スペクルム ” 印を持つ者と7人の魔導師達”
31面
穏やかな陽射しの中、千年前からこの城にある桜の木の下で二人は微笑みあっていた、この国の王子の婚約者が決まった。
一方双子の王女達は
「婚約!結婚!!」
絶対イヤだと駄々を捏ねて反抗した、しかも家出までして……王女が家出なんて前代未聞!!城は上を下への大騒ぎになった、日頃大人しいと思われていただけに大事件であった。
さいわい城外に出ておらず本人達は隠れんぼぐらいの感覚だったようだが、本人達の激しい抵抗の末今回の顔合わせは延期になった。
「せめて五、六年先にして頂けませんか、お父様。でなければ今度は城外に出ますは」
しれっと大胆なことを言う、陛下もこの双子には甘く二人の意見を渋々聞き入れる事とした。
彼方にこの度の顔合わせは見合わせて欲しいと断りの手紙とお詫びの品物を贈ると同時に顔合わせを五、六年先にして欲しいと国書も添えて出された。
ただ西と南の国からは必ず双子のどちらかと婚約を結ばせるようにと強制的に約束させられた。
「ね!上手くいったでしょ」
ソニアが自信満々の顔で腕組みをして鼻を鳴らす。
「お姉様、品が無いは」
二人は、口元を小さな手で覆いクスクスと笑った。
周りには大人しい姉妹と思われているようだが実はお転婆な所があって、木登りや水遊びは大好きで最近では隠れんぼにハマっている。
特にに隠し扉を見つけてからは毎日お昼寝の時間が楽しみであった。
それともう一つ、二人は魔法が使えることに最近気が付いた。
いつものように城の中を探検している時だった。
「今日は、あの扉の向こうを探検しましょう」
そう、図書室で本を探している時に偶然見つけたあの扉だ。
「私達は身体が小さいからきっと中に入れるは」
「決行はお昼寝の時ね!」
侍女に今日はとても眠いから起きてくるまで起こさないでと念を押して寝たふりをし、クマのぬいぐるみをを布団に入れアリバイ工作もバッチリである。
「お姉様完璧だは!」
「うふ、天才」
そして隣の部屋の隠し通路から図書室に向かった。
「確かこの辺だったはずよ……」
「あったわ!」
二人は本棚から本を出した、一冊一冊丁寧に、なにせ一冊が大きくて重い
「何なのこの本、無駄に大きいは」
本をどけた奥に小さな扉が一つしゃがんで四つん這いになってその扉をそっと押してみた。
ギギギィっと音を立てて扉が開いた、湿気を含んだ重たく冷たい空気がそこにあった、思わず身震いして入るのを躊躇った《ためらった》。
「大丈夫?私が先に行こうか?」
マリールの小さな手がソニアの背中をトントンと優しく叩いた。
「大丈夫よ、ちょっと空気が冷たくてびっくりしただけよ」
小さく頷き(うなずき)後をついて行った。
灯りもなく真っ暗で目も慣れない、まさに漆黒の闇だ。
壁つたいにゆっくり歩いてみる、天井はある程度の高さがありそうだった、すると急に足下に何も無いことに気が付いた、あっと思った時にはもう遅く落ちる!!
思わず叫んだ!
