第4話 アナグマさん
二匹は、雪の中で足を踏み鳴らしながら、ずいぶん長いこと待っていた。やがてようやく、家の内側から、ゆっくりとすり足で近づいてくる足音が聞こえてきた。
モグラがネズミに言ったとおり、それは、ぶかぶかで、かかとのすり減った室内履きを引きずって歩いているような音だった。モグラの観察は正しかった。まさに、そのとおりだったのである。
かんぬきを外す音がして、扉がほんの少し開いた。その隙間から、長い鼻先と、眠たげにまばたきをする一対の目がのぞいた。
「今度またこんなことがあったら、本気で怒るぞ。こんな夜に人を起こすとは、いったい誰だ? はっきり言え!」
低く、疑り深い声だった。
「アナグマさん!」ネズミが叫んだ。「どうか入れてください。僕です、ネズミです。友だちのモグラと一緒に、雪の中で道に迷ってしまったんです」
「なんだ、ネズミくんか! かわいい奴め!」
アナグマの声は、たちまち別人のように変わった。
「さあ、二人とも、すぐに入れ。凍え死にそうじゃないか。まったく、とんでもない! 雪の中で道に迷ったのか。それも、こんな夜更けに、ワイルドウッドの中で! さあ、とにかく入れ」
二匹は、我先にと転がり込むように家の中へ入った。背後で扉が閉まる音を聞いたとき、二匹は心の底からほっとした。
アナグマは長いガウンを身につけ、かかとのすっかり潰れたスリッパを履いていた。前足には平たい燭台を持っている。二匹の呼びかけを聞いたとき、ちょうど寝床へ向かおうとしていたらしい。
アナグマは二匹をやさしく見下ろし、それぞれの頭をぽんぽんとなでた。
「小さな動物が外を出歩くような夜じゃないぞ」と、父親のような口調で言った。「また何か悪ふざけでもしていたんだろう、ネズミくん。まあ、いい。さあ、台所へ来い。あそこには立派な火が燃えているし、夕食も何もかも用意してある」
アナグマが燭台を手に先へ進み、二匹はそのあとについていった。互いに肘でつつき合いながら、これから何が待っているのかと期待に胸をふくらませている。
一行は、長く薄暗い、正直なところかなりみすぼらしい通路を進んだ。やがて、中央の広間のような場所へ出た。そこからは、さらに何本もの長いトンネルが枝分かれしているのが、ぼんやりと見えた。どの通路も神秘的で、どこまでも続いているようだった。
しかし広間には、頑丈なオーク材の扉もいくつかあった。どれも見るからに居心地がよさそうである。
アナグマが、そのうちの一つを勢いよく開けた。
すると二匹はたちまち、大きな火に照らされた台所の光と温かさに包まれた。
床は、長年使い込まれた赤い煉瓦でできていた。広い炉床では薪が燃え、その両側には、壁の奥へ引っ込むようにつくられた居心地のよい暖炉の隅があった。すきま風など、入り込む余地もない。
火の両側には、背もたれの高い長椅子が一つずつ置かれ、暖炉を挟んで向かい合っていた。人と話をするのが好きな者なら、いくらでも腰を落ち着けていられる席だった。
部屋の中央には、粗末な板を組んだ長いテーブルが、架台の上に置かれていた。両側にはベンチが並んでいる。テーブルの片端には肘掛け椅子が一脚、後ろへ押しやられており、その前には、アナグマが食べていた質素だがたっぷりした夕食の名残が広がっていた。
部屋の奥にある食器棚には、磨き上げられた皿がずらりと並び、火の光を受けてきらきらと輝いている。頭上の梁からは、ハムや乾燥させたハーブの束、網に入った玉ねぎ、卵の籠が吊り下げられていた。
そこは、勝利を収めた英雄たちが、戦いのあとに盛大な宴を開くのにふさわしい場所だった。あるいは、疲れた収穫人たちが長いテーブルに何人も並び、歌と笑い声に包まれて収穫祭を祝う場所でもあった。
また、質素な暮らしを好む二、三人の友人が、好きなところに腰を下ろし、食べたり、煙草を吸ったり、話をしたりしながら、心ゆくまでくつろぐ場所でもあった。
赤い煉瓦の床は、煙でくすんだ天井に向かって微笑みかけているようだった。長年の使用でつやを帯びたオークの長椅子は、互いに陽気な視線を交わしているように見えた。食器棚の皿は棚の鍋に向かってにやりと笑いかけ、楽しげな火の光は、分け隔てなく部屋じゅうのものにちらちらと戯れていた。
