チート…?
前回の続きの部分です。キリがいいとこまでなので短めです。
<試験の完了を確認しました。ステータスの適応を開始します>
天の声が聞こえた。まぁ電子音声だが。
腕の中でゴブリンが首から血を流しその体から力が抜けていくのが分かる。というか重たい。
<ステータスが更新されました>
体力10・筋力10・丈夫10・俊敏10・器用25・賢さ15・精神20・運4
↓
体力40・筋力50・丈夫10・敏捷80・器用80・賢さ15・精神20・運9
<ステータスレベル1を反映します。ジョブ・固有スキル・習得魔術の適応…完了しました>
急激に腕の中のゴブリンが軽く感じられるようになっていく。それだけじゃない。ゴブリンを手放すとその場で軽くステップを踏んでみる。
早い。というか人間としてはあり得ない速さで体が動く。
ステータスが分かる。と言えばいいのだろうか。自分の体が作り替えられていく。その体がどの程度動くのか。理解できるのだ。
あは。
思わず笑いが込み上げてくる。なんだこれ?こんなの…
「違反だろ」
仲間がやられたことに残りのゴブリン達が気が付いた時にはすでに遅かった。
最初にしげみから顔を出したゴブリンの眉間に匠の投擲した木の棒が突き刺さっていた。
そして、それを目の当たりにした次のゴブリンは武器を構える間もなく首から上が胴体とさようならしている。
高速で駆け寄った匠が、最初のゴブリンから奪ったナイフで力任せに切断したのだった。
<大神匠の肉体情報の変換…完了。肉体情報の転生更新…完了。魔素同調…完了>
まだ天の声が聞こえてはいるが、ある種の暴走状態の匠にそれは果たして聞こえているのか…。
ゴブリンの構え損ねたナイフを拾い上げると、先ほどの一撃ですでにガタがきているナイフとそれぞれ一本ずつ掴むと頭上に跳躍する。
<大神匠の情報を完全更新。前データの削除…完了。世界との同期…完了>
残す2匹のゴブリンがしげみから顔を出した。だが残念なことにその2匹の視界にはすでに匠はいなかった。飛び上がった匠はそれを確認すると両手のナイフを投擲した。高速で飛翔したナイフはまっすぐにゴブリンの頭頂部に深々と突き刺さると2匹の命を奪い去った。
それを確認してよっしゃ。と思わずガッツポーズをとる匠。アドレナリンが出まくり体中が熱いのが分かる。だからだろうか思わずとったガッツポーズ。そのせいで体勢を崩す。
あっ。と気が付いた時には遅かった。
更新されたステータスを正確にはまだ把握してなかったせいだろうか、飛びすぎた高さと勢いを完全には制御できていなかった。
直後真横まで迫っていた木の幹に全力で直撃したのだった。
ぶへっ。という匠の断末魔と共に「てぃん」という音がしてレベルが2に上がったことを告げる天の声が、誰にも聞かれることなく流れるのだった。
誤字脱字などありましたらご指摘よろしくお願いします。