23話
イベント7日目
「ハルーこっちに洞窟あるよー!!」
「分かった今そっち行く!」
本当は今日も街やプレイヤーホームでのんびりしたり生産の作業をする予定だったのだが、いつもの日課である水中訓練で時間が早めに終わり、余った時間が勿体ないからお昼までトレジャー探索をすることになった。探索場所は以前に狩場にしていた岩場の方向とは反対方角の岸を探索していて、探索して早々にレイラが海中に存在する洞窟を発見したようだ。
その洞窟は見た感じかなり大きな穴で大陸の方へまっすぐに穴が開いてるような感じだ。
「それなりに大きい穴だな、これはもしかするとあるか?」
「だね、これならあるかもね期待大だよ!!」
とりあえず、洞窟の中を探索し始めたのだけど、ある問題が発生してしまった。
「おおお、暗すぎて何も見えない」
奥へと進むごとに暗くなっていき最終的には何も見えなくなってしまった。
「レイラ、悪いんだけど、これ以上進んでも俺じゃ何も見えないというか進むのも難しい」
「ならはい、私の手を掴んでて。まだまだ奥があるみたいだし」
「いや、このまま進んでもお荷物になりそうなだけだから入口まで戻って待っていてもいいのだけど」
「大丈夫!それにもし魔物がいても私が倒すから!それに私1人で行ってもつまらないし…」
しかし何も見えないのが本当に不便だ、レイラはよくこんな真っ暗の中をちゃんと進めるよな、これが種族差か。
「けっこう進んでるけどまだ行き止まりまで着かないの?」
「うん、まだまだ奥まで続いてるよ」
潜水できる時間が最近伸びてるから潜水スキルのランク上がってそうだけど鑑定スキル持ってないから正確なランクがわからないんだよな。で、1時間半くらいは息を止めていてもまだまだ余裕があるし、水中でも会話をすることもできるようになったおかげで、何も見えなくても会話して退屈をしないですむ。
なぜ水中でも会話ができるかというと先日購入した音魔法のおかげだ、この魔法を使うことで水中でも話すことができるようになった。
レイラに引っ張られ取り留めも無い会話をしながら進んでいると洞窟の奥の方から明かりがさしこんでいる所に辿り着いた。
「ここから水から出れるみたい」
「分かった」
水中から出て陸に上がりながら周りを見渡すと、天井が所々裂けていてそこから光が入っている。
洞窟の奥を見ると進む道があった。
進まないという選択はないから火の魔法を唱え鬼火のようなものを自分の身長よりも少し上の位置に出してから洞窟の奥へと進む。
ずっと奥まで進んでいくと行き止まりに辿り着き、そしてそこには淡く光っている丸い球が少しだけ浮いていた。
「なんだこれ?」
「見るからに怪しいものだね」
はじめて見るものだから、そこら辺に落ちていた小石をその玉へと投げてみたが、石はすり抜けていった。鉄の棒で突いたり、レイラが魔法を放ちぶつけることをしても、通り抜けてしまう。
「本当に何だろうなこれ、何かのギミックか?」
【【個人メッセージ】おめでとうございます!あなたはトレジャーを獲得しました。報酬として200メダルと魔物捕獲デキールを手に入れました】
「うおっ」
「どうしたのハル!?」
「いや、急にアナウンスが流れただけだ、それと今のがトレジャーみたい」
「え?」
何をしても通り抜けてしまうから自身で触れた瞬間にアナウンスが流れ、その淡く光っている丸い球が消えてしまった。どうやら今のがトレジャーのお宝だったみたいだ。
とりあえず、アナウンスに流れた内容をそのまま読み上げてレイラに教えた。
「そっか、今のがトレジャーだったんだね。おめでとう!ハル初めてのお宝だね!!」
「ありがとう、でもレイラがこの洞窟を見つけることができたおかげだから、レイラもありがとう」
「えへへっ」
レイラが火の光で少しだけ紫っぽい色になっている柔らかな長髪を撫でながら、いま手に入ったアイテムを確認する。
「魔物捕獲デキールか。効果は名前通りそのままの意味だろうけど、魔物を捕まえてどうするんだ?」
「さぁ?もしかしたら私みたいにパートナー化できるとか?」
「パートナー化ねぇ」