「さあ、ここで体を温めろ」
親切なアナグマは、二匹を長椅子に押し込むように座らせ、火に当たるよう言った。それから濡れた外套と靴を脱がせ、二匹のためにガウンとスリッパを持ってきた。
さらにアナグマは、モグラのすねを自分で温かい水で洗い、傷口に絆創膏を貼ってやった。おかげで傷は、まるで新品同様――いや、それ以上によくなった。
二匹は、やさしく包み込むような火の光と温かさの中で、ようやく体を温め、乾かすことができた。疲れた脚を前へ投げ出し、背後から聞こえてくる、食器を並べる音に耳を澄ませている。
嵐に追い立てられてきた二匹の動物には、今や安全な港にたどり着いた自分たちが、先ほどまでいた冷たく、足跡さえ見えないワイルドウッドから、何マイルも遠く離れてしまったように感じられた。
森の中で味わった苦しみも、もう半ば忘れかけた夢のようだった。
二匹の体がすっかり温まると、アナグマは二匹をテーブルへ呼んだ。彼はその間、食事の支度に忙しく立ち働いていたのである。
二匹は、食卓につく前からかなり腹を空かせていた。だが、実際に目の前へ並べられた夕食を見たときには、どれから手をつけるべきか、ほかの料理が自分たちの食べ終わるまで待っていてくれるものかどうか、そればかりを考えなければならないほどだった。
しばらくのあいだ、二匹はまったく話をしなかった。ようやく会話が始まっても、それは口いっぱいに食べ物を詰め込んだまま話すという、あまり感心できない種類のものだった。
しかしアナグマは、そんなことを少しも気にしなかった。テーブルに肘をつくことも、みんながいっせいに話し出すことも、まったく問題にしない。
アナグマは自分から社交界へ出ていくような動物ではなかった。そのため、そういう作法は、世の中で本当に大切なことには含まれないのだと思い込んでいたのである。
もちろん、これは彼の思い違いだった。彼は少しばかり視野が狭かった。テーブルの上で肘をつくことや、みんなが同時に話すことは、実際にはとても大切なことなのだ。ただ、なぜ大切なのかを説明しようとすると、話が長くなりすぎるので、ここではやめておこう。
アナグマはテーブルの上座にある肘掛け椅子に座り、動物たちがこれまでの出来事を話すのを、時折、重々しくうなずきながら聞いていた。
彼は何を聞いても驚かなかった。ショックを受けた様子もなかった。それに、「だから言っただろう」とか、「いつもそう言っていたじゃないか」とか、「君たちはこうすべきだった」とか、「そんなことをしてはいけなかった」などと、余計なことを言うこともなかった。
モグラは、そんなアナグマに、少しずつ親しみを感じ始めていた。
ようやく夕食が本当に終わったころには、どの動物も、皮膚が行儀よく許される限界まで張りつめるほど食べていた。そして、もう誰のことも、何のことも、少しも気にする気になれなかった。
一同は大きな薪の火の残り火のまわりに集まった。こんなに遅くまで起きていることも、誰にも急かされず自由でいることも、そしてこんなに満腹でいることも、なんて愉快なのだろうと思った。
しばらく世間話をしてから、アナグマが陽気に言った。
「さて! 君たちのところのニュースを聞かせてくれ。ヒキガエルはどうしている?」
「ああ、悪くなる一方だよ」
ネズミは深刻な顔で答えた。モグラは長椅子の上で、脚を頭より高く上げ、火の光を浴びながら、なんとか悲しそうな顔をつくろうとしていた。
「先週もまた大事故を起こした。しかも、ひどい事故だった。あいつはどうしても自分で運転したがるんだが、運転の腕はまったくお粗末だ。もし、まっとうで落ち着いた、よく訓練された動物を雇い、きちんと給料を払い、すべてを任せておけば、うまくいくはずなんだ。ところが、あいつは自分が生まれつきの天才運転手だと思い込んでいて、誰からも教わる必要などないと信じている。あとは、すべて今のとおりさ」
「何台目だ?」アナグマが陰鬱な声で尋ねた。