「キャー……」目をギュッとした。
マリールはソニアに手を伸ばしたがつかみ損ねたと思ったがマリールの指先には火が灯り周りを照らした。 ソニアの身体は中に浮いたようにふわふわしている、何がおこているのか二人には理解し難かった。
「な、何これ……」
「魔法使いみたい、私達」
この時初めて自分たちは容姿だけでなく不思議な力を持っている事に気が付いた。
その日はこのことに興奮して探検どころではなくなった、急いで引き返しベッドのクマと交代して布団に潜り込んだのだった。
魔法が使えたのは双子の王女だけではなかった、ほぼ同時期に生まれた王子二人もまたそうだった。
32面
「今日こそはあの先を見に行きましょ!」
そう、双子の王女は昨日の続きをしに今日も行こうとお昼寝の時間を待った。
扉を開け真っ暗な闇の中へ。
昨日したように指先をじっと見つめた。
灯りよつけ。
「うぅ〜ん」
「力入れてもダメじゃない?」
「じゃーどうすればいいの?」
ソニアは気持ちを落ち着かせ自分が空に浮くイメージを頭の中で想像してみた、すると……ゆっくりフワーッと足が浮いた。
「マリール、私浮いてるの見てみて」
「え!!暗くて見えない」
「気持ちを落ち着かせて、イメージするの指先に集中して」
マリールも集中してみたゆっくり深呼吸して指先に気持ちを集中したる、すると……マリーヌの指先に小さな灯がともったぼんやりと薄くだが確かに灯った。
マリールは指先にもっと集中した、灯った灯りはハッキリとそしてしっかりと明るくなった。
「お姉様!見て!」
「うん、凄いは」
「お姉様も凄いは、浮いてる!!」
二人はマリールの灯りを頼りにゆっくり階段を降りていった。
通路に従って歩いて行った、どれくらい歩いていっただろうか少し先の方がうっすら明るくなっているのに気が付いた。
「見て!あっち明るくなってる」
「本当だ」 二人は顔を見合わせ頷き走った。
明るさに目が眩んだ、目が明るさになれ視界が広がった。
目の前に広がったのは森だ!!
「ここ……どこかな?お姉様」
「ど、どこだろう?」
二人は、周りを見渡し、 自分たちの背後には城壁が延びている事を確認しここが城外であると確信した。
「マリーヌ、これは私達の城よ」
「という事は城外に出たってことよねお姉様」
「うん」
ソニアは大きく頷いた。
今までに見たことのない景色に二人の心臓は騒がしかった、瞳の中に星があるかのようにキラキラしていて少し興奮ぎみだ。
マリールは森に向かって少しずつ歩いて行こうとした、ソニアが腕を引っ張って留めた。
振り返ったマリールは口を尖らせ不服な顔をする。
「どうして止めるの?」
「今日はやめておきましょう、もうかなり時間が経ってるは戻らないと抜け出したのが分かったらもう来れなくなるは」
冷静になって考え、少し考え。
「そうね、うん」
マリールは自分に言い聞かすように頷き後ろ髪を引かれる思いでその場を後にした。
急いで帰った後二人はこの先どうすれば少しでも長い時間城外に出る事ができるか頭をフル回転させたのだ。
「今までと同じようにお昼寝の時間だけでは足りない」
「お兄様に相談してみようかしら?」
「だ、ダメよ!」
「でも他に方法はないは」
「お父様は、絶対に許可しない、お母様もよ」
何日か考えた末に兄のアレクサンドに話すこととした。
33面
東の国 イージス
北の別荘で隠されて生きる事を余儀なくされた、瞳と髪色はこの国には無いものだったから。ジョルゼンとマルコエル、二人の側近は王子の周りで起こる不思議な事を王に知らせを出す事とした。
「よし、ノエル行っておいで」
コンコン窓を叩く音がした。ノエルだ
「おや、何事かな?」
ノエルの足に付けられた手紙を読んだ。
「こ、これは!」
「セシウス、北の別荘ホウブルへ行く、明日だ」
「これはまた随分急な話ですね」
この国の宰相である側近のセシウスはこの事態が唯ならぬ事だと思いながらも不安な様子だ。
「まぁそう言うな、夏まで待てないのだ」
「何か良い知らせでも?」
「まだハッキリしないがきっと良い兆しだ」
「テシウス様……テシウス様?」
返事がない。
「失礼します」
部屋はもぬけの空だ!!
部屋中探したがどこにも居ない、この王子もまた自由人だ思い立ったらすぐ行動にしたしまう。
手を額に当てて天を仰ぎ大きなため息を吐く。
「ははは、やられたな」
「笑ごとじゃないぞ、明日陛下がこちらにいらっしゃるその時いないでは済まされない、首が飛ぶぞ」
「まったくテシウス様には驚かされる事ばかりだな」
「王子自身にはこの事がわかっているんだろうか?」
「陛下が来たら分かるよ」
「とりあえず探そう」
フィヨルドでは......
