怒鳴り声が聞こえる。

「今日で先生とは、お別れです。なんだか寂しいけど今までありがとうございました」

 リクトは怒りを抑え、冷静に話し電話を一方的に切る。

 そして2度かかってこないように携帯を真っ二つ折った。


(ふぅー。スッキリ)


 これで心置きなく言える。そう思ったが──。


「ふ〜ん?本当にそれで良いの?貴方変わってるわね。今まででそんな望みを言った人は貴方が初めてよ」


(おかしいな─、まだ何も言ってないですけどね)


「まさか···俺を小学生からやり直せ!····だなんて。」


「違います!そんなこと言ってないですよ」


「いいえ?貴方は確かに言いましたよ。貴方の所有物から声が聞こえた。それはあなたの願いと同じでしょ」


 理不尽な女神の考えに、リクトは必死に否定する。


「じゃあ、それ無し!幻獣使いに変えてください!」


「ふふふ···それは出来ないのよねー」


「いや、嘘ついてるぅ!嘘ついてる顔だからぁ···頼みますよぉ」


 女神は、この状況を待っていたかのように楽しそうに笑う。


「流石に貴方を若くすることは出来ないから、貴方には、ランドセルを送るわ」


「はぁ?ちょっと話を進めんなぁ!なんでも叶えてくるれる割にはショボ過ぎるだろ」


 ランドセルしかないというのは、異世界では即死レベルに危機である。


「そうね···算数、国語ドリル、防犯ブザー、ホイッスル、帽子も付けたあげるわ!ドリルは1日10分しっかりね」


「そういうこと言ってるんじゃあない!」


「はい決定!行ってらっしゃいー」


 リクトの話を何も聞いていなかった。

 話は終わりと言わんばかりに2回手を叩き、詠唱する。

「我が名の元にこの者を導きたまえ」


「だから待てぇぇぇえ」


 リクトは、二つの魔法陣に飲み込まれた。



 魔法陣は瓦礫の上に出現し、リクトを下ろす。

 辺り一面は、崩れかけの建物が広がっていた。


 リクトは、身体に違和感を感じた。

 違和感の招待は、黄色い帽子や、首にぶら下げたホイッスル、そして赤いランドセルだった。


「あのぉくそ女神ぃいいい!」


 空に思いきり叫び、建物を蹴ってストレスを解消する。

 こうして、リクトは異世界召喚されたが装備品が小学生並みのスペックだった。



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