「事故の数か、それとも車の数か?」ネズミが聞き返した。「まあ、ヒキガエルの場合、結局は同じことだけどね。これが七台目だ。ほかの車については――あの車庫を知っているだろう? 屋根まで、文字どおり積み上がっているんだ。どれも帽子より大きくない自動車の破片ばかりさ。それが、これまでの六台分というわけだ。分かる範囲ではね」
「病院にも三度入っている」とモグラが口をはさんだ。「罰金にいたっては、考えるだけでも恐ろしいよ」
「そう、それも問題の一つなんだ」
ネズミは話を続けた。
「ヒキガエルが金持ちなのは、みんな知っている。でも、億万長者というわけじゃない。それに、運転はどうしようもなく下手で、法律も秩序もまったく気にしていない。死ぬか、破産するか――遅かれ早かれ、どちらかになるに決まっている。アナグマさん、僕たちはあいつの友だちだ。何かしなくちゃいけないんじゃないか?」
アナグマは、しばらく難しい顔をして考え込んだ。
「さて、聞いてくれ」と、やがて少し厳しい声で言った。「もちろん、今すぐ何かすることはできない。そういう意味だと分かっているな?」
二匹の友だちはうなずいた。アナグマの言いたいことは、よく分かっていた。
動物たちの礼儀作法によれば、冬の休眠期に、無理をしたり、英雄的な行動をとったり、ましてや少しばかり活動的に動き回ったりすることなど、誰にも期待されてはいない。
みんな眠っている。中には、本当に眠り込んでいる者もいる。多かれ少なかれ、外の天候に閉じ込められている。そして一年のうち半年にわたって、昼も夜も精いっぱい働き、体じゅうの筋肉を使い果たし、あらゆる力を限界まで働かせたあとで、今は休んでいるのだ。
「そういうことだ」とアナグマは続けた。「だが、一年が本当に折り返し、夜が短くなってきたころには話が違う。夜中にふと目が覚めて、なんだか落ち着かず、日の出までには、いや、できれば日の出前には起き出して、何かを始めたくなる――そういう時期が来たら、分かるだろう?」
二匹は厳粛にうなずいた。
分かっていた。
「そのときになったら、僕たち――君と僕と、ここにいるモグラくんとで、ヒキガエルを本気で引き受けよう。どんなふざけた真似も許さない。必要なら力ずくで、あいつを正気に戻す。まともなヒキガエルにしてやる。僕たちは――おい、寝ているな、ネズミくん!」
「寝てなんかいない!」
ネズミは、びくりと体を震わせて目を覚ました。
「夕食のあと、もう二、三回は寝ていたよ」
モグラが笑いながら言った。
モグラ自身は、なぜだかすっかり目が冴えていた。それどころか、元気いっぱいだった。
理由はもちろん、彼が生まれつき地下で暮らす動物だったからである。地下にあるアナグマの家は、モグラにとってまさに住み慣れた場所のように感じられた。
一方、ネズミは毎晩、窓を開ければそよ風の吹き込む川辺の寝室で眠っている。そのため、アナグマの家の静かで動かない空気は、彼にとって少し重く、息苦しく感じられたのだった。
「さて、そろそろみんな寝る時間だ」
アナグマは立ち上がり、平たい燭台を取りに行った。
「さあ、二人とも来い。寝る部屋を見せてやろう。明日の朝は、ゆっくり起きればいい。朝食は、好きな時間に食べてかまわないぞ」
アナグマは二匹を、寝室と屋根裏部屋を半分ずつ合わせたような、長い部屋へ案内した。
アナグマが冬のために蓄えている食料は、そこらじゅうに見えていた。部屋の半分は、リンゴ、カブ、ジャガイモの山や、木の実をいっぱい詰めた籠、蜂蜜の壺に占領されていた。
しかし、残りの床に置かれた二つの小さな白いベッドは、やわらかく、二匹を誘っているように見えた。シーツは粗い布でできていたが、清潔で、ラベンダーのよい香りがした。
モグラと水ネズミは、三十秒もかからずに服を脱ぎ捨てた。そして大喜びで、シーツの間へ転がり込んだ。
親切なアナグマに言われたとおり、疲れきった二匹は、翌朝かなり遅くなってから朝食のために台所へ降りてきた。
台所では、明るい火が燃えていた。テーブルのベンチには、二匹の若いハリネズミが腰を下ろし、木の器からオートミールのお粥を食べていた。
