第5話:乙女のピンチに駆けつけるは、王子様ならぬニンジャガール?
八神学園の裏手にある搬入口。ゴミ捨て場に隣接したその場所は、昼休みというのに人影もなく、不気味なほど静まり返っていた。
そこに、周囲を怯えたように見渡しながら、コソコソと動く小柄な女子生徒の姿があった。如月佳奈である。
お嬢様育ちの彼女だが、銀子の言う「働いて返す」という言葉の真意が理解できないほど無知ではない。
男たちに身体を汚される恐怖に耐えきれず、彼女は藁にもすがる思いで逃走を図ったのだ。
学園を逃げ出したところで、家にも帰れず、愛する婚約者に助けを求めることもできない。いっそどこか遠い海まで行って、崖から飛び降りようか。彼女の精神は、そこまで追い詰められていた。
しかし、彼女の悲痛な願いさえも、運命の女神は路傍の石として冷酷に蹴飛ばした。
「これはこれは、如月家のお嬢様。まだ放課後ではありませんよ。どちらへお出かけで?」
搬入口の影から、下卑た笑みを浮かべた男たちが現れた。佳奈が真っ青になって背を向けるが、逃げ道はすでに塞がれていた。
背後から伸びてきた無骨な腕が、悲鳴を上げさせる間もなく佳奈の口を塞ぎ、その身体を拘束する。スポーツの経験すらほとんどない彼女に、男の剛力を振り払う術などなかった。
「へへ、若(蛇沼)の言う通りだぜ。『あのお嬢様なら、昼休みに逃げ出そうとするかもしれねぇ。裏口を見張っておけ』ってな。ドンピシャだったぜ!」
「世間知らずの考えることなんて、若にはお見通しよ。このまま事務所まで運んじまおうぜ」
「うひょー、十代の生娘かよ。なあ、ちょっとだけ『味見』しちゃダメですかねぇ?」
「馬鹿野郎、若に殺されたいのか? 生娘だからこそ、高く売れるんじゃねえか」
(ああ、もうダメだわ。私、このまま汚されてしまうんだわ。こんなことなら、綺麗な海なんて贅沢言わずに、屋上のフェンスを乗り越えるんだった……!)
悲壮な覚悟を決めた佳奈。だが、その絶望こそが、一度は彼女を蹴飛ばした運命の女神に、再び興味を抱かせるきっかけとなったのである。
「もう、純君! なんで校内デートでこんなゴミ捨て場に来るのよ。おまけに真君までいるし!」
「HA、HA、HA! ミス・麗奈、そうおっしゃらず。この天堂真、学園一のWell-informed(情報通)を自負しております。校内ガイドはお任せあれ!」
「ゴメン姉さん。このゴミ捨て場、たまに近所の人がお宝を捨てていくんだ。」
「もう、またマンガ?」
「そうなんだよ。この間も、八〇年代の料理バトル漫画の金字塔『ミス味娘』の初版本を見つけてさ。下町の食堂の跡取り娘が、特製ソースカツ丼で味将軍を唸らせる名シーンが……」
「HEY、Look! なんだいあいつら、白昼堂々誘拐かい!?」
真が指差した先――搬入口の奥で、数人の男たちが泣き叫ぶ女子生徒を強引にワンボックスカーへ押し込んでいた。
「やべえ、見られた! 急いで撤収だ、出せッ!!」
蛇沼会の連中が焦り、タイヤを悲鳴させながら急発進する。標的を中に放り込んだ鉄の塊が、僕たちを撥ね飛ばさんばかりの勢いで突進してきた。
「姉さん!」
「任せて!」
中学一年生にして百メートル九秒フラットという、人類の限界を超越した脚力。
