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第5章:違和感の原因

 春休みも数日が経過。

 那奈姉は必要な物があると言って外出中。

 ちなみに俺も付いていこうかと言ったら「下着みたいの?」と言われて引き下がった。

 さすがにランジェリーショップに入れる自信はない。

 那奈姉の下着に興味があるのはあるが……それを堂々と見れるほどの勇気はない。

 ヘタレというな、これが男の子ってものなのだ。

 

「というわけで、妹よ。相談があるんですが」

 

「やだ。惚気は聞いてあげません」

 

「あっさり、拒否された!?」

 

 俺のベッドの上で漫画本を読む妹にあえなく却下された。

 咲良が俺の部屋に来ること自体は珍しい事ではない。

 少年漫画を読みたい気分の時もあるらしい。

 

「大体さぁ、どっかの妹キャラみたいに実妹に人生相談するのが間違いなの」

 

「人生相談じゃない、恋愛相談だ!」

 

「……そんなに開き直られても。妹に恋愛相談して悲しくないの?」

 

 素で言い返されると悲しいです。

 だが、頼れるのは我が可愛い妹の咲良しかいないのだ。

 

「はっきり言うと私だって、恋愛未経験なの。……なので、恋愛について聞かれても分かるかぁ!」

 

「ご、ごめんなさい……」

 

 逆ギレした妹に怒られました、ぐすんっ。

 女子中学生だから俺より知ってると思ったんだよ。

 少女マンガとか、色々と知識としてあるはずだ……俺以上には。

 

「まぁ、いいわ。お兄ちゃんがそうやって相談するくらいだもの。何かよっぽどのことがあるんでしょう。変な本を隠して欲しいとお願いする以外の何かが。新しい本を預かってほしいという以外の何かが」

 

「……咲良よ、俺の信頼度はまるでないのは気のせいですか?」

 

 その件はどうもすみませんでした。

 今も隠してもらっていてありがとうございます(諸事情で俺に2度目はない)。

 ホント、兄として、何やってるんだと言われても仕方ないな。

 だが、咲良はそれでも、兄を見捨てるような妹ではないのだよ。

 何と言っても俺の可愛い妹だからな。

 

「それで、何?今度は何の相談なの?」

 

 何だかんだいって、ちゃんと相談に乗ってくれる優しさがある。

 例え、面倒くさそうに漫画を読みながらだとしても。

 

「実はだな……那奈姉と俺って婚約者なのだろうか」

 

「お姉ちゃんがそう言ったんでしょう。ママ達も、叔母さん達も許可してるんでしょ?それなら婚約者じゃないの?」

 

「……那奈姉はその話をちゃんとしたがらないんだよ」

 

 この間も、約束はしたが、結局はぐらかされたまま。

 俺と那奈姉が婚約者という自覚がないままでいる。

 外堀だけが確実に埋まっていく。

 別に悪い事じゃないんだが、何かと俺をスルーしてっていうのがさぁ。

 

「そんなの、お姉ちゃんに直接聞いてよ。私に相談されても困る」

 

「相談したいのはここから先だ。俺たち、このままいけば結婚じゃん。でもさ、なんていうか、こう、はっきりしないと言うか、あいまいなままだって言うか……」

 

 言うならば、違和感。

 言葉にしにくい何かが、引っかかっている。

 その何かが俺には分からなくて……。

 

「那奈姉と婚約って言うのは喜ぶべきこと。実際に嬉しいんだけど、素直に喜べないっていうか。何だ、この違和感は?」

 

「……私に言われても、分かんないよ。ちゃんと状況を説明してみて」

 

「俺は彼女に惹かれている、それは間違いないだが」

 

「お兄ちゃんが那奈姉ちゃんに引かれてる?また何か変な事をしたの」

 

「違うっ!?ドン引きされてるわけじゃない」

 

 言葉の発音違いで違った意味になる日本語、ムズカシイです。

 俺は最初から妹に説明することにした。

 ずっと昔から那奈姉が好きだったこと。

 優しかったはずの那奈姉が悪戯好きなお姉様になり、戸惑っていること。

 そして、結婚するという約束を覚えていないのに、婚約者になっていること。

 その中にわいた違和感が俺を苦しめているのだ……多分。

 

「……うーん。違和感っていうかさ」

 

「ん?何か気付いたか?」

 

「お兄ちゃんにお姉ちゃんはどこに惹かれたんだろう。引かれるならともかく、惹かれる要因がいまいち分からない」

 

「言葉遊びで苛めるのはやめて。……それとお兄ちゃんを過小評価しすぎだ」

 

 最近、咲良の言葉の暴力にダメージを受けます。

 いわゆる反抗期の突入なのか、ついに突入しちゃうのか!?