二匹のハリネズミは、モグラとネズミが入ってくると、スプーンを落とし、あわてて立ち上がった。そして、恭しく頭を下げた。
「ほら、座ったままでいいよ、座ったままで」
ネズミは愛想よく言った。
「そのままお粥を食べていなさい。君たちは、どこから来たんだ? 雪の中で道に迷ったのかい?」
「はい、そうです」
年上のハリネズミが、ていねいに答えた。
「僕と、ここにいる小さいビリーは、学校へ行く道を探していたんです。母さんが、どんなに天気が悪くても学校へ行きなさいと言うものですから。それで、もちろん道に迷ってしまいました。ビリーはまだ小さくて臆病なので、怖くなって泣き出してしまって……。とうとう僕たちは、アナグマさんの裏口に行き当たりました。それで、思い切ってノックしたんです。アナグマさんは、誰もが知っているとおり、心のやさしい紳士ですから――」
「なるほどね」
ネズミは、ベーコンの塊から何枚か切り取りながら言った。その隣では、モグラが卵を鍋へ落としていた。
「それで、外の天気はどうなんだ? それから、僕にまでそんなに丁寧に『さん』をつけなくてもいいよ」
「それが、ひどい天気なんです。本当にひどいんです。雪がとても深くて、今日のような日に、あなた方のような紳士が外へ出るのは無理ですよ」
「アナグマさんはどこにいるの?」
モグラは、火の前でコーヒーポットを温めながら尋ねた。
「ご主人さまは書斎にいらっしゃいます」
ハリネズミが答えた。
「今朝は特にお忙しいので、決して邪魔をしてはいけない、とおっしゃっていました」
この説明が意味するところは、そこにいた者たち全員によく分かっていた。
すでに述べたように、一年のうち六か月を激しい活動の中で過ごし、残りの六か月を、ほとんど眠っているか、実際に眠り込んでいるような状態で過ごす生活をしていると、後半の半年間、来客があったり何か用事があったりするたびに、眠いからという言い訳をするわけにはいかない。
同じ言い訳を繰り返していては、さすがに聞くほうも飽きてしまうからである。
そこで動物たちは、よく知っていた。アナグマは、たっぷり朝食を食べたあと、書斎へ引っ込んでいる。肘掛け椅子に深々と腰を下ろし、もう一脚の椅子に脚をのせ、顔には赤い木綿のハンカチをかぶせて、この時期のいつものやり方で「忙しくしている」のだ。
そのとき、玄関のベルが大きな音を立てて鳴った。
バタートーストを食べて、前足も口のまわりもすっかり油っぽくなっていたネズミは、小さいほうのハリネズミ、ビリーを見に行かせた。
広間では、誰かが何度も足を踏み鳴らしている音がした。やがてビリーが、カワウソを連れて戻ってきた。
カワウソはネズミを見るなり、抱きついて、親しげな声を上げた。
「会えてうれしいよ、ネズミ!」
「離れろ!」
ネズミは、口いっぱいに食べ物を詰め込んだまま、もごもごと言った。
「ここにいると思ったんだ」
カワウソは、いかにも楽しそうに言った。
「今朝、川辺に着いたら、みんな大騒ぎしていたよ。ネズミが一晩中帰ってこない。モグラも帰ってこない。きっと何か恐ろしいことが起こったに違いない、ってね。それに、雪が君たちの足跡をすっかり隠してしまっていたから、どこへ行ったのか誰にも分からなかった」
カワウソは、そこで一度息をついた。
「でも、誰かが困っているときは、たいていアナグマのところへ行くものだし、そうでなければ、アナグマのほうが何かの方法で事情を知るものだと、僕は分かっていた。だから、ワイルド・ウッドと雪をまっすぐ突っ切って、ここまで来たんだ」
カワウソの目が、楽しそうに輝いた。
「いやあ、すばらしい道のりだったよ。赤い太陽が昇り、黒い木々の幹を照らす中を、雪の中を進んでいくんだ。あたりは静まり返っている。すると、ときどき木の枝から雪の塊が突然ずり落ちて、どさりと地面に落ちる。こっちはびっくりして、あわてて隠れ場所へ走り込むんだ」
カワウソは、身ぶりを交えながら話を続けた。
