クルトの魔法
おじいさんの魔法使いは、体の治し方は教えてくれませんでした。
クルトは、体が痛くなければいいなと思いました。
横になっているうちに、だんだん痛くなくなってきたような気がしました。
クルトは、火傷の痕がなくなればいいなと思いました。
横になっているうちに、だんだん火傷の痕がなくなってきたような気がしました。
クルトは起き上ってみました。どこも痛くありませんでした。
クルトは魔法使いです。
いつの間にか、怪我を治してしまったのでした。
どこも痛くない魔法使いクルトは、外に出たいと思いました。
あたりは真っ暗で、何も見えなかったからです。
クルトはネズミを呼んでみました。
真っ暗でしたが、ネズミが顔を出したのがわかりました。
穴を掘って外に出ようとしていたところでした。
狭い部屋にうずくまっているクルトに、ネズミは驚いた声を出しました。
「怪我は治ったんですね。てっきり死ぬかと思いましたけど、やっぱりお兄さんは魔法使いですね」
クルトにはネズミが驚いている理由がわかりませんでした。外に出してくれるように命令しました。クルトは、動物と人間は自分の命令は聞くものだと思っていました。
「わかりました。お兄さんが入っている壺をすっかりかじって、地面の上に出られるように穴をあけます。少し時間はかかりますよ。だって、お兄さんはそんなに大きいし、わたしはこんなに小さな前歯しかないんですから」
なるほど、ネズミは小さいようです。前歯はもっと小さいようです。クルトは暗くてよく見えませんでしたが、よく見ようとしているうちに暗いのが気にならなくなりました。目がよくなってきたのかもしれません。クルトはどれぐらいかかるのか尋ねました。
「そうですね。一月も待ってもらえれば、すっかり出られるようになりますよ」
一月もじっとしているのは、とても退屈しそうです。クルトは、誰か助けを呼ぶことができないかネズミに尋ねました。賢いネズミはしばらく考えましたが、小さな両手を万歳してあきらめました。
「わたしの言葉を理解できるのは、人間だけですよ。でも、人間はネズミの話なんて聞いてくれません。お兄さんの魔法でなんとかなりませんか? わたしが地上に出るぐらいの小さな穴は、もうちょっと待ってもらえれば空けられますから」
クルトが使えるのは、湯気もやもやの魔法だけでした。クルトは湯気もやもやの魔法で助けを呼ぼうと考えました。




