表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

スペクルム ”印を持つ者と7人の魔導師達”

   10面


 これがリズが妊娠した事の全貌だった。言葉がなかった。

 沈黙の後......

「リズ!いくら何でも......それは無いだろ?」

「ごめんなさい」

「......謝られても、取り返しがつかないじゃないか」

 スノークは怒りが込み上げてきた、彼女に対しては勿論だが、いくら媚薬を盛られたとはいえ自制がきかなかった自分に対してもだ。 

 その後幾度となく話し合いが行われた、生まれてくる子供には罪がないそんな事は誰もが分かっている事なのに、リリアーヌは彼女の顔を見るのも辛く精神的にも疲弊していくのが分かった、このままではお腹の子供にも良いわけがなかった。

 答えが出ないまま半年が過ぎた、あと何ヶ月かで子供が産まれる。 

 スノークは決断を迫られていた、あれからリリアーヌとの間には溝が出来ていた彼女の気持ちは理解出来る私だってきっと......このままここに居ることがリリアーヌの為になるのか?それともリズをこの場所から出て行ってくれと言うのか?

 答えが出ないまま、時だけが過ぎていった。 

 そしてスノークは決断した。

「私はここを出ていく」

「......っ 何だよそれ」

 皆んな一様に黙り込んだ、まさかの決断に。

「私とリリアーヌの間には溝が出来た、多分これはこの先も埋まる事はないと思う。このままでは離婚になる事は確実だと思う、生まれてくる子供にも長男のノークリアにも......良い環境とはいえない」

「だからって何故お前がここを出ていく必要があるんだ?」

「そうだよ、出ていくんならリズの方だろう?」

「でもそんな単純な話じゃないだろ......俺は男だから生きていく為に何でも出来るがリズは女だしかも妊娠中で仕事も出来ないし生まれた後も一人じゃ生活も出来ないだろう」

 もっともだ、が納得いくかと言ったらそうではない。

「今だけを考えたのではいけないんだこの先の事も考えなくては、だから皆んなには協力して欲しい俺の我儘を聞いて欲しいんだ......頼む」

 スノークの決断を受け入れるしかないのだろうか?今からここを国として起こしていこうとしている時に魔力量の一番強いスノークが抜ける事が最善の選択なのか。

「私が出て行った後、リリアーヌとリズが顔を合わさなくて良いようにリズの生活拠点を移してほしい、そして皆んなで協力して面倒を見てもらえないだろうか、無理を言ってるのは重々承知しているがどうか頼む」

 一週間後皆んなから私の一方的な願いを聞き入れると返事をもらった。これで解決した訳ではないが一安心だった。ここから出ていくための準備を私もしなくては。ノークリアと産まれてくる子供のかをが見れない事がここり残りだった、リリアーヌの事も......私はリリアーヌのことを愛している、だからこれ以上気持ちの行き違いはしたくなかった。

