タイトル未定2026/02/19 16:47
20面
目の前が白く煙る……霧の中にいる、ほんの数センチ前も見えない両手で探ってみる夢の中か現実か。
ゆっくりと目の前の霧が晴れていくその刹那スペクルムが現れた。
”待ってくれここから出してくれ私はここだ”
……っは!!嫌な汗をかいて目が覚めた。
サラサラと風が吹く、暖かい空気が自分を包んでいる。
桜の木は相変わらず変化がなく、まるでイザベラのように……
「イザベラ。まるで君のようだ、桜の木も息をしていないよ」
生き続けるために希望が欲しい……ここから抜け出せたら……せめて
だが毎日ただ何も考えず息をするだけだった。
ここは三百年前のフィヨルド。
独りになってどれだけ時間が経っただろうか、毎日の日課は二人が大好きだった桜に木を見に行く事、あとは何もない……
「今日は教会に行ってみよう、今まで夢を見た事なかったなのにここに来て見るとは」
その事に何らかの意味があると思った。
教会の重い扉を開けたここに来て一度も来なかった教会だが不思議と埃っぽさはなく空気が澄んでいた。不思議だった気持ちが落ち着くのを感じた。
「何だろうこの感覚は、まるでイザベラが隣にいるようだ」
祭壇の上に置かれたスペクルムを覗いた教会の中は空気が澄んでいるのにそれ(スペクルム)だけが曇っていた。
そっとそれを手に取り埃を払った。うっすら何かが写っている事に気づいたがシューリアスの目の焦点が合っていない、まるで自分がその場にいないような感覚を味わっていた。
数人の誰かが映し出された段々と姿がハッキリ見え始めた。
そこで初めてシューリアスの意識がハッキリした。
映し出された人を見て更に息を呑んだ。
「こ こんな事があるだろうか?」
「夢か?現実なのか?幻か?」
「この中の人達と話が出来れば……」
独りの世界で生きていく為の希望が……小さな希望が欲しい。
シューリアスの頬に涙が一筋、声もなく肩が震える。
指でスペクルムを擦って見た、その瞬間教会の天井から一筋の光がスペクルムに落ちてきた。
小さな音が聞こえた、何処からだろうか……シューリアスはキョロキョロと周りを見回した、そしてスペクルムに目がいった。
「ここ?か?」
「ザワザワ微かな音がする、ハッキリ何を言っているか分からない。ここからだ、まさにこれから聞こえてるんだ」
シューリアスは興奮していた。
ここに来てイザベラが亡くなった事、この世界で自分独りである事実を受け入れられなかった、でも希望が出てきたが、希望を与えておいて崖から突き落とされるんだろうか?
「おい!聞こえてるか?聞こえたら返事をしてくれないか?」
耳を澄ました。
「やはり返事はないか……」
まるで深淵を覗き込んでいるように闇の中に突き落とされた気分だった。
だがイザベラが亡くなった時の喪失感とは違っていた、明らかに。
「イザベラの時はあれ(スペクルム)からは何も聞こえなかったのに。けど今回は……まだ音が聞こえている」
ハッキリした言葉は聞こえないがしかしハッキリ音が聞こえるのだ。
シューリアスは涙を拭いた、少しほんの少し笑みが溢れた。(こぼれ)
21面
コーライズでも異変が起きていた。
サラサラ......ザワザワ木や草が風にそよぐ音がする、まるで春のようなそよ風の音だ。
「音が、音が聞こえる」
「え!」
三人は耳を澄ました、顔をあげて見合わせたそして頷いた。
「聞こえた、風の音だよね?これって」
「ああ、風の音だと思う……」
「ここは何処だろうか?」
「イクシスに知らせないと、直ぐに」
日記を調べ初めてかれこれ三年近く経っていた。
三人は急いでイクシスの所に向かった、いきなりコーライズから三人がやって来たので雪の森五人は目を丸くして言葉が出なかった。
