管理プロセス:交戦
空の裂け目から、
白い人影が降りてくる。
一体、二体、十体。
百。
翼。光輪。均整の取れすぎた姿。
微妙な差異だけがある天使然とした個体が、
同時に世界へ接続されていく。
【最適化実行体:PRI-EL】
【展開フェーズ:広域】
冥界境界。
黒い大地に、灼熱の足跡が刻まれた。
半身半馬の黒騎士スルトが立ち上がる。
輝く剣ジョワユーズを肩に担ぎ、空を睨む。
「……増えすぎだろ」
その横で、
女魔が舌打ちした。
赤黒い角、長い髪。
軍装のような魔装束。
マグナ。
戦争を生き延びた魔王級の指揮官。
「数で押す気ね」
「天使の真似事が、ずいぶん雑になったじゃない」
背後で、悪魔軍が動き出す。
重装、飛行、呪詛部隊。
殺し慣れた連中ばかりだ。
プリリエルたちは、整列した。
戦闘態勢ではない。
配置確認だ。
「対象:高魔力集合体」
「局所歪曲レベル、閾値超過」
「削減を実行」
声は重なる。
感情の揺れは、ゼロ。
「来るわよ!」
マグナが叫ぶ。
光が面で降った。
避けられない。
防げない。
前列の悪魔たちが、
消えた。
爆発や焼失の類ではない。
存在がそのまま
不要として処理され消失した。
「……は?」
一瞬、戦場が凍る。
「ふざけんなぁぁぁ!!」
スルトが猛スピードで踏み込む。
輝く厄災の剣が振り下ろされ、
世界が燃え上がる。
炎は確かに届いた。
PRI-EL-021が、溶ける。
——即座に、補充。
PRI-EL-022、023、024。
「破壊を確認」
「学習開始」
「対魔王耐性、調整」
マグナの瞳が細くなる。
「……クソが」
「殺され慣れてる顔じゃない」
「壊され慣れてる仕様ね」
悪魔軍、突撃。
魔術、呪詛、物理、精神攻撃。
ありとあらゆる殺しが叩き込まれる。
プリリエルは、怯まない。
回避しない。
防御もしない。
必要な分だけ消え、必要な分だけ補充される。
「どこから湧いてきやがるんだ」
「個体損耗率、許容範囲」
「最適化継続」
「指揮系統を狙え!」
マグナが叫ぶ。
「頭を落とせ!」
「同じ顔の奴でも構わない、判断してる何かを引きずり出せ!」
スルトが笑った。
「いいねぇ」
「久しぶりに、世界を相手にする気分だ」
二人が同時に踏み込む。
冥界が、震えた。
スルトの一撃が空を割り、
マグナの雷撃が空間を迸る。
PRI-ELが、数十体まとめて崩壊する。
初めて、
プリリエルの進行が止まった。
「……?」
そして、
全個体の視線が、一点に集まる。
マグナ。
「対象、特異」
「戦術判断能力、高」
「削減優先度、上昇」
マグナは、笑った。
「上等」
「冥界の戦争屋を、ナメるんじゃないわよ」
プリリエルの行動が変わった。
「戦闘行動、最適化フェーズへ移行」
「感情模倣、最低限有効」
初めて、
怒りに似た速度で、彼女らが動いた。
戦場は、地獄になった。
悪魔が斬られ、
プリリエルが砕かれ、
世界が怒号を上げる。
勝敗は、決まらない。
殺せる。
だが、終わらない。
「……厄介すぎる」
マグナが歯を食いしばる。
「ねえスルト」
「これ、どう考えても——」
スルトが、低く笑った。
「ああ」
「神相手より、面倒だ」
空の彼方。
眠る少女の指が、
わずかに、震えた。
拒否は、
まだ、続いている。
そして箱庭は、
この戦闘を——
成功例として記録し始めていた。
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