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なぅ、ぷりんてぃんぐ! ~二次元美少女を実体印刷!!~  作者: 小峰史乃
第一部 第一章 二次元美少女を実体化!!
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第一部 二次元美少女を実体印刷!! 第一章 5

       * 5 *



「遅い!」

 急いで外に飛び出すと、コートを羽織った千夜と、相変わらずメイド服姿のソフィアがすでに待っていた。

「何なのかわかるか?」

「うぅん。ソフィアもわかんないって。エルはどうなの?」

「わたしも詳しいところは……。けれど人ではあり得ない、禍々しい力を感じる。魔神に似た気配であることは確かなんだが」

 勢いで飛び出してきてしまったが、なにやら恐ろしいことが起こってそうなことに首を突っ込んでいいのか、と思ってしまう。

 痴漢や通り魔の類いであれば人を呼べば逃げていくだろうけど、険しい表情を浮かべているソフィアの顔を見る限り、そんな感じではあり得なさそうだ。

 放浪の戦乙女の中に出てくる魔神に近いものの気配なんて、現実にはあり得ない、とも思う。しかし眉根にシワを寄せて気配を探っているらしいエルの碧い瞳は真剣で、助けることに迷っている様子はない。

 ――なら、俺が迷う必要はない。

「悲鳴が聞こえたのがどっちの方向かはわかるか?」

 俺が問うと、耳を澄ますようにソフィアが目を閉じる。

 それと同時に、ひらひらしたカチューシャの後ろからぴょこんとポップアップしてきたのは、ふさふさと毛を生やした、猫の耳。

「……なんだ、それは」

「あー。何て言うか、ソフィアってロボットだし、そういうセンサーとかありそうだし、どうせなら動物の耳だったら可愛いだろうなー、と思ったりしたの」

 コメントに記載すらしてなかったことを千夜が想像して上書きリアライズのときに追加したんだろうが、何でまたネコミミなんだろう、と思ってしまう。

 ひくひくとネコミミを動かした後、ソフィアは右の方向を指さしながら走り出した。

 どうやらこの街の地図はインストール済みらしいソフィアは、迷うことなく道を選び、俺たちを目的の方向へと導いていく。

 たどり着いたのは、家からほど近い場所にある雑木林になってる区画だった。

「凄まじい邪悪な気配がする」

 雑木林に入る前で立ち止まったエルは、そう言って迷うことなく鎧を喚び出し身にまとった。

「――&%#!」

 今度はエルを先頭に、急ごうと言っているらしいソフィアに続いて雑木林に足を踏み入れる。

 街灯の明かりが届かず、月明かりだけが頼りの林の奥にいたのは、黒い怪物だった。

「そこまでだ!」

 身長は俺よりも高く、軽く二メートルは超えているだろう黒いその物体は、エルの声に応えるように振り向く。

 姿は見ようによってはサンショウウオのような感じだが、二本脚で立っているその姿はまさに怪物で、小さく見える紅い目が、俺たちのことを睨みつけていた。

「ソフィア、お願い!」

「待て! ソフィアはダメだ!」

 エルから少し離れた場所に並んで立ったソフィアに俺は声を掛ける。

 どうやらアルドレッドモードになろうとしていたらしいソフィア。しかし木の密度が高いこの場所では、アルドレッドモードになれば木をなぎ倒しかねない。ソフィアのことだから俺たちに配慮はしてくれるだろうが、実際そうなったらどうなるかわかったものじゃなかった。

「この程度の怪物ならばわたしひとりで充分。それよりもあそこの女性を!」

「――$&%」

 言われて見た先には、腰を抜かしているらしいどこかの学生服姿の女の子が座り込んでいた。

 怪物が女性に迫ってこないように間にソフィアが立ち、俺と千夜で助け起こして、転がっていた鞄を持たせてやる。

「ひぃーーーーっ!」

 呆然としていたその子は、我に返ったらしく、そんな悲鳴を上げながら逃げていった。

 怪我がないようでひと安心してエルの方を見ると、剣を抜き、巨大サンショウウオと対峙していた。

 サンショウウオらしくなく、鋭い牙が並んだ大きな口を開けて噛みつこうとするが、その動きは俺の目から見ても遅い。

 悠々と避けてエルが剣を振るうと、長くない怪物の腕が宙を舞った。

 ――この怪物、どこかで……。

 もちろんこんな怪物、現実に見たことがあるわけじゃない。

 何かの本で、これに似たものを読んだことがあるような気がしていた。

 そうこうしている間に、エルと怪物の決着はついていた。

 痛みを感じないのか、両腕両脚と尻尾を切り離されてもまだもがいて噛みつこうと口を動かしている怪物。さらに身体を上下に切り離されても、死に絶える様子がない。

「これは……、どうすれば良いのだ? 和輝」

「どうしよう……」

 傷口からは血が流れている様子もない。

 生物かどうかもわからず、身体を両断されても元気が衰える様子のない怪物の対処方法など、思いつくわけがない。

「――*+$%!」

「は、離れて! ソフィアが焼くって!!」

 言われて俺たちは怪物の側から離れた。

 切り離されてなお動いている腕と脚を身体の元に集めたソフィアは、右手を高く上げた。

「そ! んなの、ありなのかぁ?」

 俺は思わず、そう漏らしていた。

 天を突くように上げられた右手が、巨大化した。

 手首から先だけがアルドレッドモードになり、メカメカしい関節を露わにしている。

「――*+%!」

「もっとだって!」

 五歩くらいだった距離をさらに広げると、アルドレッドモードの右手が赤く光り始めた。

「ヒートフィンガーか」

 原作アニメのアルドレッド・ソアラにもあった格闘用装備、赤熱させた拳で攻撃ができるヒートフィンガーを、ソフィアは怪物に向けて振り下ろした。

 激しい熱風と、樹脂か何かが高温で焼けるのに似たジュッという音が過ぎ去った後、雑木林の地面に残っていたのは巨大な手の平の形の焦げ跡だけだった。

「いまの怪物は、いったい何だったのだ?」

「いや、わからない……。あんな怪物、この世界にはいたことはない、はずだ……」

 剣を納めたエルに厳しい顔で問われるが、俺だって何だったのかがわかるはずもない。

「妖怪とかそういうものなのかな?」

「……どうなんだろ」

 首を傾げてる千夜も自分の言葉を信じているわけではないだろう。

 リアライズプリンタが届き、エルとソフィアを実体化した他に、この街では何かが起こり始めているような予感が、俺にはあった。



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