「ど、どうした?いきなりしかも三人共……それにスペクルムまで持って来て、一体何があった」
「見て欲しいんだ」
そして野営のテントに皆んなで入って行った。
「ちょっと窮屈だけど」
「文句言うな!」
皆んなの中心にそれを置いた。
「実はさっき急にこれから光が天に向かった伸びたんだ曇っててハッキリは写ってないんだけど、音が、音がするんだ」
そう言うとシーっと指を唇に当てて耳を澄ました、皆んなして。
サー カサザワ……
「風の音か?草が揺れているような音もする」
「静寂の音ではなくて確かに聞こえる、何処と繋がっているんだろうか?」
せめて何かヒントになる物が映し出されていればいいのに。
歯痒い……
どれくらい沈黙が続いただろうか。
「日記の方はどう?」
「行き詰まっている。ここに来てかれこれ三年になるな……雪の森の日記は王子が消えた時から書かれてなくて、だからどうしても国王への謁見がしたい、そちらの日記はどうだ?」
「コーライズの日記だけど東西南北で数年分が無くなったるんだ時期はバラバラで……北のフィヨルドの日記は王子が居なくなった記述が載ってなくて、腑におちなくて」
「どう言う事だ?」
「それがわかれば苦労しないよ、だからここに居ても何も出来ないかもしれないから俺たちはコーライズに帰るよ、何かこれに変化があればまた来るよ」
「ああ、分かった」
三人はスペクルムを持って帰って行った。
しかし不思議だ!なぜこのタイミングで音が聞こえたんだろうか?
この国に双子の王女が生まれた事と何か関係があるのか?
あまりにも疑問が多くイクシスは思わず髪をてでくしゃくしゃにした。
22面
イクシスは頭の中が整理出来なくてげっそりした顔をしていた。
「イクシス……始まりの子ノークが叙爵されてからペリュリウス家になったよねその貴族ってまだこの国に残ってるかな?もし残っているなら……」
「そうか、ノークは印持ちだ俺たちが本当の姿を出しても……」
「あー何でそれに気付かなかったんだ!!馬鹿だ!時間を無駄にした」
髪をくしゃくしゃにして悔しがった。
どうやらイクシスは頭が整理できなくなると髪をくしゃくしゃにする癖があるようだ。
「おじいさん」
「おーどうしたなんか進展はあったか?」
「この国の二代貴族ってペリュリウス家も入っていますか?」
「ああ勿論だ、ノークの家系だよ」
やっぱりそうだ! あぁーホンット馬鹿だ俺つくづく思った。
「ペリュリウス家と連絡って取れますか?」
「残念だがもう今は無理じゃ」
「無理?ですか、ここにはノークの日記が……あ!」
そうだここにある日記は三百年前までしかなかった、それ以降の日記は何故ないんだ?
「あの日記が三百年前までしかないのは何か理由がありますか?」
「あぁ〜詳しくは分からんのじゃ」
おじいさんは何処か濁したようなハッキリしない返事をした。
「全く分らないって事ですか?」
「全くと言うか、ほれ、絵本の話覚えとるじゃろその時から日記も止まっとる」
”昔々、大陸にある一つの国に王子様が生まれました。
その王子様は他の人とは少し違う容姿をしていました。
虹色に輝く瞳と黄金に輝く髪。
そしてその印を持って生まれた者がいる国は豊かになり皆んなが幸せに満ちると信じられていました。
王子にはとてもとても愛おしい人がいました、太陽のように明るく暖かく雪のように白くフワフワとした人でした。
王子は彼女と彼女が好きな桜の木下でお茶をする時間が大好きでした。
しかしある日突然、王命により婚約者を決められてしまいました、怒った王子は王家に伝わるスペクルムを割ってしまいました。
王子を覆った真っ黒な光に包まれた彼はこの世界から消えてしまいました。
王子がいなくなった国はひどい気候に見舞われ民の幸せは少しずつ失われていきました。
