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8月だけの、片思い ⑥

ご覧いただきありがとうございます。

本作は、実話をもとに再構成した「叩き上げ公務員」の半生を描くサクセスストーリーです。

学歴もコネもなく、定時制高校からスタートした主人公。

決して順風満帆ではなかった彼が、どのような葛藤や壁を乗り越え、霞ヶ関の本省、そして幹部へと駆け上がっていったのか。

実際の官僚機構や他省庁でのリアルな泥臭さ、そして人生後半での新たな挑戦までを丁寧に描いていきます。

働くすべての人、そして逆境から這い上がりたい人に届く作品になれば幸いです。

ぜひ最後までお付き合いください!

8月いっぱいのバイト契約が終わったら、下宿を退去する——。

急転直下の現実により、浩一の退去期限はわずか2週間後へと迫っていた。

バイトの休憩中、浩一は思い切って吉田に打ち明けた。


「吉田さん、夏休みが終わったら九州に戻るんですよね?」

「そうだよ。ゼミの準備もあるからね。川野くんも、夏休みが終わったらあの『セーラー服の彼女』と再会やな」

「……」

「どうしたん? 冴えへん顔して」

「僕、夏休みが終わったら……自宅の神戸に戻ることになりました」

「えっ? 何かあったんか?」

「家庭の事情というか……叔母から、お袋を助けてやってくれと言われまして」

浩一がぽつりぽつりと事情を話すと、吉田は少し間を置いて、静かに息を吐いた。

「そっか……。こういう時、高校生ってまだ無力なんよなぁ」

「……」

「でも、自宅から通えんことはないやろ?」

「片道2時間くらいかかります」

「んー、2時間か……厳しいですけど、まぁ……もし本当に行き詰まったら定時制高校っていう選択肢もありし、昼間働いて、夜に通うような」

「定時制……それ、大学はいけるんですか?」

「大学だけがすべてやないよ。選択肢の『ひとつ』に過ぎんでぇ」

「はい……」

「……でも、あれやな。例の彼女と再会するのは難しくなったな。敦ちゃんにはもう言ったん?」

「まだです。もう、敦っちゃんだけですよ」

「それなら、早く言ってやりなよ」


最近はバイトが終わった後、店の裏口で敦っちゃんと少しおしゃべりするのが日課になっていた。


「浩ちゃん、今日もお疲れ〜! ……あれ? どうしたの、暗い顔して」

「……敦っちゃん」

吉田に話したことと同じ事情を打ち明けると、敦っちゃんは寂しそうに目を伏せた。

「そっかぁ……神戸に戻っちゃうのかぁ」

「うん」

「本当は、こっちにいたかったんだ?」

「……うん」

「……ねぇ、この前ドライブしたじゃない? 神戸と姫路なんて、そんなに遠くないよ。電話でも話せるんだから、ほら、元気出して!」

敦子は、浩一の顔を覗き込むと、ぱっと表情を明るくした。

「そうだ! 今度、4人でご飯食べに行こうよ! 夏休みが終わったら、みんなそれぞれの生活に戻っちゃうんだし。望っちぃにも声かけて、吉田さんと相談するように言っておくね」

「えっ……二人って、付き合ってるんですか?」

驚いて尋ねた浩一に、思わず吹き出した。

「あはは! 今さら何言ってるのー?」

大人たちに囲まれた15歳の夏。切ないお別れが、刻一刻と近づいていた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

わずか2週間後の退去。吉野先輩の「高校生は無力」という言葉が胸に刺さります……。

落ち込む浩一を明るく励ます敦っちゃんと、まさかの「吉田先輩&望っちぃ」のカップル発覚(笑)!

夏休みの終わりとともに、それぞれ別の場所へ戻っていく4人。

果たして、思い出の「4人での食事会」と、浩一の15歳の夏はどんな結末を迎えるのでしょうか——?

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