赤の旅人のやり方
クルトの目の前にいたのは、立ち上がった赤いじゅうたんのようなものでした。
じゅうたんのように見えたのは、厚手のマントでした。真っ赤な厚手のマントで全身を覆っていたので、顔も見ることができませんでした。
赤いマントから、黒いものが顔を出しました。
干からびた、細い、骨と皮ばかりの、人の手でした。
昔は手だったと思われる、黒い塊がクルトに近づいてきました。
クルトは、近づいてくる手を見ていました。
ごつごつしているのは、骨の形に皮が張り付いているからだとわかりました。
手だけではありませんでした。
手にはたくさんの虫が張り付いていました。
手をびっしりと覆うように、小さな虫がうごめいていました。
虫の大群が近づいてきました。
クルトは虫が嫌いではありませんでしたが、気持ちの悪い虫でした。
クルトは逃げようとしましたが、体が動きませんでした。
赤の旅人に、動かないよう命令をされていたのかもしれません。
動くこともできず、顔を背けることもできず、まばたきもできませんでした。
クルトは近づいてくる干からびた手と、手にまとわりつく大量の虫を見つめました。
クルトの頭に、手と虫が乗りました。
クルトは動くことができませんでした。
しばらく頭の上に手が乗っていました。
赤の旅人の手が離れました。赤の旅人はゆっくりと移動しました。
砂漠の砂で埋められた地面の、さらに人の死体で埋め尽くされた地面を、ゆっくりと移動しました。
クルトはただ赤の旅人を見ていました。
ネズミはクルトの隣で赤の旅人を見ていました。
赤の旅人はクルトに何をして、いま何をしているのか、クルトはネズミに尋ねました。
ネズミにもわかりませんでした。ただ、
「あれが赤の旅人のやり方です」
とだけ語りました。
赤の旅人はゆっくりと移動し、死体が積み重なる地面の真ん中に立ちました。
赤の旅人が縮みだしました。
赤の旅人を覆っている赤い衣の背が低くなり、地面につきました。
赤の旅人は、まるで地面に吸い込まれるように小さくなり、ただ赤い衣だけが、地面に広がっていました。




