第四話 前の日
「ねぇおケイ」
二段ベットの上からヨウチャンは声をかけてきた、お嬢が上で 私が下なのだ
「なーに」
「明日、主役のオーディションなんだ」
「ふーん」
毎月言ってる
「今度こそ絶対受かりたいの、今までミュージカルばかりだっ たじゃない。今度は歌や踊りがない新劇なの」
「新劇?」
「そうしかも、浅井和則さん原作の斎藤和先生の書き下ろしの 台本 で、演出は小山真美先生。しかもしかも音楽はあの山田五郎さんなんだって」
誰ですかその人たちは・・・やまだごろうってたしかキューピーちゃんヘアで眼鏡かけたよくテレビでいじられてる人? ・・・あの人作曲する人だったんだ
「それにね今日願掛けにいったんだ」
がん・か・け?お嬢の専門用語はよう分からん
「おケイ覚えてる」
なに?急に振ってきたけどギョウカイの事なんてワイドショーの事しか分かんないよー
私お嬢みたいにマニアじゃないし
「なに」
とりあえず答えた
「私とおケイが、東京で初めてあった場所」
「吉野家?」
「あの時私初めて並じゃなく大盛り頼んだんだー、そしたら店 員さん間違えておケイのとこもってったんだよねー」
そう大輔のおかげ
お嬢は週に三回火曜と木曜と金曜のドトールのバイト終わる と、原宿の吉野家でお昼食べる習慣になってるらしく。 一ヶ 月くらい私も通ってたのだが、目の前に座っても横に 座っても全然気付かなかったわけで、それを見ていた大輔が私に声をかけてきて・・・ 初めは何だこいつ ナンパか?と思ってたけど結構地味内気でなよなよしてて変な奴でさ、今でもお嬢の事をちくいち報告してくるとにかくまとめるといい舎弟だうん
「うん覚えてる、私もまさか東京でヨウチャンに会えるなんて・・・運命かなー、なんちゃって」
真紀におばさんから住んでる場所、バイト先、通ってる学校そして連絡先、全部聞いてたからね、探すのは簡単だったんですよ
「うん、私も運命だと思うよ。ホントに・・・もしあそこでおケイに 会ってなかったら私・・・静岡に帰ろうと思ってたの。誰もいない東 京でお芝居は上手くいかないし、バイトで忙しいし、楽しかっ たけど・・・ただ毎日働いてお金かせいで、高い授業料払って、何 とかレッスンだけ受けて・・・他の子達は公園で練習してるってのに・・・並、並、並でさ、だから思ったんだ。よーし食べてやる、大 盛いっぱい食べてやる。大盛り食べて、静岡に帰って、結婚 し よう・・・と思ってたんだ」
お嬢・・・だからあの時半べそかいてたんだ…・・・てっきり彼氏かなんかに振られたのかとおもったよ・・・?
「えー!」
「何よ、大きな声だして」
「ヨウちゃん結婚しようとしてたの?」
「うん」
「誰?、ヨウチャン高校時代部活ばかりであと遊ぶの私だけ だったよねー」
イタッ、思わず飛び起きて天井のキムタクとキスしてしまった
「ちょっと大丈夫」
「うん、大丈夫、大丈夫そんな事より誰、相手は私の知ってる 人?」
こんな事で泣いたりしません、私はプロですから
「あーいなかったわよ、ただあの時は結局私はただの女で、女 の幸せは結婚かなーって思っただけよ」
「なーんだ」
お鼻痛いよーキムタクのバカ
「どうしたのおケイ」
お鼻痛いの
「なんでもない…頑張ってね明日の発表会」
「もーだから明日やるのは、発表会の前のオーディションだっ て」
「そっか、じゃあとりあえず寝坊しないために今は寝るの だー」
「そうね、お休みおケイ」
「お休み、ヨウちゃん」
お鼻痛いよー