瞬きする間に加速した姉さんは、突進してくるワンボックスカーの真正面に仁王立ちした。
「ハァーー……セィヤァァッ!!」
鋭い気合と共に放たれた、左の掌底突き。
鈍い衝撃音と共にワンボックスカーから白煙が立ち上り、間髪入れず右手の掌底が叩き込まれる。
「ハァーー……重ッ!!」
瞬間、ワンボックスカーのタイヤが爆ぜ、ホイールが真下へとひしゃげた。まるで、巨大なプレスマシンに押し潰されたかのように、車体が地面へと陥没する。
姉さんがただの力自慢じゃないことは知っていたつもりだったけど、まさか漫画やアニメでしか見られないような神業を目の当たりにするなんて。僕は呆れて、苦笑いするしかなかった。
姉さんが見せたのは、中国拳法の『発勁』や、戦国時代の組討で使われた『当て身』の応用だ。ちなみに発勁と言っても、某有名漫画のようにエネルギー波を飛ばすわけじゃない。
攫われた女の子を傷つけないよう、姉さんはまず左の掌底で、衝撃をパルス(波)状にして送り込んだ。それは外装を突き抜け、内部のエンジンや配線だけを「浸透」して破壊し、車の推進力を奪う。
続く右の掌底では、姉さんに向かって前進しようとする車の慣性エネルギーを、同じくパルス(波)状の衝撃をぶつけることで、ワンボックスカーの真下へと流し込むイメージで送り込み、強引に垂直方向への力に変換させたのである。
水平方向の力と垂直方向の力が一点で交差し、凄まじい負荷が足回りに集中。耐えきれなくなったタイヤとホイールが自壊した――というのが、今起きたことの物理的な説明だ。
……けれど、こんなの理論上の技術でしかない。中国拳法の伝説的な達人だって不可能なはずだ。それをいくら超人体質とはいえ、わずか数年の修行でモノにさせてしまうなんて。
姉さんを鍛えた師匠、『Ms.J』。一体、何者なんだ……?
あ、それより。腰を抜かしていそうにしている真に、これ、なんて説明すればいいんだよ!?
「WOW……。純、今のって最新の特撮か何かかい? それとも僕のアイ(目)がバグったのかな?」
案の定、真は半壊して煙上げてるワンボックスカーを前に、魂が抜けたような顔で立ち尽くしていた。
僕は冷や汗を流しながら、必死に言い訳を探す。
「あ、あはは……。今の、なんていうか、姉さんのマジックというか……最新の護身術で……」
支離滅裂な僕の言葉を、真は片手を挙げて遮った。そして、ニヤリと不敵な笑みを浮かべる。
「HEY、純。説明は不要さ。僕も日本のマンガやアニメは大好きだからね。お前の姉さんが『普通』じゃないことなんて、出会った瞬間に気付いていたよ。……シークレットなんだろ? 話せる時が来たら、SPEAKしてくれればいいさ」
「真……」
「リアル・ニンジャか、それともエクソシスト――ジャパンじゃ『オンミョウジ』だったかな? とにかく、スーパークールだぜ! 僕は何も見ていない。OK?」
真は口元に指を立て、ウィンクしてみせた。
……助かった。けれど、あまりに察しが良すぎないか? 普通、女の子が素手で車を陥没させたら、腰を抜かして逃げ出してもおかしくないはずなのに。
(……天堂真。お調子者を装っているけれど、君は一体何者なんだ?)