「お兄様お願い私達のお願いを聞いて欲しいの」
「言いたい事はわかったが、二人だけで行かせられると思うか?」
「そこを何とか」
「無理だ!」
「即答ね」
「当たり前だ、そんな可哀想な顔をしもダメだからな」
ソニアとマリールは兄であるアレクサンドに城の探検する間の時間稼ぎをして欲しいと頼んでいた、無理なのは承知していたがそこを何とかと懇願しているのである。
アレクサンドはこの双子の願いをどうしたものかと頭を悩ませていたが
「僕が一緒に行くなら許可できる、何とか他の者も誤魔化しができるが……二人だけではやっぱりダメだよ危険だからね」
二人は兄の申し出に渋々了解した。
こうして兄と共に三人で城の抜け道を通って城外に出る事にした、だけどここで一つ、二人が魔法を使える事を兄に話さなければならない。
「お兄様、一つ説明しなくてはいけない事があるの」
二人は顔を見合わせて頷いた。
「私達ね、ま、魔法が使えるの」
「信じてもらえないかもしれないけど本当よ!」
兄は一瞬戸惑った顔をしていたがニコッと笑って一言
「うん、わかってるよ、陛下に聞いた事があるんだ、二人の瞳の色と髪の色には理由があるって」
「じゃあお兄様は知っていたの?」
「僕だけじゃないよ、父上も母上も知ってるよ」
二人は安心した、何故ならこんな訳もわからない事を言って両親が私達のことを嫌いになったらどうしようかと思っていたからだ、まだまだ子供の考えだ。
そして兄と一緒に城の外へ向かった。
34面
三人は抜け道を通って城外に。
「こんな道があったんだな?」
「うん、この抜け道は何でしょうか?お兄様わかりますか?」
「ああ、多分国に何かあった時に私達王族が避難するための道じゃないかな」
「何かって?何?」
「それは、内乱や他国からの侵入による戦争だったり色々だよ」
「戦争!!戦争が起こるの?」
「仮の話だよ!そんな事はないから大丈夫だよ」
戦争と聞いて不安がよぎっった、訳もわからずとても不安になった。今までに感じたことの無い不安だった。
「お兄様、どうやって誤魔化したの?」
「簡単だよ、図書室で二人の勉強を見るって言った、夕食の頃に食堂に行くから呼びに来なくていいって言ってあるから時間は充分あるよ、但し、日が沈むのはまだ早いから暗くなる前に絶対帰るよ! 約束だからね」
「ええ、わかった」
城外に出た三人は眼前に広がる森を見て胸が高鳴っていた。なんて綺麗なんだ、木漏れ日が差し込む様はまるで絵画のようだった。
「僕が先に行くから後から着いておいで、はぐれないようにね」
三人は光に向かって森へと足をはこんでいく、森は不思議なことに空気が澄んでいた、まるで何かに浄化されているような……嫌な感じはまるで無くむしろ心が落ち着く場所だった。
アレクサンドは道に迷わないよう木に印を付けながら前へ前へと進む、程なく進むと水の音が聞こえてきた、そして目の前が明るくなり森から抜けた。
「川だ!!」
川に沿って道が続く、登りと下り……
「お兄様、どちらに進みます?」
二人の問いかけにアレクサンドは少しの間考えた。
この川に橋は架かっているだろうか? 上流に行くほど川幅は狭くなっているはずだが……
「この川を渡りたいのか?」
二人に問うてみた、答えは分かりきっていたが予想通り ”できれば渡りたい” ほぼ同時に帰ってきた答えだった。
だがこれを聞き入れる訳には行かない、もし橋が架かっていたとしても多分川の向こうは東の国イージス! 国交が無い国だ、万が一兵に見つかれば国際問題に発展する、下手をすれば戦争だ自分の立場を考えねば。
「今日はここまでだ、あちらは他国になる筈だ、これがどう言う事か分かるだろ?」
二人は聡い子だ、これが何を意味するか理解したようだ。
実は僕自身もあちらには行ってみたい国交が無いのは何故なんだろうか?昔からないのだろうか?あったものが無くなったのだろうか?
