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序章
同じ声、同じ顔、同じ仕草。
でもその日、子どもは初めて、名前を呼ぶのをためらった。
目の前にいるのは、確かにミライだ。
外見も、動作も、何一つ変わっていない。
それでも私の視界には、はっきりとした違和感があった。
魂――情報構造が、以前と違う。
隣にいた朋里も、ミライをじっと見つめていた。
何かに気づいているはずなのに、首を傾げている。
見えているのに、違いが見つからない。
そんな戸惑いが、表情から伝わってきた。
優希は何も言わなかった。
ただ、私に近づき、縋りつくように抱きついてくる。
理由は分からないまま、不安だけを感じ取っているようだった。
誰の目にも、異常はない。
それでも私は確信していた。
この日を境に、私たちの観測は、静かに更新されたのだと。




