採用2
不定期のドン亀更新です。
よろしければお付き合いください。
電話をかけた翌日、私は心底悩んでいた。
新しいアルバイトに心配しかない。
明日来てって言われても、何時に何を持っていけばいいのか。
住所だけかろうじてちらしのすみっこに載っていたけど、特にメモとかしてないから覚えてないよ。
しかもあのゆるい女の人は一体だれなんだろう。
あれが雇主ならもう不安しかない。
まだ今のアルバイトを辞めていないし、来月のシフトまで決まっている。
辛くてもお金をもらっている以上、急に辞めるのも気が引ける。
考えなしに完全にノリで応募しちゃった。
これはもう辞退しよう。
そう思い立って電話をかけた。
「はいはーい」
わずか1回コール鳴るか鳴らないかで昨日の陽気な女の人がでた。はや!
「あの、昨日お電話差し上げた者ですが」
「丁度よかった~ねぇ悪いんだけど、来るときレベッカのチョココロネ買ってきて~」
「え?チョコ?」
「朝起きたら急に食べたくなったの。もう口の中がチョココロネの味なのよ~」
んんん?意味がわからない。
誰かと間違えてるの?
「いえ、あの私、昨日アルバイトの件でお電話した者ですが」
「あ、時間ね!決めてなかったものね。今は・・っと10時半ね、そしたら1時間後ぐらいに来てくれたらいいわ。そのくらいに美味しいコーヒー淹れておくわね」
「そうではなくて、私辞退を」
「そうね。お店はレベッカで聞けばわかるわ。そろそろお客さんがくる時間だわーごめんね」
そういって電話がきれた。
まったく話を聞いてくれなかった。
レベッカは私の家から自転車で15分のところにある割と人気のお店だ。
パン屋さんと喫茶店を足して2で割ったような個人商店だ。
行けないこともない。でも行きたくない。
「でもコーヒー淹れるとかいってたな」
無視してしまえばいいんだけど・・・
時計をみると丁度10時半になったところだった。
貴重な休日といえ、学生の暇な夏休みだ。特に誰とも約束していない。
行って断るか。
おもわずため息がでる。
手土産にご希望のチョココロネを持っていくのだし、NOとはあちらもいいにくいだろう。
憂鬱ながらもそう結論づけて、しぶしぶ出かける支度をはじめた。