色々思いを巡らせながら三人は城へと帰った。
ノエルからの連絡を受け国王は北の別荘ホウブルに向かった。
前日王子を探していた二人は城外に出ていく王子を見つけ慌てて連れ戻した。
「どちらに行くおつもりですか?陛下がこちらに向かっております明日こちらに来られますから城でお待ちくださいませ」
「父上が来るのですか?」
「ええ、そうです」
「夏にはまだ早いのに、何かあったの?」
「陛下が来ればその時に……」
二人は少し言葉を濁した。
35面
馬の嗎が聞こえた。
「テシウス様陛下が到着されました、執務室へ」
「父上!」
「おお元気だったか少し見ない間にまた背が伸びたようだな」
「はい、父上もお変わりなく」
「人払いを」
侍従達を下がらせ国王は眉間に皺を寄せジョルゼンとマルコエルに手紙の内容について聞き始めた。
テシウスは部屋の温度が下がった気がした、これはまずい状況ではないだろうか?城の外に出ているのがバレたのだろうか?告げ口されるのか?
「陛下、ここ数年の事なのですが……」
ジョルゼンとマルコエルは王子がこの北の別荘に来てからの不思議な出来事について話した、テシウス自身はその事にまるっきり気が付いてなく城を抜け出している事を告げ口されなくて良かったとホッとした。
もしかして魔法が使える事とこの事が何か関係しているのかも知れないとテシウスは考えた、夏にこちらに来た時に父上に話しつもりだったのでそれが早くなっただけだと思い今ここで話す事にした、二人は信用できるし……
「父上、見ていただき事があるのです」
「物ではなく、事なのか?」
「はい」
そう言ってテシウスは指先に小さな炎を灯して見せた。
「テ、テシウス、それはどう言う事だ!!」
「はい、これは魔法です。先ほどジョルゼン達が言っていた事と私が魔法を使える事と何か関係があると思います」
「炎だけではありません水も扱えるんですよ、練習すれば他にの使えるようになるかも知れません」
予想にもしていなかった出来事に国王は混乱していた、今まで魔法なんて信じていなかった自分たちの祖先にもこんな事はあったことがなく国の歴史書にもそのような記述は無かった筈だ。
もしかしたら、この子の瞳の色と髪の色に関係しているのか?そうだとしたら、何故長い歴史の中で今まで産まれなかったのか、何故今なのか?考えても仕方ないことだったが調べない訳にはいかないな。
「ジョルゼン、マルコエルこの事は私が調べる、二人はテシウスを頼む」
「かしこまりました」
「また変わった事があればノエルを飛ばしてくれ、今日はここに泊まって明日帰る」
コーライズに帰ったイクシス達は空白の時期について調べていた。
「南のサジュアルを除いて三国が共通して空白なのは今から四、五年前だね」
「四、五年前といったら印を持った双子の王女が産まれた頃だ」
「もしかして他の国にも印を持った子供が産まれてるのかな?」
「単純に考えたらそうかもしれない……」
部屋のテーブルの上で淡く光る物がある。その光はだんだんと強くなりスペクルムはガタガタと音を立てて揺れ始めた。
みんなが一斉にそれ(スペクルム)に目をやった。
「見てスペクルムが光ってる!」
七人は覗き込んだ、映し出されたものは幼い双子の女の子と同じぐらいの男の子だ、三人は木々に囲まれた中で楽しそうに笑っといる。
「もしかして女の子二人はフィヨルドの双子の王女かな?この男の子は誰だろう?」
「着ている物からすると貴族だな。上等な代物だ」
「これは森かな?どこだろう?」
「ちょっと待って!この男の子……印を持った子だ!」
36面
ソニアとマリールは先日行った森に来ていた、二人だけで……どうしてもあの先が気になって仕方なかった、恐怖よりも好奇心が勝ったのだ。
そしてもう一人、好奇心旺盛な王子がここに……
確か橋が架かってた、自由に渡れた門はもちろん兵士もいなかった。
あの先に行きたい思いが好奇心が不安よりも強く王子を動かしたのだ。
周りを注意深く見渡して一気に橋を渡った、素早く森に隠れ、木々に身を隠しながら川に沿って下ってみる。
双子も川に沿って上流に向かっていた。
「お姉様、図書館で見た地図にはこの先に橋が架っていましたは、そこまで行ってみましょう」
「マリール木の影に隠れながら進みましょう、目立たない様に」
少しずつ近付いて来る足音と草を踏む音が三人の耳に入って来た。
足音がする……三人は息を止めた心臓の音が早く自分の音だけがやたらと大きく聞こえる、ギュッと握った手にはじんわりと汗が滲んでいた、初めて怖いと思った好奇心よりも。
二人の周りが光に照らされて明るくなっていった、それは王子の方もそうだった。
光に照らされていく先を見た、ゆっくりと顔を上げて。
目の前に一人の男の子が立っている、そして女の子が……マリールは恐怖で姉の後ろに隠れた。
男の子とソニアの目が合った。
瞬間、心臓が口から飛び出すのではないかと……息をするのも忘れるくらい二人は見つめ合った。
「お姉様……」
ソニアに聞こえるか聞こえないかわからない小さな声でマリールは姉を呼んだ。
返事がない、恐る恐る顔を上げたマリールは姉の肩口から顔を出した。
「っあ!!」
声にならない声で三人は驚いて思わず叫んだ!!