王子を救い出すため七人の魔導師と印を持った勇者達が力を合わせて王子を助け出しました。
助け出された王子は、姫が大好きだった桜の木の下でプロポーズをしました、そして幸せに暮らしました”
「絵本は事実って言っていましたよね?王子はその後どうなったんですか?」
「う〜んそれが分らんのじゃ」
イクシスは何か思い出したかのようにテントに帰って行った。
23面
「なぁ〜今絵本をもう一度見直したんだ……」
「絵本?ってか俺たちって随分本線から外れてる事多いよね」
「いやいやでも結局全部繋がってるよ」
「で、何に気付いたのかなイクシスは」
「最初に俺たちのスペクルムにヒビが入ってその後破れてそれを合わせて一枚にしただろ、その時映ったもの覚えてる?」
「確か……噴水?木?だったかな〜」
「そう、木。そこに映ってた木って絵本の中の桜の木じゃないか?」
「だったらこの王子はフィヨルドの王子だよなやっぱり、更にこの木と噴水だっけ城内だよやっぱり」
「それともう一つ七人の魔導師って誰のことだ?」
「あ!!俺たちの祖先ってことか」
「間違いなくそうだよ」
「どうしても謁見したい国王に、それと一度皆んなでコーライズ帰らないか、当時の七人の魔導師のことも知りたい」
「先にコーライズに帰ろう、そのあとまたここに戻ってきて無理にでも城内に侵入しよう」
「侵入?」
「そこは気にするな」
「気にするは!!」
「よし、片付けて帰ろう」
「え、無視なの……」
おじいさんに長々と世話になった礼を言って片付けたあと皆んなでコーライズに帰った。
シュー ドン、
「イテッ」
「お、お帰り……今度は全員?ど、どうしたの?」
「ただいま……」
身一つで帰って来てないな、大荷物だ!!しかも向こうに行った時より多いぞ荷物。
「荷物の量からしてあちらは引き払って来たのかな?」
イクシスは頷いた。
「スペクルムに変化はあったか?」
「いや、あれからは特に」
「雪の森の日記は持って帰る事ができない、その代わり書き写してきたんだ」
「さすがイクシス」
関心関心といった顔でみんなが頷いていた。
コイツらと思いつつ眉間の皺を伸ばした。
「移時日記が抜けてる所があるって言ってたよね、何故抜けてるって分かったんだ?」
「一日二日とかじゃないんだよ、年単位だよ。王子が居なくなったであろう日の前後三十年分ぐらいと最近の五、六年前かな、さすがにこれだけ抜けてると気付くよ」
「他の国は?」
「まず東の国イージスは五、六年前、南は四百年ぐらい前かな、不思議なのは、西の国だよ、四百年ぐらい前と最近の五、六年前なんだ」
イクシス達は黙ったままだった、どれくらい沈黙が続いただろうか、まるで夜の静寂ようだった。
「な、なんか言って」 カロナの笑顔が引きつっている、が皆んなは無言だった
イクシスの眉間には深く底知れぬ皺が刻まれていた。
24面
印持ちの王女、王子達は六歳になる年を迎えた。
”東の国イージス”
カーン カーン 剣と剣がぶつかる音がする。
「どうしました!テシウス様もう疲れましたか」
ハァハァ
「ちょっとは手加減してよ」
リスが頬袋に餌を溜めているようにほっぺを膨らませて不満顔で真っ赤になってるが決っして諦めない、なかなか根性のある王子である。
「今日はこれくらいにしておきましょう、朝食の準備も整ったようですし」
テシウスが北の別荘の来て五年。
王都の王城からここに移された、北のこの国では見ることのない容姿故である年を重ねるごとに美しさも増している。
黄金の髪は更に美しく光が反射してまるで鏡のようだ、瞳の色は虹色がさらに濃く丸い瞳が虹に覆われた地球に見えた。
誰もがその美しさに心奪われるに違いないのにこんな北の果ての別荘で暮らさなくてはならないのか?