「夜のあいだに、雪の城や雪の洞窟が、どこからともなく現れていた。雪の橋やテラス、城壁までできていたよ。あんなものを見たら、何時間でも遊んでいられる。ところどころでは、雪の重みだけで大きな枝が引きちぎられていた。その上ではコマドリたちが、得意そうにとまったり、ぴょんぴょん跳ねたりしていた。まるで、自分たちが枝を折ったとでも思っているみたいにね」
「ぼろぼろの列をつくった野生のガンが、灰色の空を高く飛んでいった。カラスも何羽か、木々の上をぐるぐる旋回しながら、あたりを調べていた。それから、すっかりうんざりしたような顔をして、家へ向かって飛び去っていったよ」
カワウソは、テーブルからベーコンを一切れつまんだ。
「でも、事情を聞けそうな、まともな動物には誰一匹会わなかった。道の半ばまで来たところで、切り株に腰を下ろし、前足で間抜けな顔を洗っているウサギに出会ったけどね」
「そいつの背後から忍び寄って、重い前足を肩に置いてやった。ウサギは、ずいぶん肝をつぶしたようだったよ。まともな話を聞き出すには、頭を一、二度はたいてやらなければならなかった」
「それで、ようやく分かったんだ。昨夜、ワイルド・ウッドでモグラが目撃されていた。ウサギたちの巣穴では、その話でもちきりだった。ネズミくんの特別な友だちであるモグラが、ひどい目に遭っている。道に迷い、『あいつら』が狩りに出て、モグラをあちこち追い回している、とね」
「僕はウサギに聞いた。『それなら、どうして君たちは何もしなかったんだ? 頭に恵まれていないとしても、君たちは何百匹もいるじゃないか。みんな大きくて丈夫で、バターみたいに太っている。巣穴は四方八方に伸びている。モグラを中へ入れて、安全で暖かくしてやることくらいできただろう。少なくとも、そうしてみることはできたはずだ』ってね」
「するとウサギは、ただこう言ったんだ。『僕たちが? 何かするって? 僕たちウサギが?』」
カワウソは肩をすくめた。
「だから、もう一度そいつの頭をはたいて、その場を離れた。他にできることもなかったからね。とにかく、事情は分かった。それに、もし運よく『あいつら』の誰かに出会っていたら、もっと詳しいことを聞き出せたはずだ。あるいは――向こうのほうが、もっといろいろ思い知ることになったかもしれないけどね」
「ワイルド・ウッドと雪の中を……」
モグラは、ぽつりとつぶやいた。
ワイルド・ウッドの話を聞いていると、昨日の恐怖が少しずつよみがえってきた。
「君は、その……少しも怖くなかったのかい?」
モグラが尋ねると、カワウソは強く白い歯をきらりとのぞかせて笑った。
「怖いだって? もしあいつらが僕に何かしてこようものなら、こっちが怖がらせてやるさ」
カワウソは、モグラの肩をぽんとたたいた。
「さあ、モグラくん。僕にハムを何枚か焼いてくれないか。君は本当に気の利く、いい奴だからね。僕は腹ぺこなんだ。それに、ネズミくんには話したいことが山ほどある。ずいぶん長いこと会っていなかったからね」
気のよいモグラは、ハムを何枚か切り分けた。それをハリネズミたちに焼かせてから、自分の朝食へ戻った。
そのあいだ、カワウソとネズミは頭を寄せ合い、川辺の仲間たちの話を熱心に続けていた。
それは、川のせせらぎのように長く、尽きることなく続く話だった。
揚げたハムの皿が一枚きれいになり、もう一枚を焼くために下げられたころ、アナグマが入ってきた。
アナグマはあくびをしながら目をこすり、いつもの静かで気取らない様子で、そこにいる者たち一人ひとりに声をかけた。
「もう昼食の時間になりそうだな」
彼はカワウソに言った。
「一緒に食べていくといい。こんなに寒い朝だ。腹も減っているだろう」
「もちろん!」
カワウソはモグラに片目をつぶってみせた。
「この食欲旺盛な若いハリネズミたちが、揚げハムを夢中で詰め込んでいるのを見ていたら、僕までますます腹が減ってきたよ」
ハリネズミたちは、さっき食べたお粥が消化され始めたところだった。それに、ハムを焼くために一生懸命働いたので、ちょうどまた腹が減ってきていた。
しかし、二匹はおずおずとアナグマを見上げるだけで、何も言えなかった。
「さあ、お前たち二人は、お母さんのところへ帰りなさい」
アナグマはやさしく言った。
