採用1
主人公のアルバイト採用についてのいきさつです。
『自分のペースで働いてみませんか?』
アルバイト募集!
週3~6日 時給1600円 女性限定
専門的な知識はご不要。
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090-1192-×××× 担当:加藤
それまでやっていたアルバイトに、私は心身共に疲れきっていた。
だから偶然目に入った貼り紙に、これはそういう運命なんだなと思いこんだ。
神様が今のアルバイトなんてやめて、次へ行きなさいってことなんだ。
そうだそうだ。
夏休みになって11連勤を務めあげた帰り道。
私は、随分ハイになっていたんだと思う。
ドーパミンのなせる業だ。
その場でためらいもなく電話をかけるなんて、冷静になったら絶対にしなかったと思う。
「はい。もしもーし」
ん?私は1度スマホから耳をはずして、画面を確認した。
うん。友達とかと間違えてないな。
「あれ~きこえてる?もしもーし」
ずいぶんフランクな女の人が電話越しに話しかけてくる。
「あの、アルバイトの張り紙を見た者ですが、」
まだアルバイト募集しているでしょうか。
そう続けようとしたらフランクな女の人がかぶせ気味にきた。
「OK~じゃぁ明日早速来てくれるかな~?」
なんか終了したお昼の人気番組の有名司会者みたいな質問がきた。
しかも催促するような間まであけてくれている。
「い、いいとも~」
あ、この人変な人だ。
だけど、無視する度胸も電話を切る勇気もない私は、どもりながら返す。
「ふふふ。じゃぁ今からいう場所に来てね。そうねぇ13時ぐらいならいいかな」
私の家から10分ほどの住所を教えると、「じゃぁねー」と友達みたいに電話は切られた。
私は右手に収まるスマホと、張り紙を交互に見てからはぁぁとため息をついた。
あるのか知らないけど、私はたぶんアルバイト運がないんだろうな。