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第13章:理性との戦い

【SIDE:望月道明】


 その夜は咲良と一緒にリビングで映画のDVDを見ていた。

 咲良が借りてきたのはホラー映画のDVD。

 事情を知らない彼女は那奈姉に「一緒に見ようよ?」と誘ったが、当然ながら部屋に逃げてしまいました。

 というわけで、俺たちはソファーに座りながら仲良く映画鑑賞をしていた。

 

「うわぁ、雰囲気でてるね。さすがハリウッド。B級映画とは迫力が違う」

 

「……そーですね」

 

「ふふっ。お兄ちゃん、もしかして怖いの?」

 

「そ、そんなわけないだろう?ははっ、俺はこの程度のホラーなど怖くない。ハリウッドクオリティだろうが、かかってこいや」

 

 こう見えて、咲良はホラー映画は苦手ではない。

 俺も普通だ、那奈姉みたいに完全な苦手ではない。

 ただ、普通ゆえに怖すぎるとダメだったりする。

 

「だよね?これはすっごく怖いんだって。一人じゃ見れないから一緒に見よ?」

 

「お、おー。どんなものか、見てやろうじゃないか」

 

 ドキドキ、ホントに大丈夫なんだろうか?

 俺はやる気なく返事しながら隣の咲良の顔を見る。

 ホラー映画なのに、何だか楽しそうだ。

 

「……咲良ってホラー苦手じゃないんだよなぁ」

 

「苦手じゃないよ?びっくりするのは嫌だけど。ホラー要素って楽しいよね。現実になさすぎて、あり得ないのが面白い」

 

 同意を求められても、俺は楽しいと断言できるほどではないのですが。

 映画は屋敷に集まった人間が幽霊に殺されていくという定番ホラー。

 とはいえ、特にCGがすごくて、ド迫力なのが印象的な映画だ。

 映画が始まり、既に数人目の犠牲者が出始めた頃だった。

 

「……咲良?」

 

「……ん……」

 

 映画観賞から1時間半が経過、どうにも咲良の様子がおかしい。

 声をかけても反応が薄いし、目がうつろだ。

 まさかこのホラー映画に呪われた!?

 

「……んみゅ……」

 

 と、思ったらただ眠たそうにしていた。

 

「咲良?眠いのならまた明日にしようか?」

 

「だいじょーぶだよ……まだ見る~にょ」

 

 にょって何だ、全然、大丈夫じゃない。

 大丈夫なんて今に眠りそうな瞳で言うセリフではありません。

 

「ふみゅぅ……」

 

「咲良、寝るな、寝るんじゃない。今、寝たら俺が困る」

 

 お兄ちゃんひとりだとこの映画が怖くて見れないだろう?

 ……やっぱり、ホラーって一人で見ると怖いのだ。

 咲良がいてくれないと俺は……明日、無事に起きられるか分からない。

 

「咲良、寝るなら、自分の部屋で寝た方がいいぞ」

 

「だから……眠らない……ってば、ちゃんと映画をみて……るよ」

 

 咲良は戦っていた。

 眠気と真剣に戦っているのが見て取れる。

 そこまで眠いのなら部屋に戻って眠っちゃえばいいのに。

 映画も多分、既に頭に入っていないだろう。

 

「……すぅ」

 

 やがて、眠気に負けて、コトンっと俺の肩にもたれかかってくる咲良。

 彼女は可愛らしい寝顔で眠りに入っていた。

 

「……咲良?寝ちゃったのか?」

 

 俺は微苦笑して、その寝顔をみる。

 この子の可愛さはホントに半端ないな。

 閉じた瞳、長いまつげが可愛さを際立たせる。

 それにしても、本当に我が妹ながら咲良は可愛いすぎる。

 そして、最近は中学生になってから発育の良さに加え、妙な色っぽさまで兼ね備えてきているのである。

 実にけしからん、将来が楽しみすぎるじゃないか。

 

「そんなことよりも、今のこの状況はまずい……」

 

 テレビではただいま最後の犠牲者と思われるヒロインが幽霊に襲われて逃げ惑ってる。

 俺はそれ以上、ひとりでホラーを見れずにDVDをとめて、テレビを消した。

 

「ふぅ、自分のヘタレっぷりを自覚するぜ」

 

 今年の目標、ひとりでホラー映画を見れるようになろう。

 俺も今年からは高校生だしな。

 大きな目標を持った所で現実が俺には待っている。

 

「……んぅ」

 

 俺の隣で熟睡している咲良が問題である。

 俺もそろそろ、部屋に戻りたいのに起こすのが忍びなくてできない。

 

「咲良?咲良ちゃん、起きてくれるかぁ~?」

 

 声をかけても反応なし。

 俺はそっと手を伸ばして柔らかな頬を指でつついてみる。

 弾力のある肌、ぷにっとした感触がたまりません。

 

「……みゅぅ……だめぇ、なの……」

 

 ――かわゆい、妹に萌えるッ!!