護衛であるジョルゼンとマルコエルはそれが悔しかった、美しさだけではない、剣術や知識も自己研鑽を怠らず挑戦し続ける姿は頭が下がる。
わずか五歳の子供に二人は尊敬さえ覚える、そして不思議な事が起きている事に二人は気付き始めた。
当初ここの来た年の冬は元々暖冬の年で隣接する北のフィヨルドでも雪の量が例年に比べ少なかった、だがまだ冬の季節、雪だって降っているのに北の別荘内の庭園には花が咲いていた。
王子が一歳年をとるごとに花が咲く範囲が広がっていることにテシウスが三歳になった冬に気付いた、花だけではなくその周囲の空気までもが春のような暖かさに包まれていたのだ。
王子は部屋で着替えの準備をしていた。暖炉に火を付けるのを忘れた侍従が慌てて
「申し訳ありませんすぐ……」
「もう一人で大丈夫だよ」 侍従を下がらせた。
徐に(おもむろ)自分の指を見つめた、すると指先に小さな炎が灯った、テシウスは指先の炎で暖炉に火を付けた。
まだ寒さが残る早春の頃だった。
三歳を過ぎた頃から魔法が使えるようになった。
王に成るべくして生まれて来たような子で、かなり大人びた生意気な子供だった。
冷静で頭も良く周りをよく見ていた自分が魔法を使える事は自分の中だけの秘密であった、それは自分に容姿が他の者と違うことに関係があることは分かっていた。
当時王である父や王妃である母に聞いた事があった。
「ねえ、父上、母上僕はどうしてみんなと違うの?父上にも母上にも似てない……」
子供心にとても悲しい気持ちになった事をよく覚えている。
「テシウス、国王や王妃である私には見た目は似ていないけど間違いなく貴方は私と国王の子供よ!貴方が私達の元に来てくれたことは奇跡なのよ。授かった時の喜びを今でもハッキリ覚えているは」
そう言って宝石のような瑠璃色の瞳に涙をいっぱい溜めて微笑んで私を抱きしめてくれた。
夏になってお二人がこちらに来られたら魔法の事を……使えることを話してみよう、ちょっと怖いけどキット受け入れてくれる筈だ。
西の国でも、この度印を持った王子が誕生した。
「陛下、あの時以来です、今度は貰い受けるのではなくこの国に授かりました大変喜ばしい事です」
「無闇な事を言うな」
「失礼しました」
四百年前は授からなっかった……ここに来てまさか自分に授かるとは何とも皮肉な話だ。
25面
「この度、北のフィヨルドに印を持った王女が誕生したと」
「あの地は、もともと印を持ったものが誕生してきた現在は王家にのみ現れるとされている、しかし何かの縁か?同じ時期に我が国にも授かるとはな」
「しかも双子のようです」
「ほぉ、それはそれは」
「南に誕生された王子は印をお持ちでないとか」
「あそこは王子が二人だったか?」
「はい」
「北は双子か、南は二人とも欲しがるだろうな」
「はい、間違いなく」
「何としても一人はこちらに嫁いでもらわねばな!」
「我々三国は国交もありメリットもお互い分かっていますし国益を考えてお一方は譲っていただかなくては」
王は顎に手をやりにこりと笑った。
「今度こそ恩恵を受けたいものだ」
南のサジュアルでは誕生した王子に印は無く四百年前に北のフィヨルドから嫁いで来た王女以外一度も血を引いた印持ちが居ないままだった。
南の国 サジュアルでも
「北のフィヨルドは双子のようじゃな」
「はい左様です、しかしながら西のトゥーリスにも印を持った王子が誕生したようで」
「何!生まれたのか!あの国には今まで一度も印を持った者の血は入っていない筈なのに何故だ!!」
「理由はわかりません」
突然誕生するものなのか?王の眉間には深い皺が刻まれた。
「偶然とは思えないが三国に王子・王女が誕生して五年になるそろそろ王女との交流を考えないとな」
「彼方の国に信書を出したい」
「かしこまりました」
「グレン陛下、南のサジュアルより信書です」
「そろそろ何らかの行動に出ると思っていたよ」
サジュアルは確か二人の王子がいたな……だが、二人共南の国には嫁がせない、ここはやはり西のトゥーリスにも嫁がせたい、その方が三国には有益だ。
しかし、なぜ西の国に印持ちが生まれたんだ?
