動く人たちと赤の旅人の魔法
立ち上がった砂漠の民に、クルトは駆け寄りました。
立ち上がった砂漠の民に、クルトは話しかけました。
立ち上がった砂漠の民に、クルトは抱き付きました。
筋肉がしっかりと詰まってごつごつしていた砂漠の民の体は、クルトが抱き付くとぶわりと沈みました。クルトの手の形が、砂漠の民の体にくっきりと残りました。
クルトが抱き付いたところが凹み、別の場所が膨らみました。
膨らんだ体から、ぼたぼたと白いものがこぼれ落ちました。
小さくて白いものは、うねうねと動いていました。
蛆虫でした。
砂漠の民の体に、とてもたくさんの蛆虫が住んでいました。
クルトは驚いて、砂漠の民から離れました。
クルトが知っている砂漠の民は、乾いた麦のような臭いがして、とても清潔でした。
腐った肉の臭いがして、体中に蛆虫が住んでいる人たちではありませんでした。
クルトは赤の旅人を振り返りました。
赤の旅人は、両手をゆらゆらと揺らしていました。
赤の旅人の手の動きに合わせて、砂漠の民が動いているのがわかりました。
砂漠の民が生き返ったのではなく、死んだまま体に住み着いたたくさんの虫に動かされているのだと、クルトは理解しました。
赤の旅人は虫を動かす魔法使いなのだと、クルトは理解しました。
死んだ人間は、魔法使いでも生き返らせることはできないのだと、クルトは理解しました。