「道を教えてくれる者を一緒につけてやろう。今日はもう、昼食はいらないだろうからな」
アナグマは二匹に、それぞれ六ペンスずつ渡し、頭をなでてやった。ハリネズミたちは帽子を振り、額に手を当てて、何度もていねいに礼をしながら出ていった。
やがて、みんなで昼食のテーブルを囲んだ。
モグラはアナグマの隣の席に座った。ネズミとカワウソは、相変わらず川辺の話に夢中になっていて、何を言っても耳に入らない様子だったので、モグラはこれをよい機会だと思った。
「ここにいると、とても居心地がよくて、まるで自分の家にいるような気持ちになります」
モグラはアナグマに言った。
「ちゃんと地下に入ってしまえば、自分がどこにいるのか、いつでもはっきり分かります。何も起こりませんし、何も自分に近づいてはきません。完全に自分自身の主人でいられるんです。誰かに相談する必要もないし、誰かの言うことを気にする必要もない。地上では、物事が勝手に進んでいきます。でも、それはそのまま放っておけばいい。自分が出たいと思ったときに上へ出れば、そこには物事がちゃんと待っているんです」
アナグマは、ただにこにことモグラを見つめた。
「まったく、そのとおりだよ」
彼は答えた。
「安全も、平和も、静けさも、地下にいるときにしか得られない。それに、もし考えが大きくなって、もっと広いところへ行きたくなったとしても――少し掘って、少し削れば、そこに新しい場所ができる」
アナグマは、満足そうに続けた。
「家が少し広すぎると思ったら、穴を一つか二つふさいでしまえばいい。それでまた、ちょうどよくなる。建築業者もいらない。職人もいらない。塀の向こうから家をのぞき込んで、あれこれ言う連中もいない。そして何より、天気というものがない」
「ネズミを見てごらん。川が数フィートも増水すれば、借りた宿へ引っ越さなければならない。居心地が悪く、場所も不便で、それにひどく金がかかる」
「ヒキガエルを見てごらん。ヒキガエル屋敷について、悪く言うつもりはない。家としては、このあたりでいちばん立派な家だ。だが、もし火事が起きたら、ヒキガエルはどこにいる?」
「瓦が風に吹き飛ばされたら? 壁が沈んだり、ひびが入ったりしたら? 窓が割れたら? そのとき、ヒキガエルはどこにいる?」
「部屋にすきま風が入ってきたら? 僕は、すきま風が大嫌いなんだ。そんなとき、ヒキガエルはどこにいる?」
「いや、外へ出て歩き回り、外で食べ物を見つけて暮らすのは、それはそれでいい。だが、最後に戻ってくる場所は地下でなければならない。地下こそが、僕の考える家なんだ!」
モグラは、心から同意した。
そのため、アナグマはますますモグラに親しみを感じるようになった。
「昼食が終わったら」と、アナグマは言った。「この小さな家を、すみからすみまで案内してあげよう。君なら、きっと気に入るはずだ。君は、家というものがどうあるべきかをよく分かっているからね」
昼食が終わると、ネズミとカワウソは暖炉の隅に落ち着き、ウナギについて熱のこもった議論を始めた。
そのあいだにアナグマはランタンに火をともした。
「さあ、モグラくん。ついておいで」
そう言って、モグラを連れて広間を横切り、主要なトンネルの一つへ入っていった。
ランタンの揺れる光が、通路の左右にある大小さまざまな部屋を、時おり照らし出した。小さな物置ほどの部屋もあれば、ヒキガエルの食堂と同じくらい広く、堂々とした部屋もあった。
やがて、直角に曲がる細い通路へ入った。そこから別の廊下へ出ると、また同じように、いくつもの部屋と通路が現れた。
モグラは、全体の大きさと広がり、そして複雑に枝分かれした構造に圧倒された。
薄暗い通路はどこまでも長く続いていた。貯蔵室には、食料がぎっしり詰め込まれている。あちこちには頑丈な石積みがあり、柱が立ち、アーチが架かり、床には石の舗道が敷かれていた。
「いったい、どうやってこんなものをつくったんですか、アナグマさん?」
モグラは、とうとう尋ねた。
「これほどのものをつくる時間と力が、どこにあったんです? 本当に驚きました!」
「もし私がこれをつくったのなら、確かに驚くべきことだろうね」
