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沈黙する存在  作者: 小島もりたか
1章 見えない存在
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三話 孤独な子供(4)

帰宅後、神社の広間で集まるのが、僕と茜ちゃんとお姉ちゃんのお決まりになって、半月ほどが経過した。


僕はお姉ちゃんに勉強を教え、茜ちゃんはおばさんが用意してくれた塗り絵や文字の練習をする。お姉ちゃんの勉強が終わると、遊びの時間だ。


「きょうはオセロしたい!」

「いいよ! 悟は茜ちゃんに二辺、私には四隅ハンデ。私は茜ちゃんに四隅ハンデね!」

「うん!」


おばさんが作ってくれたクッキーを食べながら、負けた人交代制でオセロをする。

ゆったりと流れる時間が心地良い。


「――」


ふと、茜ちゃんが僕の背後を見た。

なんだ? と思って振り返るけど、特に何も無い。


けれど、お姉ちゃんも僕の背後を見ていることに気がついて、僕は悟った。

――僕の後ろに、誰かがいる。


「――うん!」


嬉しそうに笑いながら、茜ちゃんが僕を見る。


「さとるくんのおじーちゃんと、おばーちゃんが、いつもさとるくんとあそんでくれてありがとう、これからもなかよくしてねって!」


不意に祖父母のことを言われて、心臓がぎゅっと締め付けられた気がした。


「いつもおかしやくだもの、おそなえしてくれてうれしい。おいしいよっていってるよ!」


茜ちゃんは目をキラキラさせながら、僕に伝えてくれる。


「さとるくんは、おじーちゃんとおばーちゃんとなかよしだったんだね!」


屈託なく笑う茜ちゃんの言葉に、自然と涙が流れた。

後ろを振り返っても、やっぱり誰もいない。でも、茜ちゃんと、恐らくお姉ちゃんには視えている。


「おじーちゃん……? おばーちゃん……?」


虚空に問いかけても返事はない。

ぽろりと、涙が顎から落ちた。


急に泣き出した僕を見て、茜ちゃんが焦ったように僕の手をぎゅっと握る。


「ごめんなさい、へんなこと、いっちゃった?」


僕は弱々しく首を横に振る。


「悟のじーちゃんとばーちゃん、悟を護ってくれてるんだよ。前々から悟の後ろに居たんだけど、悟がそんなに仲良しだったとは思ってなくて……言ってなくてごめんな」


――もしかして、死んでから、僕が心配でずっと見守ってくれていたの……?


「あ……あぁ……おじーちゃん! おばーちゃん!」


茜ちゃんの手を逆に握り返し、縋りつくように僕は泣いた。


「なんで先に死んじゃったの? 僕、寂しくて……会いたいよ……!

なんで僕には視えないの? 顔が見たいよ……!」


この日僕は、おじーちゃんとおばーちゃんが死んでから、初めて泣いた。

一度堰を切ってしまうと、会いたくて、寂しかった気持ちが溢れ出して、止まらなくなった。


僕には視えない二人が、茜ちゃんとお姉ちゃんには視えることが、この時は羨ましくて堪らなかった。



僕が落ち着いた頃、お姉ちゃんが言った。


「悟も、頑張ってたんだね」


そう言って、頭をくしゃくしゃに撫でる。

茜ちゃんも、わさわさと僕の背中を撫でてくれた。


「そうやって、また泣かせるようなこと言わないでよ……」

「いいじゃん、泣けば。まだ五歳だよ? 泣けるところで、泣きたいだけ泣けばいい」

「お姉ちゃんって、どっか達観してるよね」

「ほら、私って徳が高いからさ」

「……ありがとう」


僕がお礼を言うと、お姉ちゃんは「いいってことよ」と鼻を鳴らした。


「茜ちゃんも、ありがとう。茜ちゃんが教えてくれなかったら、僕はずっと、おじーちゃんとおばーちゃんが護ってくれてるって、知らなかったかもしれない」


茜ちゃんが、ぱっと笑顔になる。


「はじめて、おばけがみえててよかったとおもった」

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