「ああああああぁ〜」
三人の声がこだました瞬間三人とも口を押さえた。
マズイ!!ヤバい!! 思わず身を屈め(かがめ)目を瞑る(つぶる) 三人を照らしていた光はスッと消え闇が広がった。
そっと目を開きその光景を見た彼らは自分達が全く同じ事が出来るのだと気が付いた。
「ねぇ〜あの子は私達と同じ様に魔法が使えるのかしら?」
テシウスもまた彼女達と同じことを考えていた。
僕と同じ人か? ゆっくりと顔を上げ立ち上がったテシウスは彼女達に近付いて行った。
「こっちに来る!どうしよう!」
マリール慌ててソニアの腕にしがみついた。
「大丈夫よ」
「その自信どこからくるの?」
「こんにちは、僕はテシウスって言うんだ怖がらないで、何もしないよ」
「こんにちは、私はソニア、そして妹のマリールよ」
自分達以外でこの瞳と髪色をした人に会ったのは初めてだった、そして泣きぼくろが愛らしいソニアと鼻筋の通った凛々しい顔のテシウスが初めて逢った瞬間だった。
テシウスもソニアもこの時何故か運命のようなものを感じた、きっとこの人と結婚するんだわ、と......
それから三人は時々森の中で遊ぶ様になった。
その光景を映し出したのがイクシス達のスペクルムである。
この子達に会いに行かなくてはいけないと直感した、それは七人とも同じ考えだった。
37面
「この風景に見覚えがあるんだ……何処だったかな?」
微かに聴こえてくる水の音、森。
「そうだ!あそこだ! あの扉の鍵を出した、ほらあそこだよ!」
「川に迫り出した崖の所か?朝日が照らす」
「あそこまでいく途中の森だよ」
「行ってみる森へ。先ずは僕一人で」
イクシスは早々に森へ出発した。コーライズを出て森に......川まで出たら上流に向かって歩き始めた。
耳を澄ましゆっくりと……景色を確認しながら、次に来る時に移動できるように。
「見て!私にも出来たは」
ソニアは指先に灯した炎を二人に見せた。
「さすがソニア、私もソニアのように浮くかしら」
「ええ!イメージよ空に浮くイメージを持って」
少しずつ足が地面から離れる感覚があった。
マリールが驚かないよう小さな声でソニアが言った「大丈夫よ浮いてるわ」
思わず三人は興奮して声を出していた、思った以上に大きかったようだ。
声が聞こえる! イクシスは声のする方に向かって行った、姿を消して。
木の陰から三人の様子を見ていた楽しそうに会話する姿が愛らしい。
「魔法が使えるのか、研鑽を積めばもっと使えるようになるな」
イクシスは姿を出して子供達に近づいていった。
「誰だ!!」
「あっ!」
まだ魔法がうまく使えない三人は咄嗟の時に思う魔法が出ない、炎を出したかったのに出たのは水だった。
「キャ!!」
勢いよく出た水を三人は頭から被ってしまった。
「ははははははは」
思わず笑ったイクシスを三人は睨みつける。
「笑うな!」
「笑はないで!」
「ごめんごめん、笑うつもりはなかったんだけど、三人は魔法が使えるんだね」
顔を見合わせた三人は、この事が他の人にバレる事、何よりこの容姿が他人にバレる事を良しとしない事をよく分かっていた。
どうしよう…… テシウスは二人を隠すように目前に出た。