グレンは胸の奥に暗い闇のように少しずつ広がる不安を気がつかないふりをした、それは南の国の国王も同じように感じていた。
グレンは西のトゥーリスにも連絡をし三国で顔合わせを行う事を提案した。
西の国にとってこれは願ってもない事だった。
「フィヨルドに返事を、こちらはいつでも良いと、お気遣い有り難く受け取ると」
「かしこまりました」
南と西の両国に伝えよ。三国での顔合わせでなければ応じられないと。
たそれと、今年五歳になる王子のみとすると……
「まぁ〜双子のうちのどちらか一方でも構わない、手に入るなら、時期はそちらに任せると言っておけ」
「かしこまりました」
こうして両国に伝令がいった、春になり暖かくなったら三国の中間である西の国トゥーリスで執り行いたい付きましては日取り等はトゥーリス国にお任せしたいお返事をお待ちしています。
日取りは五月に決まった。
26面
大陸を南北にのびる山脈ピルクールその山脈の中にコーライズはある。
コーライズ国のさらに北の果ての洞窟、ここはコーライズの人々も来ることのない場所である。
床に魔法陣が描かれている。
この魔法陣は遥か昔スノークがこの地を離れる時描いたものである、スノーク本人は決してこの地に戻る事はなかったが、この先自分の血を引くものがまたこの地に帰って来ることをスノークは分かっていたその為の魔法陣である。
”時を遡り(さかのぼ)神々の島が出来るまでの話をしよう”
あの出来事の後スノークは長男とこれから生まれて来る子供の事を思い後ろ髪を引かれる思いでこの地を離れた。
離れる前に魔法陣を北の奥地に描いた、そこに八人で作ったスペクルムを丸く切り取ってから置いた。
自分用に懐に入るほどのスペクルムを作って持っていく事にした。
スペクルムを見てスノークはその人物の所に行く事にした。
最初に選んだのは東の地域だった大陸に四つの国が建国されていた、まで安定していない地域もあったが一番安定していた東のイージスから行くことに決めた。
意識を集中しその近くまで移動した。
どうやら一人のようだ。
姿を変えその人物に歩み寄っていった。
「やあ、この辺に宿屋はあるかな?」
「いや、この辺にはないよこの道を真っ直ぐ行ったら左に折れる道があるからそこを左に行って三時間ほど歩かないと町に出ないんだ」
「そっか……随分かかるな」
いかにも困ったと言った顔をして彼をチラッと見た。
「っう!......」
まいった、そんな顔で見られたらなぁ〜
「よ、よかったらうちに泊まるかい?」
満面の笑みを浮かべスノークはニッコリ笑った
「はは……」
「夕食までご馳走になってすまない」
「いやいいよついでだし」
姿を変えて暮らしている彼はまだ若いこの先結婚もしたいだろうに。
「一人暮らしなのか?」
「え、ああそうだよ」
「両親はいないのか?」
黙ってしまった……踏み込み過ぎたか。
悩んだ末スノークは自分の姿を出す事にした。
スノークはコーライズでの出来事を言うべきか悩んだ、でもここであの事を言うのはかえって良くないと思いその事は言わずに新しい地を一緒に探さないかと。誘う事にした。
「どうかな?一緒に新しい地を探さないか?」
彼は少し時間が欲しいと言った。
私は頷き理解した。
「私は、他の印持ちを探してまたここに戻って来るよ、二ヶ月ぐらいかな。戻って来るまでに答えを出して欲しい」
「それともう一つ頼みたい……」
そう告げて他の地に散らばっている印持ちを探しに行った。
27面
スノークはスペクルムを見てまず、東の地域から順に南下していき北の地域までを約二ヶ月を掛けて印を持った者達に声をかけて行った。
決断に時間がかかる者もいた。
”ゆっくり決断してくれれば良いんだ” と言って時間を与えた。
その後何人かを連れ最初に声を掛けたダイベイルの所に帰ってきた。
