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幼いクルト、魔法使いの弟子になる

 幼いクルトはパパもママも知りません。


 クルトは魔法使いです。


 犬は友達でした。猫も友達でした。ネズミも友達でした。ゴキブリも友達でした。みんなみんな、クルトがお願いするとなんでもしてくれました。

 犬はクルトの回りを踊って見せました。猫は美味しいネズミをとってきました。ネズミは美味しくないゴキブリを取ってきました。ゴキブリは洗剤の泡の中に飛び込んで自殺しました。


 幼いクルトは、動物がクルトのお願いを聞いてくれるのが当たり前だと思っていました。

 クルトは知りませんでした。動物は、人間の言うことを聞かないのです。

 クルトは知りませんでした。クルトは人間ではなかったのです。


 クルトは魔法使いです。

 

 人間ではないクルトは、動物が人間の言うことを聞かないことに気づきました。

 人間の言うことを聞かない動物も、クルトの言うことは聞いてくれました。

 動物は人間の言うことを聞きません。クルトは、動物が人間の言うことを聞かないのは、人間も動物の仲間だからではないかと思いました。


 クルトは魔法使いです。


 犬は友達でした。猫も友達でした。ネズミも友達でした。ゴキブリも友達でした。人間は下僕でした。

 人間は、クルトのお願いを聞いてくれました。

 人間が用意してくれる食べ物は、ほかのどの動物が持ってくる動物の死骸よりおいしく、人間が用意する寝床は、ほかのどの動物のねぐらよりも清潔で心地よいものでした。

 クルトは人間が気に入りました。

 人間だけは、友達ではなく召使にしようと決めました。


 クルトは魔法使いです。


 クルトが頼むと、人間はなんでもしてくれました。

 お金がなくなると、借金をしてクルトを助けてくれました。

 借金できなくなると、強盗をしてクルトを助けてくれました。

 お願いを聞いてくれていた人間が牢屋に入れられると、クルトは別の人間を選びました。


 クルトは魔法使いです。


 まだ幼いクルトは、他にも魔法使いがいることを知りませんでした。

 何人目かに選んだ人間は、クルトの頼みを聞いてくれませんでした。


 クルトは聞いてみました。

「おじいさん、ボクにピザを買ってください」

「ピザが欲しいのなら、ピザ屋の店員に直接命令しなさい」

 なるほど、おじいさんの言う通りでした。


 ピザを食べながら、クルトはもう一度聞いてみました。

「おじいさん、ココアが飲みたいです。持ってきてください」

「ココアが飲みたいなら、食堂の店員に命令しなさい」

 なるほど、おじいさんの言う通りでした。


 ピザを食べてココアを飲みながら、クルトはもう一度聞いてみました。

「おじいさん、今晩寝るところを用意してください」

「お前さんは一人なのかい? なら、わしのところに来るといい。もちろん寝ることもできるし、面白い本がたくさんあるぞ」

 クルトはおじいさんがクルトのお願いを聞いてくれたので、満足しました。


 クルトは魔法使いです。


 おじいさんも魔法使いなんだと、クルトは気が付きました。

 

 この日から、幼いクルトは魔法使いの弟子になりました。


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