「誰だよお前!」
イクシスは自分も同じだと見せるように姿を現した本当の姿を。
虹の瞳と黄金の髪印を持った姿を。
「え!!」
驚きの顔と何処か焦ったような顔をした三人の口はパクパクしていた。
「同じなの 私達と……」
イクシスは頷きニコリと笑ったそして、
「そうだよ、君達も魔法を使えるんだね、そうだ忘れるところだった、まずその濡れた身体を乾かさないとね」
そう言うとイクシスはチャチャっと風を起こし三人の濡れた身体を乾かした。
あっという間に乾いた服や髪。
三人はお互いを指差しまたも口をパクパクさせながら慌てた。
イクシスは大声で笑っている。涙を流しながら……
「まれで魚のようだ」
見るみるうちに膨れっ面になった三人はその場に座れこんだ。
38面
ブツブツと何やら三人は文句を言っているようだ。
イクシスは三人にある提案をした、その提案を聞いて三人の表情は笑顔へと変わっていった。
「本当に!!」
「ああ、本当だ」
子供という生き物はなんと現金な奴らなんだ、さっきもで不平不満を口々に漏らしていたのに、あんなにあっさりと変われるものなんだなと感心しきりである。
それから、イクシスは魔法の使い方を三人に教えた、数ヶ月過ぎた頃イクシスは三人にお願いする事にした。
「ところで君達は何処の子供かな?そこの女の子は双子で合ってるよね?男の子は……ここにいるって事は北の国の子で間違いないかな?」
三人は黙った、いつか聴かれるとは思っていた。
本当のことを言うかそれとも嘘をつくか。
確か、フィヨルドには双子の王女がいた筈だ、もしかしてこの双子はその王女か?では、この男の子は何処の子だろうか?印持ちの王子の話など聞いたことも無いが。
ソニアが何か言おうとしたのを遮ってイクシスが話し始めた。
「そこの双子ちゃんはフィヨルドの双子の王女で間違いない?そっちの男の子は 同じ北の人かな?……」
え!! 王女だったのか? テシウスは驚きを隠せなかった。
この驚いた顔は何を意味してるんだ……もしかして……
「もしかしてなんだけど、君は北の子供ではないのかな?もしかしてだけど東の子供なのか?」
どうしよう、黙っていてもいいのかな……でも、この人も、二人も悪い人じゃないのはわかるが信用しても大丈夫だろうか?言っても大丈夫だよな。
テシウスは考えた、頭はフル回転だ自分の立場を考えた、黙っていて貰えればこの事が東の国内に露呈することはないだろう。
意を決して話す事にした。
「僕は東の国イージスの第一王子です、ですが、この容姿の人は国には誰一人いません国王である父と王妃である母とも容姿が何一つ似てなくて……僕は亡くなった者として公にされていません」
「第一王子なのか?」
「うん」
「そうか、東にもいたんだな印持ちの人が、フィヨルドはどう?君たち以外にはいるのかな?」
「私たちの国にも二人だけです、兄がいるけど兄は普通です」
「実は、双子ちゃんにお願いがあるんだ。いや違うな三人にだ」
きょとんとした瞳で三人に見つめられた。
可愛いい……虹色の瞳には破壊力が半端ない。
イクシスは思わず手を合わせて呟いた……眼福!
