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沈黙する存在  作者: 小島もりたか
1章 見えない存在
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四話 悟の提案(1)

「あかねちゃん、おりがみおしえて!」

「いいよ! なにがいい?」

「ハート!」

「いいよ!」


悟のいる幼稚園に転園して二ヶ月。悟以外の女の子の友達もできた。


「あかねちゃん、いっぱいおりかたしっててすごいね!」

「じんじゃのおばさんがおしえてくれるんだ!」

「じんじゃのおばさん?」

「うん!」


涼香はよく分からないようで首を捻っていたが、私が折り紙を折り始めたので、一緒に手を動かし始める。


毎日神社に行って、時々おばさんやお姉ちゃんに色んな折り紙や遊びを教えてもらっている。今や、ちょっとした先生だった。

おばさんに貰ったお守りを持っているお陰か、こちらに引っ越す以前のように、私にちょっかいを掛けてくる霊もほとんどいなくなった。変な挙動がほぼなくなった分、私は同年代の女の子と溶け込みやすくなっていた。


「さとるくん、きょうもテレビ?」

「うん、そうみたいだよー」

「すごいよね、まいしゅうテレビ」

「さとるくん、いきたくないみたいだけどね」


私も凄いとは思うけど、毎回辟易とした顔をする悟を思い出して苦笑いする。

途中から参加していた真由が目をキラキラさせた。いつの間にか、数人の輪になっていた。


「いいなぁ、まゆもテレビにでてみたい」

「すずかもー」

「あかねもー」

「さとるくん、このまえもクイズでまけなしだったけど、こんかいはどうなるんだろうね?」

「まけなしじゃない?」

「てんさいだもんねー、すごいなー」

「かけっこはおそいけどね」


皆で顔を合わせてクスリと笑う。悟は運動がとても苦手だった。

この前も、皆でボール遊びをしていて、ボールが顔にぶつかっていた。


「さとるくん、ちょっとおとなっぽくてかっこいいよねー」

「わかる! まえまでよくわかんなかったけど、あかねちゃんがきてからいっしょにあそべるようになった!」


皆で悟の話をする度、楽しいと同時に、少しだけ胸の奥がざわつく。

なんだか、それが後ろめたかった。


悟はあの日――祖父母が近くで見守っていることを伝えた日以来、時々こっそり、祖父母がいるかを聞いてくるようになった。

守護霊はずっと一緒にいるわけではないので、悟は祖父母の在不在で一喜一憂している。


それは、私だけが知っている悟だった。


「みんな、ここまでおれた?」


私が見回して聞くと、皆、慌てて手元に視線を戻した。


――おりがみは、とくいなんだけどね……。


この前は、鶴が何羽もくっ付いた折り鶴を作って、みんなを驚かせていた。



夕方、一人で神社に行く。

早ければ悟も来ているかもしれないと思ったけど、入口に靴はない。まだのようだ。


「おじゃましまーす!」

「はーい! どうぞー!」


今日は何をして遊ぼうかと玩具を選んでいると、バタバタと悟が駆けて来た。


「おかえりー」

「ただいま!」


悟は私の顔を見るなり、安心したように溜息を吐いた。


「どうかした?」

「いや、特に何もないんだけどさ」

「こんかいのしゅうろくはどうだったの?」

「まあ、いつも通り」

「まけなしなんだ」

「皆、手加減してくれてるんだよ。台本さ」

「そうなの?」

「……さぁ?」


へらっと悟は笑うと、玩具置き場から輪っかになった紐を取り出した。


「今日はあやとりしよー!」

「いいよ!」


しばらくしてお姉ちゃんが帰ってきて、お姉ちゃんの宿題まで終わると、悟は意を決したように口を開いた。


「――ねえ、皆で霊を映す装置を作ろうよ」

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