クルトの魔法2
クルトがいるのはひんやりした壺の中でしたが、湯気で蒸れていました。クルトがしばらく流していた血がもやもやしていたのです。
しばらくクルトが待っていると、少しだけ風が吹き、ネズミが戻ってきました。
「お兄さん、上につながりましたよ」
穴がつながっても、壺の中は暗いままでした。砂漠にいたはずなのに、土の中はとても冷たくなりました。今は夜のようです。クルトが寝ている間に、夜になっていました。
ネズミは言いました。土の中だから冷たいだけですが、夜は凍えるほど寒くなるのです。
クルトは壺の中の湯気をもやもやさせました。クルトがもやもやさせた湯気はネズミの空けた穴を上り、地上に出ました。クルトには、湯気がどんな風にもやもやしているのか、はっきりとわかりました。
クルトは魔法使いです。
クルトは地中の壺の中から、湯気をもやもやさせました。
地面の下から、湯気をもやもやさせて文字を書くこともできました。
クルトは字が書けませんでした。
クルトは湯気をもやもやさせ続けました。
ネズミの空けた穴から光が入ってきたので、朝になったことがわかりました。
湯気をもやもやさせても、壺の中から出られるわけではありません。
クルトは湯気をもやもやさせ続けました。
ほかにできることがなかったからです。
クルトは湯気もやもやの魔法使いなのです。
飽きたらやめますが、クルトは湯気をもやもやさせ続けました。
ネズミはクルトと一緒にいることに決めたようです。クルトが湯気をもやもやさせている間、壺の中で朝寝をしていました。
そろそろ壺から出る方法を考えようかと思っていたとき、地面につながる細い穴から、光だけでなく音が入ってきました。
人の話し声のようです。
人間です。