「ただいま、元気にしてたかい?」
「あ、おかえり一緒に来た人もいるんだね」
「ああ、全員じゃないんだよ、気持ちがハッキリ決まってない人もいるからねここで少し待つよ、で、君の気持ちは決まったかな」
「ああ決まったよ!一緒に行くよスノークと」
その答えを聞いて安堵したと同時に心にあった痞え(つかえ)が消えていく気がした。
「ありがと」
感謝しかなかった、何も聞かずにいてくれた事も……
その後約一ヶ月留まる事にしたが人数が増えると目立つので少し離れた所に森があるのでそこで皆んなして住まいを作り留まった。
「ありがとう、君のお陰で手間が省けたよ」
ここを出る時に"もし一緒に行く決断をした時は、あっちの森にみんなが隠れられるように簡単な家をいくつか作っておいて欲しい"
そう頼んでここを出たのだ、彼は一緒に行ってくれるだけではなく家を約束通り作ってくれていた。
スノークは一人になってから今までの事を全て日記に記した、どんな些細なことも……声を掛けた人達の名前や家族、そして一緒に行くか否かも。
約一ヶ月後、三十人の男女と子供六人が集まった。
「スノーク、これからどこに行くの?」
「皆んなに声を掛ける前に移住先は決めていたんだ、北の地の果ての海上に島がある、そこに移住しようと思う」
「島?」
「そう、島だよ」
「そこまでどうやって行くの?」
「魔法陣で移動する、ただ、一度に全員はさすがに無理なので何度かに分けていこうと思う」
まず一度コーライズの北限の洞窟に移動、そこに置いてあった保存食や移動前の駐留地で集めた食料や衣料品、医薬品を持って一度に十二、三人で移動した。
島は移住者を連れて来る前にスノークが少し整備していた、島を二分するように幅の広い道が作られていた、その先に大きな広場も作られていて。
移動してからみんなでその広場に集まった。
「皆んな、まずはこの地に一緒に来てくれてありがとう!感謝しています。これからこの地を少しずつ開拓し、豊かで住みやすい地にしていきましょう、でまずは何名か責任者を決めようと思うんだけど誰か立候補する人はいるかな?」
立候補?顔を見合わせて皆んな難しい顔をしていた。
恐る恐る手を挙げた者がいた、ダイベイルだ。
スノークはにっこり笑った。
「ありがとう手伝ってくれるんだね、出来ればあと五人ほど頼みたいんだけど誰かいるかな?」
その後何人かが手を挙げてくれた、スノークと合わせて七人この島を一つの国に創り上げるために奔走した。
28面
「まずは自己紹介から始めよう。僕はスノーク、コーライズから出てきた者だ、ちょっとした気持ちの行き違いで……一人で出てきた」
皆んなはそれについて特に深く聞く事はなかった、スノークは少し安堵した、この先、いつかちゃんと彼らには話そう。
「僕は、ダイベイル。スノークに最初に声を掛けられた者だ、あってるよねスノーク?」
「うんそう、初めて声をかけた」
「僕は、チェイル東の国に住んでいた」
「僕は、ヴォルドル、僕も東の国だよ、チェイルにはあったことないけど」
チェルは東の森の中、ヴォルドルは南の地区に住んでいたようだ。
「僕は、スタック南の港街に住んでたんだ海鮮が美味しかったよ。ここは海が近いから海で魚を取ってみんなと食べたいね」
「僕は、クルト北の国に住んでた、年中雪を纏っているピルクールの麓に住んでた」
「僕はトリトリアル、西の国に住んでいた」
「よし、これから先の事を決めていこう」
彼らは島を二分する道を中心に等間隔で道を作りそして家を作っていこうと話した。
「広場が中心なら良かったなぁ〜そうしたら道を放射線状にて家を作っていくのも良かったんじゃないかな」
「なるほど、それ良いね!」
「そうだね!いいね 中心からみんなの家が見渡せるよね」
スノークは皆んなが意見を出し合うことに安心感を覚えた意見を出し合えることはこれから長い間ここで生きていく上でとても重要だからだ。