 そしてスノークはここを出て行った、誰にも告げずに......八人で最初に創ったスペクルムを持って。

 その後スノークの行方は分からなくなった。

「本当は、離れたくない......愛してるんだリリアーヌ」

 ただ一言手紙を残して。

 リリアーヌは手紙を見て泣き崩れた、後悔しかないと後に語っていたと建国の章に書かれていた。


  これがこの国の建国時に起こった出来事のようだ。

「これが始まりなんだな......」

「始まりは八人か、彼、スノークはその後どこに行ったんだろうか?」

「コーライズの日記ってこれ以上はないんだよな、リリアーヌもリズもこの国に留まったんだよな?」

「多分な、だって妊娠中だし、まして子供を抱えて一人では生活出来ないだろう?」

「不可能だろう」


 不可能なことはわかっているが不思議と違う可能性があるのではないかと思った......のは私だけでは無いようだった。

「何を考えた?」

「同じことかもな」

「やっぱり他の日記を一番最初から見てみよう」

「明日から......今日は疲れた」



   11面

 一夜が明け七人は移時図書室に集まった。

 カロナが切り出した。

「コーライズ建国時の一人、スノーク。彼はコーライズを出た後何処に行ったか調べたい」

 いつもは物静かなカロナが珍しく声を上げた。

 皆んなの目線がカロナに集中した、視線の熱に思わず「......ぅ」と声が漏れる

 トゥーリオが「クスクス」と笑った

 カロナが続けた

「ぼ、僕の予想ではスノークが神々の島と言われる島を創ったんじゃないかって思ってる、それにスノークの妻とリズ?だっけ、二人がこの国にに残っていたんだろうか?フィヨルドの絵本に出てくる印を持った者は何処から来たのかな?疑問だらけだよ」

「言われればそうだな、もしどちらか一方がコーライズを出てフィヨルドに行ってそこで......まさかとは思うけど身分の高い者と何らかの関係を持ったかもしれないな」

「例えば?」そう言ったのはハントだった。

 ジルがすぐさま言う「国王にでも見染められたか?」

「それなら印を持ったリズの方が目に止まるだろう、もし生まれてきた子供も印持ちだったら?」

「でも......自分の血を引いてない子供を国王が受け入れるだろうか?」

 まさに、疑問しか湧かない。


「ここで二手に別れようか?」

「二手?」

「ああ、まずここに残って日記を調査するグループ。フィヨルドに行って国王と謁見出来るよう手段を探すグループ、ってとこか」

「負担割合が変だ!不公平じゃないか」

 まぁそうなるよな国王に謁見なんてそうそう出来るもんじゃないし......


「我々の本当の姿を出せば謁見の可能だと思う」

 皆んなが息を呑む。

 マジか?危険すぎる。

「もし、フィヨルドに我々の祖がいたとしたら向こうは粗雑に扱わないのではないか?絵本にも出てきたぐらいだ、他に印を持った者が居ることに疑問は持たないのではないだろうか」

「うん、そうだね。その可能性はあるよね」


 話し合いの結果、イクシス・サジアル・ジル・ハントの四人と剣に覚えのあるもの一人の五人でフィヨルドに行くことが決まった。

 トゥーリオ・カロナ・ウィーゴの三人はここに残って日記の調査をする事となった。

 出発は準備を考えて明後日に決まった。

 

出発の日この地には珍しく快晴だった、樹々の間から漏れる陽射しは暖かく心までもが暖かくなるのをはっきりと感じた。イクシスは残してきた魔法陣を使い皆んなでフィヨルドはで移動した。


「やっぱり魔法陣は便利だな」

 魔法で姿を変え王都へ入ることができた、宿を探し一息ついて一行はこれからどうするかを話し合った。



   12面


 カロナ達三人は日記の見返しと見落としがないか調べる事にした。

「トゥーリオはこの国の建国の章以降あるだけ調べてよ、僕は(カロナ)フィヨルドを調べるよ」

「俺は?」

ウィーゴが目をパチパチさせこちらを見ている。

「ぷっ……こっち手伝って、フィヨルドの日記に神々の島についての記述がないか調べてくれ」

「了解!」


”リリアーヌに子供が産まれた、女の子だ。スノークに似ている瞳の色は違うが髪は黄金色だ”

 これはスノークの妻か、リズの予定日が数ヶ月後だったはずだ。

”リズにも子供が産まれた。男の子だ、しかもスノークに瓜二つだ、瞳の色に髪色。まさに印持ちだ。”


 二人とも子供は順調に成長しているようだ。

 読み進めていったその記述は突然書かれていた。


”リズが居なくなった”

 日付は、あの出来事から三年後の日付になっていた


「ここ見て書いてあるよ!」

「どこ?」

「ここ!二人共子供が産まれて順調だったみたいだけど、ある日リズがこの国から居なくなったみたいだ」

「日付は?......三年後か?」

「そうみたい」

「リズは何処に行ったんだ?」

「この前の仮説が仮説じゃなく本当にフィヨルドに行っていたとしたら……]