 お兄ちゃんとしてはその辺が心配です。

 今まで素直で可愛い妹のままでいてほしい。

 

「お兄ちゃんの魅力を語れと言われると……ムズカシイ」

 

 咲良は可愛い瞳を俺の方に向けて言う。

 

「ふっ。兄の素晴らしさは言葉にできないものだというのだな」

 

「言葉にすると、大した文章にならないのが難しい。私の表現力が足りてなくてごめん」

 

 謝罪されると逆に悲しいわっ。

 めっちゃ失礼なことをさらっと言う妹である。

 

「もっと何かあるだろう?ほら、カッコいいとか、頼もしいとか」

 

「自分で言うほど、カッコよくもないし。頼もしいお兄ちゃんは妹にエッチな本を隠しておいてなんて言わないと私は思うの」

 

 何気にその件がすっごく咲良の好感度を落としてるのね。

 兄として反省しておく。

 

「それじゃ、お兄ちゃんは私の魅力を語れると言うの?」

 

 咲良の魅力か。

 まだ13歳の中学2年生である妹の魅力とは何か。

 俺はベッドに寝転がった状態の妹を見ながら言葉を探す。

 

「まずは……見た目が可愛い。アイドル並の美少女。俺の妹、マジ天使。今日のサイドアップの髪型もよく似合い、どこのアイドルかと見間違うばかりだ。そして、寝転がっている時にちらっと見える太もも。あっ、下着は見えてないから余計な心配はするな。そのちらっと、という男にとって魅力的なチラリズムが大事なのだ。その白い肌の太ももの感じがすごくがイイ!思わず、イイネ!ボタンがあれば押しちゃいたいくらい。他には……」

 

「も、もういいです……」

 

「もういいのか?俺は咲良の魅力をまだ10分の1も話せていないのだが」

 

 顔を真っ赤にさせて恥ずかしる咲良。

 照れやな一面も可愛いぞ。

 

「恥ずかしいよ、うぅ」

 

 褒められると素直な所も、お兄ちゃん的にはいいところだと思うのだ。

 咲良と義理の兄妹なら、別ルートで攻略してるね、間違いなく。

 

「とにかく、俺が言いたいのは、咲良は可愛い過ぎる妹だと言いたいのだ」

 

「と、とりあえず……お兄ちゃんがシスコンだってことは分かった」

 

 褒めたつもりが逆に好感度下がった!?

 ……俺、好感度あげるようなゲーム苦手なんだ。

 よく選択肢を間違えてBADENDになっちゃうし。

 

「……お兄ちゃん、妹をドキッとさせないでよね」

 

 下がったかと思ったら、なんか微妙に好感度はあがったのか?

 女の子の心は何とも難しい……俺は苦手だ。

 誰か俺の妹の攻略法を教えてください。

 ……と、今は咲良の話ではないのだった。

 

「違和感の正体、何か思いついたりしないか?」

 

「あえて言うなら、だけど」

 

「……なんかあったのか?」

 

「うん。お兄ちゃんとお姉ちゃんって……告白したの?」

 

 咲良の愛らしい唇が告げる。

 ……告白?

 想いを打ち明ける、それがどうした?

 

「ははっ。何を今さら……告白なんて……そんなもの……」

 

 ホントに今さらだぞ、そんなのは。

 ……だが、よく考えてみるんだ。

 これまでの出来事を思い出す。

 那奈姉と再会して、いきなりキスされて、そんでもって婚約者だと言われて。

 その婚約者って言うのが、過去の俺がプロポーズしたものらしい。

 それで、那奈姉はここで暮らす事になって、俺と結婚する気でいると言う。

 これまでの流れで感じ続けていた違和感。

 その正体、今の俺たちは想いを確認し合っていない。

 

「――それかぁ!?」

 

「……ひっ!?う、うぇーん。お兄ちゃん、怖いよ」

 

「あ、ごめんな。咲良、驚かせてごめんなさい」

 

 いきなり叫んでびっくりした咲良が涙目になるので平に謝罪。

 可愛い妹の好感度をこれ以上下げるわけにはいかない。

 

「分かったの……?」

 

「そうだよ、俺と那奈姉はいきなり婚約者だって話で、想いを確認しあってない。告白をしあっていないんだ。好きとか嫌いとか、そう言う告白をさ。大事だよな、告白は。それがないからダメなのだ」

 

 過去の俺はしたのかもしれない。

 那奈姉が好きだ。

 そんな告白をして、「那奈姉にお嫁になって」と言ったのかもしれない。

 だが、今の俺は知らない。

 だからこその違和感、この違和感が俺の幸せを邪魔してる。

 そして、那奈姉が不安になり、俺と婚約者の話をまともにしないのもそれが原因。

 言葉で婚約者と言っても、好きかどうか確認してないから実感がわかないのだ。

 

「俺……那奈姉に告白をするっ!」

 

「……婚約者の関係なのに告白もまだって、どうなんだろうね?お姉ちゃん、可哀想」

 

「返す言葉もございません」

 

 と、とにかくだ、違和感の正体は分かった。

 那奈姉に告白して、まずは想いを確認し合わないといけないんだ。

 

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