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第五話:土くれの開墾  作者: 塩塚 蘭仮名


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第五話:土くれの開墾

なし

佐兵衛が去った後、離れの板間には、お花の荒い呼吸と「南無……」という力ない念仏だけが残されていた。だが、その静寂を、野獣が藪をなぎ倒すような足音が踏みにじる。


「佐兵衛の野郎、しち面倒くせえ検品は終わったか。あいつは数字さえ合えば満足するが……俺は違うぜ」


現れたのは、山割の権蔵だ。その分厚い胸板と、泥に汚れた「棍棒」。彼は、お花を一瞥すると、下卑た笑みを浮かべて首筋を掴み上げた。


「いいか、お花。お前は名主様のものだ。表の『傷』一つつけるわけにゃあいかねえ。だがな……名主様が愛でるのは、表のアワビだけだろ? 俺は違う。お前に、名主様専用の場所とは違う『新しい歓び』を教えてやるよ」


権蔵にとって、女は「開墾されるべき土地」であり、男同士の衆道で培った剛力を試すための、無機質な供物に過ぎなかった。彼は、お花を泥濘の中庭へと引きずり出した。


「男同士の交わりに比べりゃあ、女の体なんざ、ただのぬかるんだ泥沼だ。……だがな、裏から無理やりこじ開け、新しい『道』を造る快感は、男も女も変わりゃしねえんだよ!」


権蔵はお花を泥濘に四つん這いにさせ、その細い首筋を太い足で踏みつけ、泥の中に顔を押し込んだ。息ができない。お花が泥を吸い込み、肺が焼けるような苦しみに悶える中、権蔵は名主の愛欲とは無縁の、**「裏の通り道」**を野獣のような暴力で開墾し始めた。


「……ッ、あ、が……っ!!」


名主が「一等品」として守り抜いた場所を汚さず、それでいてお花の肉体を内側から裂き、作り変えていく蹂躙。権蔵の剛腕が動くたび、お花の脊椎は悲鳴を上げ、泥とお花の血が混じり合い、ぐちゃぐちゃと不快な音を立てる。


「どうだ、お花! 名主様には一生分からねえ、俺だけの刻印をそのはらわたに刻んでやる! 伝次の野郎も、俺にこうして『仕込まれて』、今じゃ立派な男になったんだぜ!」


権蔵が吐き捨てた、伝次への侮辱。愛する伝次までもが、この野獣の慰みものにされていたという事実が、お花の壊れかけた心に最後の一刺しとなった。


その光景を、久我源三郎は特等席で見守っていた。


彼は腰の**差金さしがね**で自分の顎を叩きながら、泥に埋もれていくお花の瞳を見つめた。


「……権蔵。お前、名主様の『器』を裏から作り替えるとは、随分な職人芸だな。だが、その女の瞳を見ろ。……お前の『開墾』、どうやら別の『種』が蒔かれちまったようだがな」


権蔵はお花の背中に、自慢の棍棒を重石のように横たえ、高笑いした。


お花は、泥を啜りながら、真っ黒な涙を流した。


名主の所有物として表を測られ、権蔵の慰みものとして裏を裂かれた。


「……な……なむ……あ……み……」


泥を吐き出しながら唱える念仏に、お花は初めて、密かな「悦び」を混ぜた。


この重圧、この窒息の苦しみ。


名主の知らない「裏の歓び」という名の冒涜。


すべてを、佐兵衛と権蔵、そして三尊を共食いさせるための「餌」に変えてやる。


権蔵の影が、月光に長く伸びる。お花はその影を見つめながら、この野獣が「力」を信じ切っている今こそが、彼を地獄へ送るための最良の仕込み時であると、泥の底で悟っていた。

なし

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