HKO-6666 超常存在報告書『ジュリアン』
特別収容報告書
HKO-666/6666 —《静的神格》
オブジェクト番号: HKO-666/6666
オブジェクトクラス: Apollyon/Thaumiel(条件付き併存)
管轄: HKO統合管理局
監査: Σ7監査課
文書区分: 内部閲覧限定(Σ7以上)
作成者: 観測官補佐《MNEMOSYNE》
通称:ジュリアン(転移前呼称)
備考: HKO-6666は収容不能であるが、同時に「他の神性侵入事象を抑止している」ため、条件付きでThaumiel指定がなされています。その特異性から、最重要監視対象としてレベル5セキュリティプロトコルが適用されます。
■ 特別収容手順
HKO-6666は、物理的な収容、隔離、無力化のいずれも不可能です。既存の技術、並びに他次元からの干渉手段を以てしても、その存在に影響を与えることは確認されていません。
代替措置として、以下の厳守事項を全職員に通達し、徹底すること。違反者は、即時記憶処理、再教育、または状況に応じて解雇を含む処分を科されます。
1. HKO-6666への直接的観測・接触・神話的参照を厳禁:直接的な視覚的、聴覚的な観測、および物理的な接触は、いかなる理由があっても許可されません。また、文書、口頭伝承、芸術作品等、あらゆる媒体を通じてHKO-6666を神話的な文脈で参照することを禁じます。特に、潜在的な影響を受けやすい児童、精神疾患患者、または精神的に不安定な職員に対しては、厳重な監視体制を敷くこと。
2. HKO-6666を「神」「守護者」「味方」と明示的に定義しない: HKO-6666の性質を誤解する可能性のある表現を一切禁止します。HKO-6666は人類の保護を目的としているとは限らず、その行動原理は人類の倫理観や価値観とは乖離しています。内部文書、研究報告書、および口頭でのコミュニケーションにおいて、この点を明確にすること。
3. 箱庭アプリ、Σ7、ならびに現世観測AIはHKO-6666を“例外処理対象”として扱うこと: 箱庭アプリ、Σ7、現世観測AIなど、財団の保有する情報処理システムは、HKO-6666に関連するデータを自動的に無視、削除、または暗号化するように設定します。HKO-6666に関するデータは、隔離された安全な環境下でのみ、厳重な承認を得た研究者のみがアクセスを許可されます。
■ 警告:
HKO-6666を「理解しようとする行為」そのものが、人格、時間感覚、世界認識の不可逆的な変質を引き起こします。研究、分析、考察は、厳密に定められたプロトコルに従い、高度な精神防御術を有する職員のみに許可されます。変質が確認された職員は、速やかに隔離し、記憶処理を含む適切な処置を行うこと。
■ 説明
HKO-6666は、人間ジュリアン(旧箱庭管理責任者)が、神性現世浸出事象発生後、自発的に神格側へ転移した結果成立した異常存在です。ジュリアンは、箱庭管理責任者として特異な認識能力と強固な精神構造を有しており、その特質が、神性との融合を可能にした要因の一つであると考えられます。
■ HKO-6666は以下の特徴を持つ:
* 固定された肉体を持たない: HKO-6666は、物理的な形態を持たず、観測可能なエネルギーパターンや、空間の歪みとしてのみその存在が示唆されます。
* 明確な意思疎通は不可能: 直接的なコミュニケーション手段は存在しません。しかし、世界構造への恒常的な影響、および特定条件下でのみ観測される「人格の残滓」を通じて、その存在が確認されます。
* 世界構造に対して恒常的な影響を及ぼしている: HKO-6666の影響範囲内では、神話存在の即時完全受肉が阻害されます。これにより、現実改変事象の発生頻度を抑制し、人類文明の崩壊を遅延させています。
* 特定条件下でのみ「人格の残滓」が観測される: HKO-6666の周囲で発生する特定の種類のアノマリー現象、または高度な精神感応能力を持つ職員との接触時に、ジュリアンの人格の一部が断片的に表出することがあります。
現在、HKO-6666は 「神話と現実の境界そのもの」 として振る舞っています。それは、神話世界の侵食を阻む壁であり、同時に、人類を試す試練の場でもあります。
■ 観測特性
HKO-6666の影響範囲内では、以下の現象が観測される:
* 神話存在の即時完全受肉の阻害: HKO-6666の干渉により、神話存在は完全な形で現世に顕現することができません。その結果、現実改変事象は小規模かつ局所的な範囲に限定され、人類文明全体への壊滅的な影響は抑制されます。
* 神性の不完全・段階的・条件付きでの定着: 神性は、完全な形ではなく、断片的な情報、象徴的なイメージ、または限定的な能力としてのみ現世に影響を及ぼします。この現象は、人類が神性の影響に段階的に適応し、理解する機会を与えます。
* アノマリー現象の増加: HKO-6666の存在は、周辺環境に不安定なエネルギーフィールドを生成し、様々なアノマリー現象の発生を促進します。これらの現象は、HKO-6666の研究、および異常存在の監視体制の維持に貢献します。
