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第6章:避けられている?

 俺と那奈姉の関係。

 その関係を進展させるのに大事な物。

 それは告白だと気付いた。

 婚約関係にあるという、突拍子もない状況に動揺して忘れていたのだが、今の関係では想いの確認をしあってない。

 そりゃ、那奈姉も俺の事がそれなりに好きだから婚約関係になってるんだと思う。

 そこは少しぐらい自信を持っておく。

 俺も那奈姉が好きだ。

 彼女と本当の意味で結ばれるためにも、ここは勝負の時。

 いざ、告白へ……。

 さて問題はひとつだ。

 ……告白って、どんなシチュですればいいんだろう?

 

 

 

「那奈姉、いる?」

 

 俺は夜になって那奈姉の部屋を訪れることにした。

 ノックをするも返事無し。

 どうやら、外出中のようだった。

 しばらくして、廊下で咲良と遭遇する。

 

「お兄ちゃん、何をやってるの?」

 

「咲良か。いや、那奈姉を探しているのだが。ほら、昨日、告白するって決めただろ?」

 

「え?……マジでするの?」

 

「俺は本気だぞ。それで那奈姉はどこにいるか知らないか?」

 

 ここで逃げるようなヘタレではないのだよ。

 俺は決めた事は必ず実行する男です。

 

「那奈お姉ちゃんなら今、さっき、お風呂場に向かったけど」

 

「そうか。お風呂か、それじゃ行ってきます」

 

「待ていっ!?お兄ちゃんはバカなの!?」

 

 軽い冗談なのに本気で怒られました。

 咲良は怒ると可愛くて、ちょっと怖い。

 

「でも……咲良の怒ってる顔も可愛くて、俺は好きだ」

 

「や、やめてよ。……最近、お兄ちゃんはいつも以上に変だわ。シスコン覚醒?」

 

 俺、シスコンに目覚めた感があるかも……いや、ねぇよ。

 誰がシスコンですか、誰が。

 俺は那奈姉一筋の男ですよ!

 咲良は可愛い妹なのは否定はしないけどさ。

 

「お風呂からあがるのを待っていれば?そういえば、今日、お母さんたちは向こうに泊っていくから、家の戸締りをしておいてねって電話があったよ。火の始末もしっかりとしておいて、だって」

 

「あぁ、祖父さんの件か?」

 

 うちの父方の祖父さんが怪我をしたそうで、見舞いに行ってる両親揃ってただいま、留守にしている。

 

「祖父さんはどうだって?」

 

「ん。別に大した怪我じゃなかったみたい。少しだけ入院すれば大丈夫みたいだよ」

 

「そうか。今日は両親がいないというわけか」

 

 俺がそうつぶやくと咲良は身に危険を感じた小動物みたいに震える。

 

「お、お兄ちゃんに襲われる前に退散しようっと」

 

「待ちたまえ!?俺はどこぞの変態か!?」

 

「……冗談だよ、冗談。私、お兄ちゃんを信じてるから」

 

「いや、そのおびえた顔で言われるとさすがの俺も傷つくよ?」

 

 最近、目に見えて妹の好感度がさがってるような。

 俺、何か変な事をした覚えもないんですが。

 

「だって、最近のお兄ちゃん……なんかシスコン過ぎて怖いんだもん」

 

 身に覚えのない罪でドン引き。

 俺の可愛い妹から拒絶された。

 う、嘘だ、こんなの嘘だぁあああ……ぐすっ。

 

 

 

 

 そんなこんなでリビングで那奈姉を待つことに。

 咲良の誤解はいずれ解くとして、今は那奈姉の方を優先する。

 ……だ、大丈夫だよな、後回しにしても咲良と仲直りできるよね?

 ちょっと不安になってしまうのだった。

 しばらくすると、髪がまだ濡れた色っぽい那奈姉がやってくる。

 

「那奈姉、ちょっといい?」

 

「道明?お姉ちゃんに何か用?」

 

「話がしたくてさ。婚約者についての話。ゆっくりとする時間も今までなかっただろ?」

 

 今日は両親もいないし、ちゃんと話をするにはいい機会だと思う。

 だが、当の那奈姉はその話をなぜかしたがらない。

 

「えっと、そ、そうだわ。明日、私と一緒にでかけない?デートしましょう、デート」

 

「デートはしたいけど、その前に話を……」

 

「それじゃ、どこに行こうかなぁ?道明はどこに行きたい?」

 

 あからさまな態度に俺は戸惑う。

 なぜデートの話にすり替わるのだろう?。

 こんな話の流れのつもりじゃなくて、俺はちゃんと告白をしようと……。

 

「那奈姉、それもいいけどさ。婚約のことについて」

 

「……デートしたくないんだ?私とデート……道明は私の事なんて……」

 

 ショックを受けた乙女のような表情を浮かべる那奈姉。

 ハッ、咲良に続いて那奈姉の好感度も激減の予感?

 これはまずい、それだけは何としても避けねば。

 

「ち、違うよ。俺はデートしたいよ」

 

「そう?よかった。それじゃ、どこに行くか考えましょ?」

 

「……うん」

 

 告白どころか婚約者の話もできないとは。

 でも、ここで強行して話の流れを変えても避けられるだけな気がする。

 今ので分かった。

 那奈姉は本気で“婚約者”の話題を避けている。

 自分から言い出した事なのに、どうして避けるのか?

 その辺の事情はいまいち理解できないけども。

 それはきっと男には理解できない乙女心っていうやつが関わっているんだと思う。

 そして、俺が不用意にそれを否定すると、彼女を傷つける結末になる。

 分かってる、それくらいは……。

 鈍感だと言われても仕方ない俺でもさ。

 

「道明とデートか。楽しみにしてるわね」

 

 那奈姉は小さく笑うと、俺にそっと手を重ねてきた。

 

「道明に触れてるとすごく安心できるの」

 

「那奈姉、それはそれでおいといて。婚約の問題は……」

 

「あっ。いけない、咲良ちゃんに宿題の問題を教える約束していたの。それじゃ、またね。おやすみなさい、道明」

 

 顔を少し赤らめて彼女はリビングが立ち去っていく。

 ここまで見事に拒否されるとは……WHY?

 

「……なぜにこの話題を避けてるんだ、那奈姉は?」

 

 ひとり残された俺はポカンっとしてるしかない。

 

「くっ、せっかくのチャンスだったのに、告白できなかったし」

 

 俺はため息をついて、ひとつの幸せを逃がす。

 幸せクン、またいつの日か、再会する事を祈ってるよ。

 

「もしや、那奈姉は……俺との婚約を実は嫌ってるとか?あれ?俺、嫌われてたの?」

 

 俺と那奈姉の幼い頃の約束。

 誰がどう見ても今となっては冗談程度にしか思わないのに、周囲からも認められて引くに引けない状況で困ってるとか?

 つまり、ホントの那奈姉は……俺と婚約などしたくない?

 だとしたら、俺って立場的にかなりまずくないっすか?

 

「好きか嫌いか、どっち!?どういうことなんだよ、那奈姉~っ!?」

 

 俺は不安になりながら、悩みを抱くしかできなかった。

 那奈姉、俺のこと……本当はどう思ってるんだー!?

 

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