「フィヨルドに日記はどう?」

「国の統制がまだまだのようであちこちで小さな暴動が起きてるようですね。そんな記述が多いけど......リズの記述は無かった」


 その後両国の日記を読み進めた。

 フィヨルドが国としてしっかりした形になってきたのはリズがコーライズを出てからさらに七年の月日が経っていた。

「子供は十三歳ぐらいかな?」

 さらに読み進めた。

”国王の婚姻が執り行われた”

「国王が結婚したみたいだ」

「相手は?」

「公爵家の令嬢みたい」

「リズじゃないんだな?」


 てっきりリズが国王にでも見染められたのかと思っていたのだが違ったみたいだ、じゃあ印を持ったもにはこの国にはリズと息子だけか……


「神々の島については何かわかった?」

「うぅーん、今のところは何の記述もだてきてないね」

「行き詰まったね」

「まだ十年分ぐらいだよ、分からないよ約千年分はあるんだから」


 その後も読み進めていった。

 


   13面

 

 一方、イクシス達は…… あの絵本を貰った村イーチャルにいた、取り敢えずなのかとっかかりが欲しかったもしかしたら意外と何か分かるかもと淡い期待をして村を訪ねた。


「こんにちは、覚えてるかな僕たちの事」

「ああ、あんた達はあん時の旅のお方」

「あの時は絵本をありがとう」

「大した事ないさ。で、今日はどうしたんだ?」

「うん、絵本のことでちょっと。もっと詳しく知りたくて、誰か詳しいことを知っている人知らないかな?」

「長老のところにいってみるといい、この村の事は一番よく知っているから。案内しよう」

「よろしく頼む」 


 柔らかな陽射しが差し込む窓際でロッキングチェアにゆったりと座る老人がいた。


「こんにちは、長老居るか?」

 柔らかで穏やかな声が聞こえた

「ああ……居るよ何かようか?」


 奥さんに挨拶をして奥の部屋へ案内された。


「旅の方を連れてきたんだ、ほら絵本のことを聞きに来た旅人だよ、覚えてるか?」

「ああ覚えてるよ、まだボケちゃいない」

「そりゃ何よりだ」

「で、旅の方がどうした?」

「初めまして、イクシスと言います」

 長老は静かに頷いてニコッと笑った

「絵本のことで聞きたくて……」

 長老の眉間に小さな皺が寄ったように見えた。


「絵本の何が知りたい」

「絵本は普通想像で書かれてる事が多い、この絵本も想像で書かれているのかそれとも……事実なのか」


 少し沈黙の後長老は顎で外に出るよう促した。

「俺らはもう行くよ」

「あ、案内ありがと」

 老人は案内のものが部屋を出たのを確認して話し始めた。


「絵本の中身は本当にあった事じゃ、貴方たちはコーライズから来たのじゃろ?」


「っ……」

 なぜ?コーライズ国のことを知っているんだ?

 五人は顔を見合わせた、イクシスはじんわりと汗が滲むのを感じた。

 大きく息を吸い込んで震える手に力を込めて握った。


「コーライズ国?それは何処の国ですか?」

 息シスの声が微かに震えていたのを感じた長老は......

「隠さんでもええ、この村の長老だけに伝えられてきたんじゃ。あんた達は印を持った者じゃろ。今は魔法で姿を変えているんじゃないか」


 全てを分かっているんだこの長老は……

 イクシス達は魔法といた。虹の瞳と黄金の髪なんて美しいんだ、長老も話に聞いてはいたが実物を観るのは初めてであまりの美しさに息を呑んだ。

「なんと美しい……息をするのも忘れとった、死ぬかと思ったぞ」

 一斉に笑い声が部屋を包んだ、緊張が解けて柔らかくなったまるで春のように。


「そうです、私達はコーライズ国から来た者です。絵本に書かれている事は事実ですか?」

「ああそうだ、本当にあった事じゃ」

 長老はゆっくり話し始めた。   



   14面


 「約千年前の話じゃ一人の女が子供連れてこの村に来た。彼女の名前は”リズ”」

 