 いやいや、落ち着け、俺……実妹に萌えている場合ではないぞ。

 

「くっ、咲良め。俺の妹ながら俺を萌え殺す気か」

 

 起きる気配なし、これは困ったことになった。

 なぜに俺がこんなにも焦っているのかと言うと……。

 

「これが男の戦いってやつなのか」

 

 ぶっちゃけ、“理性”と戦っているのです。

 こんなにも無防備で可愛い妹が寝ていて、どうにかしてしまいそうな自分が怖い。

 咲良の寝顔と俺の理性の戦いが始まった。

 

「……おにーちゃん」

 

 咲良の寝言の攻撃。

 効果は抜群だ、俺の理性はダウンした。

 

「ワンターンキル!?俺の理性、弱っ!?」

 

 大ピンチ、妹の寝言とひとつで理性がやられた。

 自分の理性が弱過ぎて情けないです。

 

「……くっ、なんて手ごわい妹なんだ」

 

 だが、兄としてここで負けてはいけないのだ。

 例え、どんなに可愛くても、咲良は俺の妹で……。

 ここは兄の“意地”で乗り切って見せる。

 ふわっと香るのはシャンプーの香りだろうか、花のようないい匂いがする。

 だ、だから、こんなところで負けるわけには……兄の意地の見せどころだ。

 

「んぅ、お兄ちゃん……?」

 

 またしても咲良の寝言攻撃!?

 

「ぐはっ、夢の中でも俺を求められているのか!?」

 

 またしても、ワンターンで兄の“意地”はあっさりと倒された。

 ていうか、俺を連呼するってどんな夢を見ているのか気になります。

 もうダメだ、防衛手段を失い、妹が可愛すぎて俺はもうっ……。

 妹に襲いかかりそうになりかけていた、その時――。

 

「――ていうか、何をしてるの?」

 

 そんな俺はたった一言で冷静さを取り戻し、凍りつく。

 それまでの場の雰囲気が気まずい雰囲気に変わる。

 

「な、那奈姉?」

 

 いつのまにか那奈姉がリビングを覗き込むようにして、冷たい視線を向けている。

 なぜ、そこに……!?

 

「そろそろ、映画も終わったかなって見に来たの。そうしたら、さっきから見てれば、咲良ちゃんに悪戯してるじゃない」

 

「い、悪戯はしてませんよ」

 

 まだ手は何も出していないよ、頬をつついたくらいだ。

 

「……だったら、何をしていたのか教えなさい」

 

 俺に迫る危機、この回避方法は……ない?

 

「違うんだよ、那奈姉。これは咲良を起こそうとしていたんだ」

 

「襲おうとしていたの間違いじゃないの?咲良ちゃん、可愛いものね?」

 

「可愛いけど、襲うなんて事はありません」

 

 襲いかけたのは事実だが、未遂だ。

 つまり、未遂と言う事は決定打ではない。

 これでキスのひとつでもしていれば、俺も黙って那奈姉にこの命を差し出そう。

 だが、しかし、未遂であるがゆえに罪ではない、はず?

 

「……んみゅぅ。お兄ちゃん?」

 

 俺たちの騒ぎで咲良が目を覚ましてしまった。

 だが、これはチャンス、俺の無実を彼女に証明してもらうのだ。

 そんな俺の心の声が聞こえたのか、眠そうな目をこすりながら、彼女は言った。

 

「――おにーちゃん。いもーとに、ちゅーはダメだよ……ぐぅ」

 

 まさに爆弾発言!?

 俺に白い目を向ける那奈姉の怒りのボルテージ、限界ギリギリまで急上昇中。

 そのまま再び、眠りにつく咲良。

 今はその寝顔が……ちょっぴり憎い。

 なんてことをしてくれたんだ。

 このままじゃ、俺に逃げ場もなく、弁解の機会も与えてもらえそうにない。

 

「チュー、つまりはキス。ふーん。兄妹同士で、キス?……そうなんだ?」

 

「こ、これは咲良が寝ぼけていただけで、決してそんなことはしてません!?那奈姉以外とキスなんて、したことないですっ」

 

「何を怯えているの、道明?私は優しいわ。前にも言ったでしょう?どんな罪も一度は許すと決めているの。弁解の機会を与えてあげましょう。お姉さんを納得させられる言い訳、あるのかな?」

 

「え、えっとですね。これは、その、あのですね」

 

 俺の隣で熟睡する咲良、俺を睨みつける那奈姉。

 この挟み撃ち、どう乗り切ればいい。

 考えろ、思考するんだ。

 何か、何か言い訳を思いつければ起死回生の逆転が……。

 

「……んぅ」

 

 だが、咲良は俺にとどめとばかりに抱きついてくる。

 寝ぼけている時の咲良の甘えっぷりはできればこんな所で発揮してほしくなかった。

 ちなみに、咲良に抱きつかれる感触は気持ちいいです、ずいぶんと発育してるね。

 その発育具合を確認できるシチュではなかったのが本当に残念だ。

 

「――さぁ、何か言い訳でもあれば教えてくれるかしら?」

 

 死刑宣告、絶対零度の那奈姉の怒り。

 俺は身体を震わせながら、ホラー映画よりも怖い那奈姉のプレッシャーと戦うはめに。

 またもや窮地に追い込まれた、どうすればいいんだぁ――!?

 

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