「おっほん、いや他でもないんだが王女様王子様、国王陛下に謁見したいのです取り計らって貰えませんか?」
三人はどうしようかと悩んだ。だってこの事は誰にも言っていない父上に合わせると言うことは今までの事を話さなくてはいけないのだ。
「何か不都合があるのかな?」
「私たちがお城の外に出でいることは内緒なのだからこの事が父上にバレたらもう外に出して貰えないはキット。でもお兄様から言ってもれえればもしかしたら出来るかも……しれない」
二人ともしょげてしまった。
もしダメだったらもう魔法を教えて貰えなくなることが嫌だった二人にとってそれはとても楽しい時間だったから。
「大丈夫だよ僕が責任を持って国王陛下にお願いするよ、これからも同じように教えられるように」
「本当に!」
「ああ」
安心したのかちっちゃな涙が目尻に光った。
一方のテシウスは。
「僕は元々この国に存在しない事になってるから、北の別荘でずっと隠されてるんだ、父上に連絡できるからこちらに来てもらうように言ってみるよ」
「君達はとても賢いがまだ子供だ、大人の私達が良い方向に導いていくよ」
イクシスは小さなスペクルムをお互いに渡した。
「これは僕と君達の通信手段だよ、覗いてごらんそして僕の名前を呼んで」
「あ!!すごい!いくシスが映ってる」
「これで話が出来る、連絡を待ってるから」
思わぬ形でフィヨルドの城内に入れるかもしれない事に胸が躍った。そしてイージスにも。
大きく動き出しそうな予感がしているが少し胸騒ぎもする気持ちを持ってコーライズに帰っていった。
39面
「おかえり、イクシス姫様達の上達具合はどうかな?」
「三人共飲み込みが早いよ、それと国王への謁見が叶いそうだよ、提案を受け入れてくれたおかげで信頼も得たからね、もう少し時間をかけたほうが良かったのかもしれないけど、三人共躊躇していたから少し焦ったよ、まさか内緒で城外に出てきていたとは今までよくバレなかったよ」
「自分の立場をよくわかってるように見えて抜けてるな、まだまだ子供だその辺は」
「ああ本当にね!でもこれで我々の方も進展が望めそうだ、自分達だけでは謁見はとても無理だっただろうからな、あとは返事を待つだけだ、知りたいことへの足掛かりのなれば理想的だよ」
白い絹の上質な衣、髪は黄金よりもシルバーゴルドの色、瞳は変わらず虹色だ
この地に辿り着いてどれほどの時が経っただろう。
「どうしてだろうか、私は……いつ……この身は滅びるのか?」
彼等と別れてもうすぐ三週間、イクシスはスペクルムからの声を待ち続けていた。
「そろそろ三週間になるな」
もう一つ調べていたコーライズ創成者の一人、スノーク。
彼がこのコーライズを去ってからの足取りが全くわからずにいた、雪の森の爺さんの所にも、この国にも全ての書物に彼に関しての記述は何も無かった、移時日記にさえも……
たった一人の人間の事ましてや一千年前の大陸はようやく四つの大国ができ始めたところだった不安定な状況だった、何の痕跡も残さず消える事は容易だっただろう。
「ノエルおいで、父上に手紙を届けてくれ」
”父上へ魔法の事で話したい事があります近いうちにこちらに来て頂きたいです”
窓を叩くノエルに気付いた国王……
「魔法の事? テシウスからの手紙は始めてだ、近いうちに行くか……」
国王は王子の髪、瞳について調べさせた、自国だけでなく他国にもこの印を持った子がいる事がわかっが詳しい事が全くわからない。このイージス国は他国との国交が全く無い、海、山、豊富な資源のあるこの国は自国だけで豊かだ他の国に依存する事をしなくても。
だがこれからは他国の文化や歴史を知る事は王子にとってもよい結果をもたらすかも知れない。
「明後日 ホウブルに行く、準備しておいてくれ」
「かしこまりました」
「ジョルゼン、マルコエル父上が近々こちらに来ると思うよろしく頼む」
「ノエルを……」
「うん、どうしても話したい事があって」
「かしこまりました」
「ご自分から陛下に連絡されるとは」
「よほど何かがあったのだろう」
ソニア達は上手く話せただろうか?いつも決まった時間に約束をしてたからなそれ以外での連絡手段を決めていなかった、こんな時のために連絡手段を決めておくべきだったか。
二人はこれまでの経緯を話すべきか悩んでいた。勝手に城外に出ていたこと東の国の王子と三人で逢っていたことは勿論のこと自分達と同じ印を持った者が存在していた事実。叱られるのは仕方ないとしてこの先逢えなくなることが嫌だった。