 リズはコーライズを出ていたのか


「リズは誰も頼る者がおらずこの村に来た時も何日も飲まず食わずじゃった、村の入り口に行き倒れのようになっていたらしい。

 村のおさの息子が家に連れて帰ったんじゃ、魔法が解けた状態じゃったと聞いている。多分あの綺麗な瞳と黄金の髪を見たのじゃろ、長の息子は彼女をたいそう気に入ったらしく連れとった息子ともども家に置いてその後は結婚したらしい」

「リズ達はこの村にずっと居たと言う事ですか?」

「ああ、ただ息子はこの村を出て行ったらしい」

「何処にいったんですかその息子は、後、リズと長の間には子供はいましたか?」

「子供は授かっとるよ、女の子じゃ。息子の方は十三になった歳にこの村を出ていった」

「出て何処に?」

「ここからさらに北に行った所に雪の森と言われとる森があるそこに行ったと聞いている、実はここまでしか分っとらんのじゃ息子のことは、先のことは雪の森に行ってそこに居る老人に聞いて見たらいいじゃろ」

「女の子はその後どうなったんですか?」

「ああ、その子は印を持っとらんかった父親似で美人ではあったらしい、隣村の長の息子と結婚したと聞いてる、ただそこで産んだ子は印持ちだったようだが印のことはこの村の少数の者だけが知る事実彼女は不貞を疑われ離婚してこの村に帰ってきたんじゃ」

「そんな……」

「だから隠して育てた大きくなって魔法を上手に使うようになってから外に出れるようになったが、その後何年かしてリズが亡くなってからは子供達に事は有耶無耶うやむやで言い伝えもそこまでじゃ」 