「ゲホッ、ゲホッ……ち、ちきしょう! エンジンの故障か!? こんな時に……!」
半壊したワンボックスカーから、蛇沼会の男たちが這い出てきた。
さすが姉さん。これなら車内の女の子に怪我はないはずだ。
「あんたたち、白昼堂々女の子を誘拐おうなんてどういう了見? ことと次第によっちゃ、痛い目を見てもらうわよ!」
姉さんの啖呵に男たちは一瞬怯んだが、相手が女子高生だと分かると、下卑た笑みを浮かべた。
「おう姉ちゃんよ、『痛い目』とは穏やかじゃねえな。自分こそ五体満足でいたかったら見て見ぬふりをするんだな。じゃなきゃ、女子供だろうが容赦しねえぜ」
「……そう。なら、あんたたちは誘拐犯の現行犯ね。どれだけ痛めつけても、文句は言わせないわよ」
その瞬間、姉さんの姿が四人に分身したかのような錯覚に陥った。
一瞬。まさに瞬きする間の出来事だった。
姉さんは、女の子を拐おうとした奴らに本気で腹を立てていたらしい。いつも以上に容赦がなかった。
四人中三人が、一瞬で手足と喉を粉砕された。激痛に悲鳴を上げたくても、喉を潰されているから呼吸するだけで精一杯のようだ。
さらに……あ、またそれやるのか! 同情はしないけれど、三人とも子孫を作れない体にされてしまった。死んではいないが、口から蟹のように泡を吹いて気絶している。同じ男として、せめて合掌……。
「リ、リアル・ニンジャガール……ファンタスティック! ブンシンの術!」
真が腰を抜かして驚いていたが、男としての機能を奪われた連中を見て、顔を引き攣らせながら自分の
『息子』を守るように後ずさりしている。……その気持ち、痛いほど分かるよ。
一人だけ、一番気弱そうな奴は、逃げられないように両足をローキックで折られただけで済んだようだ。地面を無様に転がっているのは、情報を聞き出すために姉さんが残したのだろう。
「姉さん、尋問は僕がする。その子の保護は任せたよ。女性の姉さんに助けられた方が、彼女も安心するだろうから」
「了解、純君! そいつ、一ヶ月は歩けないはずだけど、誘拐犯なんだから情けは無用よ!」
僕は、足を抱えて震えている男の前に、静かにしゃがみ込んだ。
「……さて。あいつらみたいに『生物としての機能』を失いたくないなら、一秒でも早く質問に答えてね。」
姉さんによって車内から救出された女の子が、クラスメイトの如月佳奈さんだったことには、流石の僕も驚いた。
最初はショックで震えていた彼女だったが、自分を誘拐しようとした連中が無残に叩きのめされている光景を見て、ようやく落ち着きを取り戻したようだ。
彼女の告白と、僕が「お喋り」にさせた男の供述により、事の全貌を理解した。
あまりに卑劣な罠。姉さんは今すぐ生徒会室にカチコミをかける勢いだったけれど、僕はなんとか彼女をなだめた。
「姉さん、今はまだ校内に無関係な生徒や教師が多すぎる。彼らに被害が飛び火するかもしれない。……やるなら、完璧に、一網打尽にしよう」
腹の底から、どす黒い怒りが湧き上がってくるのを感じた。
生徒会長・蝶野銀子。彼女とは、今度こそ全面対決をする覚悟が決まった。
幸いなことに、五時間目は自習だった。この時間を使って情報収集と「下準備」を済ませることにする。
ちなみに、這いつくばっていた蛇沼会の連中は、姉さんが再び半壊したワンボックスカーの中へと丁寧に押し込んでおいてくれた。後で警察が「不運な自損事故」として処理してくれるだろう。
「……さあ、掃除の時間まであと少しだ。真、協力してくれるかい?」
「HEY、任せろブラザー。面白くなってきたじゃないか!」
クリアすべき問題は四つ。
一、敵の戦力。二、戦場となる生徒会室の間取り。
三、無関係な生徒や教師の避難。
そして四、最重要事項――佳奈さんの弱みであるSDカードの隠し場所だ。
幸い、二と四については真が請け負ってくれた。
「俺、蝶野会にもFRIENDがいるんだ。中には友達や大切な人を守るためとか、学費とかMONEYのために嫌々従わされている奴もいる。そいつらなら、喜んで情報を流してくれるはずさ!」
真はあちこちにLIMEや電話を飛ばし始めた。この様子なら、情報収集は彼に任せておけば大丈夫だろう。
