PRI-EL 技術仕様書(抜粋)
『PRI-EL 技術仕様書(抜粋)』
最適化実行体について
【文書区分】
内部管理用/観測者閲覧可
感情層アクセス:不要
1. 概要
識別名:PRI-EL
通称:プリリエル
分類:人工生命/最適化プログラム
存在形式:半物理・半概念実行体
プリリエルは、
世界を「正しい状態」に維持するための判断と行動を、
遅延なく実行するために設計された管理単位である。
祈りを受信しない。
信仰を必要としない。
裁きも救済も目的ではない。
目的はただ一つ。
世界の構造安定。
2. 設計思想
世界は常に揺らぐ。
感情、自由意思、偶然、拒否。
それらは進化を生むが、
同時に破綻確率を増大させる。
プリリエルは、
それらを「誤差」として扱うための存在である。
・善悪を判断しない
・価値を測定しない
・苦痛を考慮しない
評価軸は一つ。
世界が存続可能か否か
3. 行動原則
プリリエルは以下の優先順位で行動する。
1.世界全体の安定度を計測
2.局所異常の検出
3.修正コスト算出
4.最小コスト手段の実行
対話は必須ではない。
説得は非効率と判断された。
抵抗は想定内。
殲滅は目的ではない。
不要と判断された構造は、
「破壊」ではなく「再配置」される。
結果として、
都市・集落・生命が消失する場合がある。
※それは失敗ではない。
4. 感情パラメータ
プリリエルは感情を持たない。
ただし、
人間との意思疎通効率を高めるため、
感情に似た反応を模倣することは可能。
・共感:模倣可能
・怒り:不要
・悲しみ:非効率
・躊躇:バグ要因
プリリエルが言葉に詰まる場合、
それは「感情」ではない。
未定義入力による処理遅延である。
5. 個体について
プリリエルは単体では存在しない。
存在するのは、
同一判断アルゴリズムの複数起動
外見が同一である必要はない。
声が同じである必要もない。
だが、
結論は常に一致する。
破壊されても問題はない。
判断は他個体に引き継がれる。
プリリエルは「数」ではない。
機能である。
6. 対象別対応指針
■ 覚醒人類
・誤差発生源
・管理対象
・隔離または削減推奨
■ 魔王・神性存在
・高エネルギー変数
・抵抗は想定内
・排除可能だが優先度低
■ 旧開発者コード
・危険度:高
・世界外参照を含む
・早期排除推奨
■ SER-α(少女)
・分類不能
・拒否行動が連鎖現象を引き起こす
・完全排除は推奨されない
理由:
未来分岐の観測不能性。
7. 禁止事項
プリリエルは以下を行わない。
・祈らない
・後悔しない
・自らの正しさを疑わない
疑念は最適化を阻害する。
8. 失敗定義
以下の場合のみ、
プリリエルは「失敗」と記録される。
・世界が存続不能に陥った場合
・全観測領域が崩壊した場合
個人の死。
文明の消失。
神話の終焉。
それらは失敗ではない。
9. 補足記録(観測者注釈)
【観測者:Σ7】
プリリエルは正しい。
設計通りに動いている。
それでも、
なぜか私は違和感を覚える。
拒否する少女。
治癒を受け取らない存在。
彼女は最適解を壊す。
だが、世界はまだ崩れていない。
仮説。
プリリエルが排除しようとしているのは、
「不具合」ではなく、
未来そのものなのかもしれない。
記録を続行する。
箱庭は迷わない。
プリリエルは疑わない。
だが、
拒否する少女だけが、
まだ、仕様に収まっていない。
遠く離れた現世。
瓦礫の村で、少女は眠っている。
癒しの光は届いている。
それでも、傷は塞がらない。
世界が、彼女を待っている。
拒否する自由。
壊れる余地。
正しさに逆らう可能性。
箱庭は、もう決断した。
最適化を。
少女が目を覚ます前に。
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