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沈黙する存在  作者: 小島もりたか
3章 侵略
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一話 来襲(1)

始まりは、SNSの投稿動画だった。


「見て悟。空にクラゲが浮かんでるよ」


SNSのタイムラインで最近よく流れてくる動画を悟に見せる。それは、真っ青な空に薄白く、ふわふわと浮かぶクラゲのような存在を収めた動画だった。朋里と優希も一緒になって動画を覗く。


「クラゲだ!」

「空に浮かんでる、どうやって?」

「生成AIの動画じゃない?」


悟が疑うので、それもそうだなと思い、ミライに問いかける。


「鑑定士、いかがですか?」


ミライは動画を何度もじっくり見ると、驚きながら言った。


「――これ、生成AIの動画じゃないし、フェイク動画でもないよ……」


皆で一斉に驚く。由香里さんがクッキーを飲み込み、口を開く。


「え? じゃあ未確認飛行物体ってこと?」

「それはUFO。これは生き物っぽいから、どっちかと言うと未確認生命体。UMAだね」

「現代のスカイフィッシュかー。でも、どうやって浮かんでいるんだろう? 気になるな」


悟が面白そうに顎を撫でる。


「そういえば、もしかしたら地球外生命体の線もあるなぁ」

「え? それって大丈夫なんですか?」

「んー? ……やばいかもねぇ……」


悟が渋い表情をする。


「仮にこのクラゲが地球外生命体なら、まず地球に来た理由が知りたいわけだけど、今は空に浮かんでるだけだから、地球の様子を窺ってる段階なのかも」

「相手が知的生命体か否かでも変わるよね。昆虫みたいな感じだと、容赦なく捕食してきそう」

「知的生命体でも、食料として認識されちゃったら、対話の余地はないですよね……。むしろ虫より強敵そう……」


由香里さんの指摘に、「確かに」と笑いながら悟が言う。


「ちなみにミライはどう分析する?」

「これは確実に地球外生命体だと思う――」


ミライは何度も動画を見て、演算を続ける。


「ただ、地球に何か目的があって来たわけじゃない気がする――たまたま見つけて、今は空から観察してる感じじゃないかな」


ミライは悟と正反対の表情で続ける。


「もしこの地球外生命体が知的生命体だったとしても、僕らを対等な存在として認識する可能性は5%以下だよ。侵略――いや、蹂躙の前段階の可能性が80%……」


ミライの分析結果に、皆血の気が引いていく。唯一、優希は「どういうこと?」と頭に?マークを浮かべていた。


「待って待って、それって人類、すごくピンチじゃない?」


「そうだね」とミライが重々しく頷く。由香里さんは衝撃が強すぎて、クッキーをテーブルに落としていた。


「どうやって浮かんでるか分からない存在を、どうやって倒すんだろう?」

「分からない……でも、まだ何かしてくるとは決まったわけじゃない」

「そのまま立ち去ってくれるといいんだけどね……」

「そもそも、知的生命体がいて文明を築いている惑星がレアだからなぁ……」

「だよねぇ……でも、私たちで前もって何かできることはあるんじゃないの?」

「茜が『人類』に対して言っているならだけど、僕らが『人類』に対してできることはないよ」

「あ――」


悟の指摘に頭を掻く。

被害がない現段階で訴えても、オカルト思考にやられた痛い奴判定を食らう可能性が高い。

まだAIが判定したと言ったら信じてもらえるかもしれないが、違った場合の損失が大きすぎる。


――しかし、被害が出始めた段階では、終わりの始まりではないだろうか?


「僕たちが現段階でできるのは、身の回りの安全の確保を始めることだ――例えば、地下シェルターの充実とか?」

「まさか、本当に役に立ちそうな日が来るとは……」


私は思わず頭を押さえる。


「ミライ、あとどれくらいで攻めてきそう?」

「この動画がいつ、どこで撮られたか分からないけど、その動画の場所なら、あと2ヶ月くらいじゃないかなぁ」

「いつ撮られたんだろう……?」


いつ、どのように保存されてタイムラインに流れてきた動画なのか分からず、不安しか残らない羽目になった。


とりあえず非常時に備えて物を買い足し、地下シェルターに仕舞っていった。

地下シェルターはミライと悟の設計、工事のもと、素人が造ったとは思えないほどの設備ができている。なんなら、職場なら職員が入ってなお余剰がある地下シェルターが完備されている。施設長はこれを予期していたのだろうか?――いや、私は、あれはロマンで造ったのだと気がついている。


そして一週間後、服と靴――一般的に人間が外出時に身につけるものと、謎の白い半透明のスラリー――液体と粉のドロドロした混合物――が混ざって道に落ちている、という投稿が流れてくるようになった。


「発展途上国で多いらしいよ」


ミライに見せると、ミライは無表情で、


「始まった――」


と告げた。

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