アナグマは、いつもの飾り気のない口調で答えた。
「だが、実を言えば、僕は何もつくっていない。必要なところの通路と部屋を、掃除して使えるようにしただけだ。ここら一帯には、まだまだ同じような場所がたくさん残っている」
モグラがよく分かっていない様子なのを見て、アナグマは説明を続けた。
「ずっと昔のことだ。今、ワイルド・ウッドが風に揺れているこの場所に、かつては都市があった。人間たちの都市だ。まだワイルド・ウッドがここに根を下ろし、今のような森へ育つよりも前のことだよ」
「僕たちが今立っている場所で、人間たちは暮らし、歩き、話し、眠り、仕事をしていた。ここで馬を飼い、宴を開き、ここから戦いへ出かけたり、商売のために出かけたりした」
「彼らは力のある人々で、豊かで、建築にもすぐれていた。自分たちの都市は永遠に続くと思っていたから、永く残るように建てたんだ」
「でも、その人たちは、みんなどうなったんですか?」
モグラが尋ねた。
「誰が知っているだろうね」
アナグマは言った。
「人間はやって来る。しばらくそこにとどまり、栄え、建物をつくる。そして、やがて去っていく。それが人間というものだ」
「だが、僕たちは残る。あの都市ができるより、はるか昔から、ここにはアナグマがいたそうだ。そして今、またアナグマがここにいる」
「僕たちは、なかなか辛抱強い種族なんだ。しばらくのあいだ、どこかへ移ることはある。だが、じっと待ち、辛抱し、そしてまた戻ってくる。これからも、ずっとそうだろう」
「それで、人間たちがとうとう去っていったあと、どうなったんですか?」
モグラが尋ねた。
「人間たちが去ると、強い風と、しつこく降り続く雨が、あとの始末を引き受けた。年々、根気よく、休むことなくね」
「もしかすると、僕たちアナグマも、ささやかな力で、少しばかり手を貸したのかもしれない。誰にも分からないことだがね」
「すべては、少しずつ下へ、下へ、下へと沈んでいった。崩れ、平らになり、やがて消えていった」
「それから今度は、すべてが少しずつ上へ、上へ、上へと伸びていった。種が若木になり、若木が森の木になった。イバラやシダも這い込んできて、仕事を手伝った」
「腐葉土が積もって、あとに残ったものを覆い隠した。冬の洪水が砂や土を運び、通路を埋め、都市を覆っていった。そして長い年月が過ぎたころ、僕たちの家が、もう一度、暮らせる場所になった。そこで僕たちは、またここへ戻ってきたんだ」
アナグマは、ランタンを高く掲げた。
「地上でも、同じようなことが起きた。動物たちがやって来て、この場所を気に入り、住みつき、落ち着き、数を増やし、栄えていった」
「動物たちは、過去のことなど気にしなかった。動物というものは、過去を気にしない。忙しすぎるからね」
「この土地は、当然ながら少し起伏があり、あちこちに穴が開いていた。だが、それはむしろ都合がよかった」
「未来のことも、彼らは気にしない。いつか人間たちが、またしばらくのあいだ、この場所へ戻ってくるかもしれない――そんな未来のこともね。まあ、それは十分にあり得る話だ」
「今ではワイルド・ウッドにも、ずいぶんたくさんの動物が住んでいる。どこにでもいるような連中だ。善い者もいれば、悪い者もいる。その中間の者もいる。誰のことか、名前を挙げるつもりはないがね」
「世の中をつくるには、いろいろな種類の者が必要なんだ。だが君も、もう彼らについて少しは分かってきただろう」
「ええ、本当によく分かりました」
モグラは、少し身震いしながら答えた。
「まあ、まあ」
アナグマは、モグラの肩をやさしくたたいた。
「君にとっては、初めての経験だったからね。彼らは、実際にはそれほど悪い者たちではないよ。みんな、お互いに生きていかなくてはならないし、お互いに生きる場所を認めなくてはならない」
「だが、明日になったら、僕からひと言、話を通しておこう。そうすれば、君はもう困らされることもないだろう」
アナグマは、静かに、しかし断固とした声で言った。
「僕の友だちは、この国のどこを歩いてもいい。もしそれを邪魔する者がいるなら、なぜそんなことをしたのか、僕がきちんと聞かせてもらうよ。