 印を持った女の子がどうなったか……印持ちは血を絶やさずに生きているはずだ、でなければ今ここフィヨルドに印を持った王女が生まれる筈がない。


「雪の森に行ってみよと思います。ここからどれくらいありますか?」

「半日ほどかかるがもう今日は止めておいた方がいいじゃろ、夜になると賊が出る。明日朝から行った方がいい」

「分かりました、そうします」


「夜明け前に雪の森に出発しよう」

「ああ」

 イクシス達は村を後にして宿屋へ帰った明日のために。



   15面 


 翌日夜明け前に雪の森に出発した。


「なぁ〜俺たちって国王に謁見するために来たんじゃなかたっけ?」

「ふふ……言うな、イクシス当初の目的とは随分方向が違うようだがどうかな?」

 イクシスは頭をガシガシ掻きながら(かきながら)軽く鼻を鳴らした。

「いきなり謁見と言っても取り合ってくれないだろきっかけが欲しくて」

「で、絵本を思い出したのか?」

「ああ、内容が気になって、それに村で隠された言い伝えがあったとは思わなかった」

「老人は内容が事実だとは言っていたが今現在の事ではないし言い伝えだからな事実かどうかがますます気になる」

「うん、まずはリズの残された子供や孫達のその後を追おう」


 どれくらい歩いただろうか、森が急に開けた目の前に湖が広がっていたその向こうにこじんまりした家が見えた。

「あれかな?」

 湖の辺りを(ほとり) 見える家までゆっくり進んで行った。

 コンコン ノックしてみた……が返事はない。

 もう一度 でもやっぱり返事はない


「留守なんだろうか?」

「少し待ってみよう」


 どれくらい時間が経ったんだろう

 カサカサ 音のする方へ一斉にみんなが振り返った。

 バァーザザガサ 茶色の何かがイクシス目掛けて飛びついて来た、倒されたイクシスの顔をベロベロ呑めている。

 魔導師の中でも一番の魔力を持つイクシスが呆気なく(あっけなく)やられた

 顔がヨダレでデロデロだ……みんなちょっと引いてる。

 間をおいて皆んなが一斉に大笑いした、スペクルムが割れてから重苦しい空気が七人を支配していた久々に腹の底から声を出して笑ったような気がした。


「こらこら、ベル。いやぁーすまんね」

「い いえ、大丈夫ですよ」

「旅の方々かね?」

「はい、イーチャル村から来ました村に伝わる絵本について調べててここに来たら詳しく教えてくれると聞いてやって来ました」

「ふーん、長に(おさ)話を聞いたのか」

「ええ」

「コーライズから来たのか」

「え ええ」

 やはりこの老人もコーライズの事は知っているようだ。


「始まりの子の事を聞きたいんじゃろ?」

「始まりの子?ですか?」

「始まりの子の名前はノーク、最初にこの地に来たリズの子供じゃ」

「そうその子の事です、絵本のモデルになった子供ですよね?」

「絵本は三百年前の話じゃノークは千年前じゃ同じ人物なわけない」

「っえ!」

「違う人物なのですか?」

「そうじゃ......」

 老人は訝しげ《いぶかしげ》な顔で少し眉間にしわを寄せた。

 三百年前?

「三百年前の王子は誰ですか?」

 老人は応えなかった。

 仕方なくイクシスは、

「その、始まりの子のその後は?」

「あの子は相当な剣の使い手じゃったらしい、その腕を買われ当時の国王が召し上げたそうじゃ。まだ国が安定とは言えなかった時代だった事もあってな……数々の功績を上げて爵位を賜り近衛隊の隊長をつとめたと伝わっておる」

「立派な方だったんですね」

「リズが亡くなった後残された子供と孫のことも伝わっていますか?」

「ああ、村からノークの所に移り住んだと伝わっていている」

「あの容姿じゃかなり目立ったと思うが当時容姿を知っていたのは王と一部の側近だけだったようじゃ。まぁ〜今では王族にのみ現れる姿のようじゃが」

 

 王族にだけ?

 老人は頷き話を続けた。



   16面


 やはり何らかの形でフィヨルドに印を持った者が子孫を残していたと言うことか。でも王族だけ?


「そう、それでノークは国王の側近の貴族と婚姻したそうじゃ、妹の方も子供が居って離婚していたがやっぱり王の側近の貴族の三男と結婚したようじゃ、どちらの貴族も王に忠誠を誓っている由緒ある貴族じゃ今もこの国の二代貴族じゃよ」

