魔法使いクルトの特技
ある時、おじいさんの魔法使いは尋ねました。
「クルトや、ひまわりとヤモリの絵が描いてある本を知らないかい?」
クルトは知っていました。おじいさんの魔法使いが探している本は、先月おじいさんが自分で捨ててしまったのです。
おじいさんの魔法使いは言いました。
「これは困った。あの本には、ひまわりの種の雄と雌を見分ける方法が書いてあったのに。これでは、雄の種だけを分ける方法がわからないぞ」
クルトにはわからないことがありました。おじいさんの魔法使いが、どうして本を捨ててしまったのか。
クルトにはわからないことがありました。ひまわりの種に、雄と雌があるのでしょうか。
クルトにはわからないことがありました。ひまわりの種の雄だけを分けて、何の役に立つのでしょうか。
クルトにわかることがありました。クルトは、本の中身を覚えていたのです。おじいさんの魔法使いは言いました。
「しかしクルトや、お前は文字が読めないじゃないか」
クルトは本の中身を覚えていました。おじいさんの魔法使いは言いました。
「しかしクルトや、文字を読めないお前が、どうして本の内容を理解できるというのかね?」
クルトは本の中身を覚えていました。クルトは文字が読めません。クルトは本の内容は知りませんでした。
クルトは本の中身を伝えることができました。
クルトはおじいさんの魔法使いのペンと羊皮紙を借りて、本の中身を書きました。
図形の意味は知りません。図形が、本当は文字ということも知りません。
クルトは本の中身を知っていました。
紙に図形を描き続け、クルトはすっかり書き上げてしまうと、それは一〇〇ページほどの本になりました。
おじいさんの魔法使いは喜びました。
「クルトや、お前さんはひょっとして、魔法使いかもしれないね」
クルトは魔法使いの弟子です。
この日から、クルトは魔法のことを教えてもらえることになりました。




