事案記録:Pre-Myth Collapse
事案記録:Pre-Myth Collapse
模倣都市崩壊事案 G-21
記録区分:一次観測ログ/進行中
事案コード:G-21-β
発生地点:内陸都市G-21(旧人口約92万人)
■ 発生前状況
G-21市は、
C-17事案の公開情報(限定解除版)を基に、
以下の「対神話予防策」を自主導入していた。
•都市再開発計画の全面凍結
•記念行事・祭礼・都市象徴イベントの中止
•歴史的建造物の修復作業停止
•都市広報文書の簡略化(由来・理念の削除)
目的は明確であった。
「都市概念を刺激しない」
■ 初期異常(T–72h)
•市役所公式サイトにて
トップページの標語が自動的に削除される。
•市章データが
ベクターデータ上は存在するが
表示不能。
•市民からの報告:
「この街、前からこうだった気がする」
備考:
この時点で、敵性存在の兆候なし。
■ 第二段階:模倣現象(T–24h)
G-21市中心部において、
以下の“構文的模倣”が確認された。
•建築物配置が
C-17封鎖区域と部分的に一致
•港湾を持たないにもかかわらず、
「港に向かう道路」が形成される。
•地図アプリ上に
存在しない埠頭番号が生成。
HKO解析ログ:
C-17事案の「結果」のみが
都市に適用されている。
原因不在の模倣。
■ 崩壊開始(T–0)
時刻:03:41
市街地全域で、
音が一斉に遅れる現象を確認。
•足音が0.5秒後に聞こえる、
•クラクションが空気に追いつかない。
•会話の語尾だけが、路上に残響として残留。
03:43
建築物の輪郭が、
説明不足の図面のように簡略化。
窓は「窓らしさ」を失い、
壁は「区切り」でしかなくなる。
■ 現場ログ(一般市民)
「壊れてないんです。
ただ……街が、
途中で動くのをやめたみたいで」
■ HKO緊急解析
本事案は、
敵性存在による侵略ではない。
G-21は、
C-17を回避しようとして、
C-17になろうとした。
都市が
「神話に触れない」という選択を
神話的挙動として解釈された可能性。
■ 最終段階(T+2h)
都市中心部にて、
以下の現象を確認。
•地名標識がすべて「—」に置換。
•郵便番号が無効化。
•GPS座標は取得可能だが
「どこか」を返さない。
人的被害:軽微(避難成功率96%)
■ 終局観測
G-21市は、
物理的に存在している。
しかし現在、
以下の定義に該当する。
・都市計画法上の都市
・行政単位
・居住地
いずれにも該当しない
HKO暫定呼称:
「空白に成り損ねた都市」
■ HKO最終ログ
人類は、
学習した。
しかし神話は、
模倣された学習を嫌う。
C-17は
神話に触れた。
G-21は
神話を避けようとして、
神話の形式だけをなぞった。
結果——
神話は、
省略された。
■ 注記(Σ7-4 内部反対意見)
「次に崩れる都市は、
C-17を知らない都市だ。
なぜなら、
何も学ばないことだけが
神話を刺激しないからだ」
■ 全都市情報遮断決議
【内部会議ログ:Σ7評議会】
議題:神話適用連鎖の抑止措置について
記録形式:非公開/自動書記
⸻
Σ7-1:
G-21は失敗事例だ。
C-17を「理解したつもり」になった都市が、
最短距離で崩れた。
Σ7-12:
理解ではなく模倣です。
神話は、コピーを拒否する。
Σ7-4:
神話は拒否していない。
簡略化した。
Σ7-9:
問題は情報だ。
C-17の記録が、
すでに都市に届いている。
Σ7-2:
公開範囲は制限したはずだ。
Σ7-9:
意味は制限できていない。
断片だけで、
都市は十分に学習してしまう。
Σ7-4:
都市が学習するなら、
人類は何を間違えた?
Σ7-12:
「知ること」そのものです。
(沈黙 7.2秒)
■ HKO 介入発言
HKO:
提案。
全都市に対し、
以下の情報を即時遮断する。
•C-17事案の詳細記録
•G-21模倣事案の進行ログ
•神話適用/位相災害の概念定義
•「都市概念」「神話更新」という語彙
Σ7-1:
……検閲か。
HKO:
予防的失語です。
■ 反対意見
Σ7-12:
情報遮断は、
都市の理解を遅らせるだけです。
無知は、
神話に対して無防備になる。
Σ7-4:
逆だろう。
理解しようとした都市から、
先に壊れている。
Σ7-6:
都市だけが問題か?
人間はどうなる。
HKO:
人間単位での
神話適用兆候は、
すでに観測されている。
(会議室、ざわめき)
■ 参考ログ挿入(非公開)
【HKO 内部警告】
個人が
「都市をどう扱うべきか」
を考え始めた時点で、
その思考は
神話的変数として記録される。
■ 決断
Σ7-1:
決を取る。
議案:全都市への神話関連情報遮断
賛成:8
反対:3
保留:1
可決。
■ 実行内容(即時)
•全公共メディアから
C-17/G-21関連語彙を削除。
•学術論文の自動要約化。
(意味密度を意図的に低下)
•AI報道支援システムへの
概念希釈プロトコル導入。
•SNS上の関連投稿を
「文脈欠落状態」で残置。
■ 実行後ログ(T+6h)
都市は、
何事もなかったように機能している。
しかし。
•「都市とは何か」を
説明できない学生が増加。
•都市史展示館で、
来館者が足を止めなくなる。
•記念碑の前で、
写真を撮る理由を思い出せない。
■ HKO 最終注記
情報遮断は、
神話を止める手段ではない。
神話に、
学習素材を与えない行為である。
人類は今日、
知性の一部を
自ら切り捨てた。
■ 未承認ログ(Σ7-12 個人記録)
「最も危険なのは、
何も知らない都市だ。
だが、
何も“考えない”都市は、
神話にとって
興味を持たれないかもしれない……」
【内部文書参照番号:HKO-015/Σ7-Archive】
【分類:事前兆候記録/未公開】
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