新しい旅人
クルトが目を覚ますと、しわだらけの顔がありました。
クルトは知っていました。おじいさんの魔法使いです。
クルトにお使いを命じ、砂漠に放り出し、爆弾を持たせた張本人です。
クルトは生きていました。
クルトは起き上りました。
「クルト、大丈夫?」
かけられた声は、クルトが知っているものでした。振り向くと、エルザが心配そうに見つめていました。
エルザは死んだはずでした。クルトは自分の頬をつねりました。
やっぱり、クルトも死んだのかと思いました。
「お前は生きているよ。クルトや、どうして赤の旅人に託した爆弾を、自分で使ったりしたんだい? おかげで、お前と連絡を取る手段もすべて吹き飛んでしまった。太陽の光に当ててはいけないといったのに、聞いていなかったんだね。あれは、赤の旅人が、罪を犯した人間たちの城を壊すための爆弾だったんだ。最近、人間どうしが殺しあうことが多くなって、赤の旅人に、死体だけでなく生きた人間の掃除もしてほしいという話が来ていたからね」
クルトは、おじいさんの魔法使いのいいつけは、ほとんど聞いていなかったことを思いだしました。クルトは魔法使いです。聞いたことであれば、思いだすこともできたはずですが、クルトは思いだすことも考えませんでした。
クルトはおじいさんの魔法使いに聞きたいことがたくさんありました。おじいさんの魔法使いは、隠さずに教えてくれました。
「このエルザは、お前が大事に死体を抱いていたから、赤の旅人と一緒にいたネズミに頼まれて、修復したんだ。でも、生き返ったわけじゃない。魂はもう失われているからね。そうさね……ただの体をもった、人形みたいなものだよ。生きている頃の記憶もあるし、人間と何も違わない。このまま、成長もする。だけど、魂がない。それでもよければ、また仲良くしてやるといい。赤の旅人は、また旅に出た」
クルトは、赤の旅人を求めました。
「赤の旅人は、ずっと砂漠を旅し続ける。それしかできないんだ。クルトは魔法使いだ。そんなことをしなくても、できないことはほとんどない」
おじいさんの魔法使いは止めました。クルトはエルザを見ました。エルザは、魂をなくしたエルザの入れ物は、小さく頷きました。
おじいさんの魔法使いは呆れましたが、もう止めませんでした。
クルトはエルザの手をとり、赤の旅人を探しに出ました。
砂漠は相変わらず暑く、クルトは相変わらず幼いままでした。
でも、辛くはありませんでした。
クルトの手は、何も掴んでいないわけではありませんでした。
クルトの手は、いつまでもエルザの手にしっかりと握り返されていました。
幼い魔法使いと赤の旅人は、砂漠で生まれる悲劇をなくすために、いつまでも旅を続けました。