撫で続けてるせいか火の光でそう見えるだけか分からないがレイラの頬が少しだけ赤味を帯びており、俺の独り言に答えてきた。
魔物を捕まえてその後は?ってなると仲間にする以外選択肢はないか。あとは自分のプレイヤーホームに放逐するとかか?いやそんな危ないことは流石にしないか。
アイテムの説明とか見ることができればいいのだけど、一切そういうのがないんだよな不便すぎる、鑑定スキルがあれば説明とかも出てきたりするのかね。
「まぁ、いいや。ここにはもう無さそうだし戻ろうか」
もうここには何もなさそうだから来た道を戻り始める。撫でるのもやめ、やめると少し残念そうな表情をしたがすぐに素の表情に戻り、後を付いてきた。
洞くつ入口までは真っ暗なためにまたレイラに手を引いてもらい外まで出た。
● ● ● ● ●
「ねぇ、ハル?なにしてんの…?」
「えっと、魔物捕獲デキールを使った?」
「なんで疑問形なのよ…」
「だって、危ない状況だったし」
あの後、洞くつの入口まで戻り他にも洞窟や隠してありそうな場所を探し始めた俺たち、結果は洞窟はないし、岩の隙間にもなかった。それで諦めてエーユヴィルへ戻れば良かったのだが、一度トレジャーを見つけて調子に乗った主に俺が沖の方にも行こうと言い無理に沖まで進んでいった。
その結果、初めは海の底は砂だったのだがとある一帯が大きな岩がたくさん引き詰められている所を発見し、如何にも何かが隠されていそうな雰囲気だったため躊躇わずその一帯へと行ったのが間違いだった。
一帯に入り数分でレイラが辺りを見渡しながら俺に言ってきた。
「ハル、ここは良くない雰囲気がするから戻らない?」
「もしかして、危険な地帯なのか?」
「うーん、あんまりここにいない方がいいって勘がビリビリきてるの」
「レイラがそういうなら戻るか」
俺よりも断然海のことが詳しいレイラがそう言うからには危険なんだろうと思いこの場から離れようとしたのだが一足遅かった。
「キャッ…!」
「レイラ!!」
来た道を戻ろうと後ろを向いた瞬間、岩の隙間から大きな生物がこちらへ猛スピードで近づいてレイラに絡みついてきた。
こちらに襲ってきた生物は2,3メートルくらいのタコだった多分タコの魔物だ、レイラは何とか逃れようと魔法と武器で抵抗していたが引きはがすことができずにいた、俺も魔法で狙撃して引きはがそうとしたのだがびくともしなかった。
「ああもう!さっさと剥がれろ!」
そうこうしている内にタコはレイラを捕まえながら海の底へと戻ろうとしているため、なんでもいいからタコをなんとかしようと先ほど手に入れた魔物捕獲デキールのことを思い出しインベントリから取り出す、捕獲デキールは赤黒いオーラを放っていて縄に縄の先端に赤いボールの付いていた。
使い方が分からなかったがとりあえず対象に当てれば何かしら起こるだろうと、無魔法を足元に出しタコに向かって魔法を伸ばし泳ぐ時よりも早く近づいて捕獲デキールを直接当てた、当てるとタコがポリゴン化し、捕獲デキールに吸い込まれていった。
タコがいなくなったことを確認したらすぐにレイラのもとへと近づいた。
「レイラ大丈夫か!?」
「うぅ、吸盤で肌が痛い…」
レイラの肌が所々吸盤の後で赤くなっていた。
「おおぅ…レイラの綺麗な肌が赤くなってしまった」
「綺麗な肌って…、それよりもハル何したの?」
「さっき手に入れた捕獲デキール使った」
「え…」
赤黒いオーラを放っている捕獲デキールをレイラに見せるように持ち上げてあっけらかんと言うと、レイラは少しだけ表情が固まった、その後が冒頭での会話だ。
「使ったのは分かったけど、あのタコはどこにいるのよ?」
「この中じゃないか?」
捕獲デキールを投げたり、出て来いと念じてもうんともすんともしない。
「わかんないや、レイラが無事だったからいいじゃん」
「私のために使ってくれたのはうれしいけど…」
「というかまだここは危険なのか?」
「うーん、危険な感覚はないけど」
「そうか」
ひとまず、危険はないのか。でも一連の騒動で疲れたから今日はもう探索はいいや。