こうして話し合いの結果、中心に教会を置き放射線状に道を作り家を配置する事にした。
「最初に集まって広場はどうする?」
「うん、それは畑にしようよ、皆んなが集まって小麦や野菜なんか育てよう。それと、牛やヤギがいるといいよね」
「鶏も欲しいね」
「港なんかつけりたいね……」
「魚も食べたいよね」
こうしてみんなの意見をもとに国造りの一歩を踏み出した。
ある日島の名前を付けようと言う話が誰とはなしに出た、そう言えばいつも"この島"としか言ってないような気がした。
その時だった空が急に明るくなって一筋の光が広場の中心にゆっくり降りてきた。
それはまるで神様か天使が降りてきたようだった。
「ねぇーママ 神様が来たよ」
小さな子供がふと呟いた、僕たち七人は ハッと息をのんだ。
「神々の島」
七人の声が揃った……
そこにいた人達はあまりに揃いすぎて言葉がなかった。
そしてこの島は "神々の島"と呼ぶことにした。
スノークは食糧や日用品など島では手に入らないものを調達するため東のイージスに向けて移動した。
ガサガサ……草を分ける音ザザ ザシュザシュと音を立てて誰かが来る音がする、早く起き上がらないと…… サラは重い体をなんとか起こそうとしているが力が入らない
もう何日も食べてない身体はあちこちに傷があり痛々しい。
歩く音が止まった自分の目の前だ……終わった……
29面
「大丈夫か?」 ああ優しい声だもしかしたら助かるかも?
サラは期待を胸にそっと顔を上げた。
声同様に顔も優しそうだった、にっこっと笑った顔はとても品のある顔をしていた。
力の入らない身体に最後とばかりに
「大丈夫じゃないです……お腹空き過ぎで……」
そこまで言って目の前が真っ白になった。
「気が付いたかな?」
「ええ すいません助けて頂いて」
「まずはこれを食べて」
スノークは野菜を柔らかく煮たスープを差し出した。
「名前、教えてもらえるかな? 僕はスノーク」
「あ、私はサラ、サラ二エール。サラって呼んでいただければ」
優しいスープの味が空腹だったサラのお腹も心も暖かくした。
「これからどうするんですか?」
スノークは彼女をこのままにはしておけないと思った、かと言って彼女は普通の人だ印持ちしかいない島に連れて帰る訳にもいかず……
スノークの困った顔に気付いたのか彼女は気まずそうに言った。
「私のことは気にしないで食事までご馳走になって、後は自分で何とかできるから」
そう言うとゆっくり立ち上がろうとした時また、目に前が真っ白になって倒れそうになった所をスノークが受け止めた。
「大丈夫か!!」
スノークは目の前にいる彼女の容姿にビックリした。
「っ!!」
「まさか!そんな」
黄金の髪!瞳は見えないが、もしかして彼女は印持ちなのか?
張り詰めていた気が満腹感と気を失うという失態で自分の姿を出してしまったのだ。
目が覚めるのをスノークは静かに待った、やがてゆっくりと目を覚ました彼女に悟られないように瞳を見つめた。
思った通り彼女の瞳は虹色に輝いていた、やっぱりそうだったか。
「目が覚めたかい?」
「あ……」
「君は印持ちだよね」
彼女の顔色はみるみる白くなっていった、血の気がなく額にはうっすら汗をかいている。
「安心して、俺も同じだから」
スノークは彼女を安心させたくて自分の姿を見せた。
目をパチパチさせながら口はパクパクしていた、予想していなかったのだろうスノークもその顔にビックリした。
間をおいて二人は笑った。
「クックッ ハハハハハハ」
久しぶりにこんなに笑った。
「ビックリしました、まさかわたしと同じ人がいるなんて」
「?、ん?同じ姿の人と会ったことないのですか?」
「ええ、一度も……不思議ですか?」
まさか……そんな事があるんだろうか?