二人が台所へ戻ると、ネズミが落ち着かなげに、行ったり来たりしていた。
地下の空気が、彼には重く感じられていた。神経にもさわるらしく、まるで、自分がそばにいなければ川がどこかへ逃げてしまうとでも思っているようだった。
ネズミは、すでに外套を着込み、ピストルをまた腰の帯に差し込んでいた。
「さあ、モグラくん」
二匹の姿を見つけると、ネズミは心配そうに言った。
「明るいうちに出発しなければならない。もう一晩、ワイルド・ウッドで過ごすのはごめんだよ」
「大丈夫だって、僕の立派な友だち」
カワウソが言った。
「僕も一緒に行く。道なら、目隠しをされても分かる。それに、もし殴られる必要のある頭があったら、僕が責任を持って殴ってやるよ」
「本当にそんなに心配しなくてもいいよ、ネズミくん」
アナグマも穏やかに言った。
「僕の通路は、君が思っているよりずっと遠くまで通じている。森の端へ出られる抜け道も、いくつもの方向に用意してある。ただ、誰にでも教えているわけではないがね」
「本当に出発しなければならなくなったら、僕の近道を使えばいい。それまでは気を楽にして、もう一度座りなさい」
それでもネズミは、川の様子を見に行くために、できるだけ早く出発したいと思っていた。
そこでアナグマは、もう一度ランタンを手に取った。そして一行を、湿って空気のよどんだトンネルへ案内した。
通路は曲がりくねり、ところどころ下へ沈んでいた。ある部分は石で組まれたアーチに覆われ、別の部分は硬い岩盤をくり抜いてつくられていた。
一行は、何マイルも歩いたように感じられるほど、長い距離を進んだ。
やがて、通路の出口を覆っている絡み合った草木の向こうから、ぼんやりとした昼の光が見え始めた。
「では、元気でな」
アナグマは、急いだ様子で別れを告げた。
一行を開口部から外へ押し出すと、つる草や低木、枯れ葉を動かして、入口ができるだけ自然に見えるように整えた。それから、アナグマは地下へ戻っていった。
三匹が立っていたのは、ワイルド・ウッドのまさに端だった。
背後には、岩やイバラや木の根が、乱雑に積み重なり、絡まり合っている。前方には、静まり返った広い野原があった。野原は雪に覆われ、黒い生け垣の線によって区切られている。
はるか遠くには、見慣れた古い川が、かすかにきらめいていた。冬の太陽は、低く赤く、地平線の上にかかっていた。
道をよく知っているカワウソが、一行の先頭に立った。三匹は、遠くに見える踏み越し段へ向かい、一直線に歩いていった。
そこで一度立ち止まり、振り返った。
ワイルド・ウッドの全体が、巨大な塊のように広がっていた。森は密集し、威圧的で、ひとまとまりになっている。広大な白い雪景色の中で、森だけが厳しい表情を浮かべていた。
三匹は、ほとんど同時に向きを変えた。
そして、急いで家へ向かった。
暖炉の火が照らす、見慣れたものたちのもとへ。窓の外で、明るく響いている川の声のもとへ。
その川は、さまざまな表情を見せながらも、いつだって彼らが知り、信頼している川だった。川は、驚くべきものを見せて彼らを怖がらせることなど決してなかった。
モグラは、歩きながら、家へ帰れる喜びを感じていた。自分が、これから再び、慣れ親しんだ好きなものたちに囲まれる瞬間を、心待ちにしているのが分かった。
そして、そのとき、モグラははっきりと悟った。
自分は、耕された畑と生け垣に属する動物なのだ。
耕された畝。いつもの牧草地。夕暮れどきに人が立ち止まる小道。手入れの行き届いた庭の一角。
そうした場所こそが、自分のいるべき場所だった。
他の者たちには、荒々しい自然の中で生きる厳しさがある。頑固な忍耐があり、ときには、現実の衝突や争いに立ち向かうこともある。
だが、自分はそういう生き方をする者ではない。
自分は賢くならなければならない。自分のために用意された、心地よい場所にとどまらなければならない。
そこには、その人なりの冒険がある。
そして、その冒険は、一生かかっても味わい尽くせないほど、十分に豊かなものなのだ。