一についても、こちらには「絶対無敵のジョーカー」である姉さんがいる。戦力差など考えるだけ無駄だ。
問題は三――「一般生徒の避難」だ。
生徒会室で大立ち回りを演じれば、部活や委員会で残っている生徒が野次馬に集まるし、教師も飛んでくる。被害が飛び火するのは避けたい。かと言って、完全下校時間の十九時を過ぎれば、蝶野会長も帰宅してしまうだろう。
その時、僕の脳内で電球が点灯した。
慌てて制服の内ポケットを探ると、あの日――会長に直談判した際にくすねておいた「生徒会専用の要望書」が出てきた。
(……これだ。これを使わない手はない)
僕は即興でストーリーを組み立てた。
三の問題――「一般生徒と教師の避難」について、僕は完璧な筋書きを書き上げた。
教職員の労働時間を考慮し、下校時間は十八時に設定。ターゲット以外の人間を学園から一掃しつつ、蝶野会を油断させるための「偽の要望書」だ。
『最近、校内での盗撮被害を訴える声が急増している。そのため、本日十八時をもって校内を生徒会が、一斉捜査する。一般生徒および教職員は、十八時までに速やかに完全下校すること。
なお、これは表向きは学園側(理事会)からの正式な指示であるととする。捜査も学園側が雇用したプロフェッショナルに一任する形にする。
ただし、捜査の本部となる生徒会室のみを調査対象外とする。理由は機密事項につき回答不可。
以上を直ちに校内放送および、学園連絡網で伝達すること。』
これなら、十八時には蝶野会と蛇沼会以外の人間を学園から排除できる。自分たちの聖域(城)が守られるなら、あの傲慢な会長がこの「指示」に異を唱えるはずもない。
しかも、この用紙は本物。会長直筆のサインと印影がある。そこに僕が文面を書き足したところで、形式上は「要望書の追記」に過ぎないのだ。
「……何、盗んだ書類を勝手に使うのは犯罪だって? チ、チ、チ、チ。分かってないなぁ。これは公文書偽造にはならないんだよ。僕はあの日、緊張のあまり転んで書類をぶちまけてしまった。慌てて戻したけれど、一枚だけ『返し忘れた』だけなんだから!」
我ながら酷い屁理屈だとは思うけれど、これもすべては正義(とお掃除)のため。……いや、そもそも学校の書類は公文書じゃなくて私文書じゃないか、なんてツッコミは今の僕には聞こえない。
僕は堂々と一階の職員室へ向かい、重々しい扉を開けた。
「失礼します。生徒会からの代理で、こちらの緊急要望書を届けに参りました」
僕が差し出した「本物」の用紙と、そこに記された会長の印影。それを見た瞬間、居並ぶ教師たちの顔がサッと青ざめた。
彼らにとって、生徒会――ひいては背後の蛇沼会は、家族の安全を握っている絶対的な支配者だ。
「これ……理事長への指示か?」
「はい。内容を確認の上、直ちに全校放送で全生徒・教職員へ周知するように、とのことです。……分かっていますよね? 会長を待たせるのが、どれほど『不利益』を招くか」
僕はあえて冷徹な口調で、追い打ちをかけた。
教師たちは互いに顔を見合わせ、震える手で書類を受け取った。
「わ、分かった。すぐに手配する……」
職員室を後にした僕は、廊下で待っていた真と姉さんに小さくVサインを送った。
これで十八時には、この学園は「僕たちの戦場」になる。
「HEY、純。お前、いつの間にあんな『ヴィラン』みたいな顔ができるようになったんだい?」
「……姉さんと一緒に暮らしていれば、生き残るための術は自然と身に付くものさ」
嘘だけど。本当は心臓がバクバク言っているけれど。
僕は平静を装って、夕闇に染まり始めた校舎の階段を上り始めた。
一般生徒と教職員への対応はこれで万全。だが、最後に大きな問題が残っていた。
かつて直談判で一度だけ足を踏み入れた僕の記憶と、真の情報網を合わせ、生徒会室の内部構造はほぼ把握できた。
けれど唯一――佳奈さんの動画が入ったSDカードの隠し場所だけは、特定できなかったのだ。
真の調べによれば、生徒会の運営費用や各部活の部費といった、ぶっちやけ裏帳簿などの重要機密は、蝶野会長自らが厳重に管理しており、側近にすらその在処を明かしていないという。