「今まで何処にいたんですか?東のこの国ですか?それとも別の国からここまで来たんですか?」
スノークの勢いに呆気に取られた。
30面
「え、えっと……ずっとこの東にいました。多分……この容姿なので親に孤児院の前に捨てられていたようです、先生はとても良い人でこんな私をみんなと同じように平等にしてくれました、感謝してます。でもある日私をいじめていた子供達に樽の中に閉じ込められて……何処かの城の食糧庫に閉じこめられて、必死になって抜け出してここに隠れていました食べる物もなくて」
「大変でしたね、先生が良い人で良かった」
微笑んで頷くスノークにとても安心感を感じた。
「うんうん、先生が心配してないかそれが今一番心残りです」
「先生の所には連れて行ってあげられませんが、嫌でなければ私と一緒に来ませんか? 私達はこの大陸の北の沖にある島に同じ印を持った人達と移住しています、みんな同じ容姿なので心配入りませんよ」
スノークの笑顔は本当に人を安心させる。
「はい、一緒に行きたいです」
こうしてサラはスノークと一緒に神々の島へ移住する事にした。
その後、スノークとサラは結婚した。男の子を二人授かった。
何年経っただろうか?スノークはある事に気が付いた、そしてその変化はサラや子供達も気が付いていた、おそらく他の人も……
”ここは北の国 フィヨルド”
「ねえ王太子妃様おふた方は髪が伸びるのがとても早いわよね?」
「そうなのよ、他の人達より随分早いのよ、やっぱり瞳と髪色が関係しているのかしら?」
「ゴホン 無駄口は謹みなさい」
「も、申し訳ありません」
確かに髪の伸びが早い……普通の人より4、5倍 ううんもっとよ
「皇后様、ソニア様とマリール様の事なのですが」
「二人に何かあったの!」
「いえ、大きな問題と言いますか……髪が」
「髪?二人の髪に何かあったの?」
「ええ、髪が伸びるのが異常に早くて」
「髪が伸びる?早いの?」
「そうなんです先月揃えたのですがもう10センチ近く伸びてて、この先の事なのですが……」
「そうね、髪が結える長さがあれば大丈夫よ、あとはカットして構わないは」
「切った髪はどうしましょうか?」
「そうね黄金でとても綺麗だから残しておきましょ」
「畏れましたその様にいたします」
王太子妃の二人分の髪は綺麗に残されていきました。
二人の王太子妃は六歳を迎えようとしていた、二人はとても聡明で雪の様に白い肌虹色の瞳を際立たせ黄金に髪は金の絹糸の様だった、年を追うごとに美しく成長し誰もが目を奪われる存在になっていった。
「お姉様、みてみて綺麗でしょつけてあげる」
マリールはソニアの頭に花の冠をそっと付けた、満面の笑みはまさに光のように輝いていた。
姉のソニアも妹のために花で作ったブローチを胸にそっと付けた彼女の笑顔もまさに光の様だった。
二人は年齢の割にとても器用で今は小さな機織り機で布を織っている。
「二人共綺麗な冠とブローチだね」
「お兄様!」
二人には大好きな兄がいるこの国の第一継承者王太子のアレクサンドだ彼は印持ちではなかったがやはり非常に聡明で常に研鑽を怠らない。身分に驕る事ない子供だった。
「陛下、アレクサンド王太子様の婚約者をお決めになられては……周りがうるさくなって参りました」
「ああ、そうだな候補をあげてくれ」
「畏まりました」