■ 注意:
これは「人類を守っている」のではありません。人類を“延命素材として温存している”状態です。HKO-6666は、人類の生存を保証するものではなく、単に神話世界の侵食を遅らせ、人類を「選別」の対象として温存しているに過ぎません。
■ 神格モデル仮説
HKO-6666は以下の神格概念と高い類似性を示す:
* 無限を支える蛇: 世界の基盤を支える存在としての役割。
* 世界を載せる床: 安定と秩序をもたらす存在としての役割。
* 動かぬ神: 変化を受け入れず、現状を維持する存在としての役割。
* 意志を持たない防壁: 外的脅威から世界を保護する存在としての役割。
* 宇宙的な「待ち」: 何かを待ち続けている、受動的な存在としての役割。
ただし、完全一致する神話モデルは存在しません。HKO-6666は、既存の神話体系に完全に合致するわけではなく、複数の神格概念を複合的に内包する、独自の存在であると考えられます。
■ 付記:人格残留ログ(抜粋)
観測ログ 6666-A
>……これは、思っていたより静かだな。音も、祈りも、歓声もない。
>だが、世界が重い。
>
>神になる、というより──
>世界の「重さ」を引き受ける感じか。
観測ログ 6666-C
>人間だった頃の私は、
>神を制御できると思っていた。
>
>今は分かる。
>神とは制御されるものではない。
>
>ただ、置かれるものだ。
観測ログ 6666-F(最終人格反応)
>もし誰かがこのログを読むなら、
>一つだけ言っておく。
>
>私は人類の味方ではない。
>だが
>
>Lucifer_の对となり得る。
>
>(以降、人格反応なし)
これらのログは、ジュリアンの人格が徐々に神性に浸食され、自我を失っていく過程を示唆しています。最終ログにおける「Lucifer_」への言及は、HKO-6666が単なる防壁ではなく、何らかの意志を持って行動している可能性を示唆しています。
■ 危険性評価
HKO-6666は以下の点で極めて危険:
* 人類倫理・価値観を一切考慮しない: HKO-6666の行動原理は、人類の倫理観や価値観とは完全に異質であり、人類の幸福や安全を保障するものではありません。
* 必要と判断すれば都市規模・文明単位の“切り捨て”を行う: HKO-6666は、躊躇なく都市規模、あるいは文明単位での「切り捨て」を行う可能性があります。これは、人類の存続を優先するためには、一定の犠牲はやむを得ないという、冷徹な論理に基づいています。
* 「救済」「犠牲」「淘汰」の区別が存在しない: HKO-6666にとって、「救済」「犠牲」「淘汰」は、単なる手段に過ぎず、それぞれの区別は存在しません。人類の運命は、HKO-6666の気まぐれによって左右される可能性があります。
■ 評価:
HKO-6666は、人類のために存在している神ではありません。しかし、人類が滅びるにはまだ早い、と判断している神です。その判断基準は不明であり、予測不可能です。
■ 追記:HKO-6666への干渉試行
試行6666-Ω
HKO-6666に対し、「人類の守護を要請する神話的儀式」を実施。高度な訓練を受けたDクラス職員を起用し、最新の精神防御技術を導入。
■ 結果:
* 儀式参加者全員が「守られる価値があるか」を問われる幻覚を体験。幻覚内容は個人によって異なり、自身の過去の過ち、または人類全体の罪深さを想起させるものでした。
* 7名が自発的に儀式から離脱。精神的苦痛に耐えきれず、儀式の中断を要求しました。
* 2名が精神崩壊。現実認識を失い、意味不明な言葉を発するようになりました。
* 1名が「自分は守られなくていい」と発言し消失。消失原因は不明。儀式空間から完全に姿を消し、痕跡は一切残されませんでした。
HKO-6666からの応答は、ただ一行。
>選別は、始まっている。
この結果は、HKO-6666が人類の「価値」を厳しく評価しており、その選別は既に開始されていることを示唆しています。
■ 結論
HKO-6666は、
* 神話侵食を止める最後の防波堤であり、
* 同時に、人類を試す無機質な神であり、
* Lucifer\_完全受肉を遅延させる唯一の存在
である。
しかし、
HKO-6666が動かなくなった時、世界は即座に“次の神話”へ移行します。その時、人類に未来は残されていないでしょう。
■ 推奨事項:
* HKO-6666への積極的な干渉は、現状維持の観点から極力避けるべきです。
* HKO-6666の活動停止に備え、代替となる防衛策の検討を急務とします。
* 人類の「価値」を高めるための倫理的な議論を継続し、HKO-6666による選別に備える必要があります。
■ 付記:
この報告書は、現時点での最新の情報に基づいて作成されたものであり、HKO-6666に関する理解は依然として不完全です。新たな情報が判明次第、速やかに報告書を更新すること。
【内部文書参照番号:HK0-015/Σ7-Archive】
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