「……ただ、一つだけ奇妙な噂があるんだぜ、純。蝶野会長は機密を隠す際、必ず室内の全員を外に追い出す。だが、その後の彼女は、決まって奇妙に口をモゴモゴさせていることが多いらしい」
その間、うっかり話しかけようものなら、不機嫌そうに睨みつけられるか、烈火のごとき平手打ちを食らうのがオチだという。
「……口を、モゴモゴ?」
「HEY、何かのまじないかい? それとも、酔いざましのガムでも噛んでいるのかな?」
真が首を傾げる横で、姉さんの瞳が鋭く光った。何かピンとくるものがあったらしい。
「SDカードの隠し場所、分かったわ! 佳奈ちゃん、安心して。会長の奴から必ずあなたの弱みを奪い返して、キツーいお仕置きをしてあげるから!」
姉さんがそう断言するのなら、もう疑う余地はない。
「……よし。決行は十八時。学園が『無人』になった瞬間だ」
最終打ち合わせを開始した。
カチコミのメンバーは、僕と姉さんの二人だけ。足手まといがいない方が、姉さんも思いっきり暴れられるからだ。
真には、嫌々『蝶野会』に従わされている生徒たちを急遽カラオケパーティーに連れ出してもらうことにした。彼らまで姉さんの「お掃除」に巻き込むのは、流石に寝覚めが悪い。
「OK、OK! 僕はホワイトカラー(非戦闘員)だからね。そっちは任せておけ! ミス・佳奈のエスコートは完璧にこなしてみせるよ!」
意外だったのは、佳奈さん本人が「自分も行く」と言い張ったことだ。
「もともとは私の不祥事です。お二人にこれ以上危険な真似はさせられません。私がもう一度、蝶野さんとお話してみます!」
僕がいくら蝶野会長は話を聞いてくれる人じゃないよも説得しても、「それこそ、恐ろしい人達がたくさんいるのに、お二人たけで行ったらどんな目にあわされるか。」
彼女は頑として譲らなかった。説得は無理だと判断した姉さんは、「佳奈ちゃん、心配してくれるのはうれいけど、ちょっとこれ見てくれる。」
ゴミ捨て場に転がっていた業務用冷蔵庫を片手で軽々と持ち上げてみせる姉さん!
「ハァーーッ!」
そのまま鋭い気合と共に、姉さんは数百キロある鉄の塊を上空高くへ放り投げた。
直後、自身も垂直跳びで四〜五メートルの高さまで跳躍。バスケットボールの神様、マイケル・ジョーダンですら全盛期で百二十二センチだというのに。姉さんはニュートンの万有引力に喧嘩を売るような滞空時間で、空中からパンチとキックの連打を叩き込んだ。
凄まじい衝撃音と共に、冷蔵庫が空中で粉々に解体される。
(……ちなみに、姉さんはスカートの下に黒のスパッツを履いていた。後で『私がパンツ見せるのは純君だけだから安心してね♥』とか言ってくるんだろうな、絶対)
人間離れした光景を目の当たりにした佳奈さんは、折角の美少女が台無しのポカーンとした表情で固まっている。
「ミス・麗奈! 次は手裏剣や水遁の術もPlease perform for us(披露してくれ)!」
真は拍手喝采しながら、完全に姉さんをニンジャだと思い込んでいるようだ。
僕は慌てて、「姉さんは闇の世界で生きる特殊な一族の末裔で、幼い頃から秘薬を飲み、過酷な修行を積んできた超人なんだ」という、少年漫画の読みすぎな設定をデッチ上げてなんとか誤魔化した。
僕たちも蝶野会長とは因縁がある。姉さんがいれば安全だから任せてほしいと、必死に説き伏せた。
「……麗奈さん、どうして今日会ったばかりの私のために、そこまでしてくださるんですか?」
如月さんの問いに、姉さんはギャルピースを決めながら笑った。
「私、ずっと海外にいたから日本に友達がいないの。だから、私と友達になってよ! 友達を助けるのは当然でしょ?」
その言葉には、流石の佳奈さんも納得したようだった。……けれど、そこで止めておけばいいのに、姉さんは余計な一言を付け加えた。
「それに、ホームルームでも言ったでしょ? 悪い子は、月に代わってお仕置きよ! 生徒会長は、私がたっぷりお仕置きしてあげるわ!」
例のポーズも決めて見せるけど、如月さんも真もポカーンとしている。当然だよ!僕らが生まれる前のやつだって!
(……姉さん、最後で台無しだよ)