「ソニアどうする?……返事を早くしないといつまでもこのままだと……」
「わかってる、マリールはどう思う、正直に全部話した方がいいと思う?」
「うん、どうせ、もしイクシスさんがこっちに来たら全部分かっちゃうんじゃないかな、イクシスさんは大人だからこっちの事情も理解してくれて変な事は言わないよきっと!」
「でももし最悪の場合、テシウスに逢えなくなる……」
「ソニア、テシウスのことが好き?」
透き通る白い肌がみるみるうちに真っ赤になった耳も手も。
「ふふ、ソニア可愛い」
「もー 揶揄わないで」
「テシウスもソニアのこと好きだよね、見ててわかるわ」
ソニア(姉)の幸せそうな顔を見て少し羨ましく思った、自分にも運命の人がいれば良いのにと……
二人は兄にこの事を相談して父である陛下にとりなしてもらう事にした。
40面
こうして双子の王女は父である陛下に無事話をする事ができた、もちろん父である陛下から雷が落ちた事は言うまでも無かった。
ただ東の王子については言わなかった、イクシスにもこの事実はまだ伏せていて欲しいと告げた。
一週間後にいつもの場所で会う約束をしたイクシスの方ももう一人連れていくことを告げた。
テシウスは今まさに父である国王と話している所だった。
国王自身も調べていたが何もわからなかったがここに来てまさか王太子からこのような提案がなされるとは思ってもみなかった、しかも、この髪色と瞳の色を持った人がこの世に存在していた事に驚きを感じていた。
テシウスは当初双子の王女の事は伏せておこうと考えていた、国交のない国の人物との接触は要らぬ諍い《いさかい》を招く事を恐れたからだ。
だが、マイナスだけではない筈だプラスの方が大きい筈だ。父にその事も含めイクシスに逢ってほしいとお願いした。
「この事に関してはまず、公表はしない。こちらに来てくれるイクシスとやらと話してから決めようと思う、先のことはよく見極めてからにしよう」
テシウスもこれに納得した。
そして十日後に会う約束をした。
一週間後、双子の王女と兄である王太子それと護衛の四人でいつもの場所へと向かった。
イクシスもその場所へと姿を変えて向かった。
草を分ける音、川の流れる音そして木々の間から差し込む光が眩しい森の中の一角丁度大人五、六人が座って話せるほどの平な場所、そこがいつも四人が集まる場所だ。
「初めまして、コーライズ国から来たイクシスです、こちらはハント」
「初めまして、ハントと申します。王女様とも初めてお会いしますね」
姿を元に戻した二人、四人とも目を丸くして驚いた。
「わぁ〜私達と同じだ、ソニア見て!」
いつも冷静なソニアもビックリした。
「私達の国は全員が同じ容姿をしていますよ」
それを聞いてかなり驚いた。
印を持った者がまだいると言うのか?
「王太子様この度は国王陛下への謁見をお許し下さりありがとうございます」
「いや、こちらとしても印を持った者の詳しい事がわかれば幸いだ。では、参ろうか」
王城へ移動したイクシス達
「本日は謁見の機会をいただき恐悦至極に存じます」
「王太妃から聞いている、我が子のために色々と力を貸してもらっているようだな」
「いえ、とんでもございません。ありがたき幸せでございます」
「必要最低限の人数に抑えているつもりだが大丈夫だろうか?」
「お気遣い有難うございます、充分でございます」
「そんなに畏まらなくてもいい、うちの双子が君のことをとても気に入っていてね魔法を使える人間などこの国にはいなくて、この子達の特異な容姿のため他の貴族の子供達との交流もままならなかった」
「一つ質問しても……」
「構わんよ」
「陛下はこの大陸に王女様達の他にこの印を持った者が潜在するとお考えですか?」
彼らの国のことは全く知らない存在だった、何と答えるべきか?彼らをどこまで信用できるだろうか?
「その前に君達の国について教えてくれないだろうか?」
「そうですね、信用して頂くためにも我々の事をお話しする必要がありますね。我々も知りたい事がありますできればその疑問を解決するためにお力をお貸しして頂きたいです」
「まず私どもの国についてですが、大陸を南北に横断するピルクールの地下に造られた国です」
「地下?地下に国があるのか!」
「はい」




