砂漠の眠り
クルトは魔法使いです。
砂漠の熱さから身を守るため、少ない蒸気を集めて湯気をもやもやさせました。
エルザは魔法使いではありませんでした。クルトはエルザと一緒に砂漠にいました。
たくさんの死体が、ほとんどなくなっていました。代わりに、たくさんの保存食がありました。
砂漠の夜はとても寒くなるので、このまま砂漠にいたら夜には凍えてしまいます。
クルトは、砂に埋もれようとしていたテントを引きずり出しました。乱暴に壊されていましたが、体の小さなクルトとエルザが入るぐらいには、直せそうでした。散らかった道具を拾い集め、クルトは夜になる前に小さなテントを作りました。テントの作り方も、エルザがいた砂漠の民の人たちから教わったものでした。
エルザは手伝わず、ずっと砂漠の中に座り込んでいました。
夜になり、寒くなってきたので、クルトはテントに入りました。
エルザはテントに入ろうとしませんでしたが、クルトが引っ張ると、ふさぎ込んだままテントに入りました。
砂漠の夜は真っ暗になるので、クルトはすぐに寝ました。
エルザも寝ました。
エルザが泣いているのがわかりました。
クルトは寝ました。
「……パパ、ママ……みんな……」
エルザが言いました。
クルトは寝ました。
「これから、どうするの?」
エルザが言いました。
クルトは寝ました。
エルザが寝ました。
クルトが起きました。
ずっと砂漠に座っていたエルザの体は、とても弱っていました。
エルザが眠っていることを確認し、クルトはエルザの体に触れました。
クルトは魔法使いです。自分の体を治すことはできました。
他人の体も、治せるような気がしたのです。
クルトはエルザに触れました。
エルザが弱っていることが伝わってきました。
息をするたびに変な音がしていました。
心臓の動きが弱くなっているようでした。
体中を巡る血が、汚れているようでした。
全身の機能が弱っているようでした。
クルトはエルザが元気になるように、想像しながらエルザの体に触れました。
エルザに触れながら、クルトは眠ってしまいました。