「その事をきっかけに王政の中心へと入っていったのですか?」

「でも今は王族のみに印を持った者が生まれるんですよね?王政の中心と言っても王族とは違いますよね、どの段階で誰が王族と婚姻を結んだんですか?」


「うん、五百年ほど前にノークの直系の娘が王太子と婚姻を結んだその後やっと王子が誕生したんじゃ、その王子が絵本のモデルになった王子じゃが……何代後だったかな?」

「そのノークの直系の娘が王太子と結婚して生まれた子供の中から第一王女が南の国に政略結婚で嫁いだ」

「南の国ですか?政略結婚?」

「ああ、今まで他所の国と政略結婚など行われていなかったんじゃが……」

「南の国にも印を持った者がいると言う事ですか?そもそも何故国外に出したのですか?」

「うーんなんて言ったかな貴族の名前が出てこん……」


 老人はそう言いながら席を立って奥の部屋に行った。

「ふふ、おじいさんももう歳なんでね忘れる事が多くなりました」

  奥から何冊かの本を手に出てきた。


「わしも歳じゃで記憶も曖昧になって…これはノークが書いた日記の写しと死後ペリュリウス家の当主が代々書いてきた日記の写しじゃ」

「ペ ペリュリウス? って誰ですか?」

「ノークが爵位を頂いてからの名前じゃよ」

「あぁー」皆んな納得して頷いた。

「お借りしても?」

「ああ、じゃがこの家からは持ち出し禁止じゃ」

「そこに西の国に嫁いだ経緯が書いてあるはずじゃ、確かイクシスが亡くなった後じゃからこの辺りかの」

「もう一つ聞いていいですか?」

「何かな?」

「印を持った者が生まれたら何か目立って良いことが起こるんですか?」

????「あんた達は印持ちじゃろ? なんで分からんのじゃ?」

 イクシス達は顔を見合わせた。

「あんたらの国は皆んな印持ちか?」

「ええ」

「ああ、それでか。皆んなが印持ちじゃったら恩恵を毎日受け取っとるから気がつかんのじゃな。気候が安定して作物がよく育つんじゃ、ノークの領地は他が不作の時でも豊作じゃった領地民は皆ニコニコしていつも幸せそうじゃったらしい」

 

 そうか俺らあんなに寒い地域なのに、しかも地下で日も当たらないのに外と変わらず生活出来るのは印持ちのおかげなんだな。

 納得したように皆んなが頷いた。

 そしてまた皆んなが日記をさがしだした。



   17面


  日記より  二月二十九日

 

 ”もう時期建国歳が行われる。三ヶ月もすると新緑の季節と共に王太子の誕生日だ、今回は誕生祭も兼ねている。

 印を持った王太子が久しく誕生していなかったので今回の誕生祭は盛大なものになるだろう、国内外の貴族をはじめ国賓もやって来る。

 中でも南のサジュアル国より王太子が参列される、海に面したこの国は我が国いとって重要な国である約百年前に嫁いで行った第一皇女は印を持った御方であった貿易が盛んであったあの国と強い結びつきを持ちたかった当時の国王によって行われた政略結婚であった、宝石により我が国はかなりの利益を得た”


 政略結婚の目的は国益だったのか。


「おじいさん、この国は今でも鉱山からかなりの利益が出ているのですか?」

「あ〜ちょっと前まではそうだったよ、だがここの所悪天候も頻繁におきておって作物は勿論鉱山の産出量も昔の比べたら減ってきとるらしい」

「その異変っていつ頃からかわかりますか?」

「それも日記に書いてあったと思うが……」


 イクシス達はとても一日では終わらないと理解した、この日記も持ち帰れないのでここに滞在するしかなかった。


「おじいさんお願いがあるのですが……」

「とても言い難いのですが後何日で終わるか見当がつきません、つきましては終わるまでここに滞在させてもらえませんか? 勿論お金は払います、その他に私どもで出来るお手伝いはさせて下さい」

「……どうでしょうか?」


「ここにおるのは構わんが寝床がなくて……なんせ狭いもんで」

 顔を赤らめ頭をカキカキする仕草がなんとも言えず愛らしかった。

「大丈夫ですそこは表に野営のテントを張らせて下さい」

「ああ、が 大丈夫かな?かなり寒いぞここは」

「そのへんは大丈夫です我々の住んでいる所はもっと寒い地域ですから」

 そう言ってイクシス達はまた日記を調べはじめた。

 夕方になりあっという間にテントの設営を終え老人が持って来た日記をテントにもった入った。


 翌朝のこと。


「おはよう、よく眠れたかな?」

「ええ、ぐっすりと」

「日記は全部読んだかな?」

「ええ、ですが欲しい情報は得られませんでした』

「ではこちらに来なさい」

 そう言って老人は昨日日記を出してきた奥の部屋に案内した。

 首からぶら下げた鍵を取り出し開けた、ガチャという音と共に空気が震えたのが分かった。

空間がひろがった?


「ここは今までの日記が収めてある部屋じゃ、始まりの子、ノークが創ってくれた部屋じゃ」

 中に入って驚いた。びっくりするぐらい大きかった


「こ これは……大きい」

 思わず感嘆の声を上げた。予想以上に大きく流石(さすが)最高の魔導師だ。

「もっと狭い部屋かと思いました」

「ノークが魔法で空間を拡げてくれたらしい」


 そうかノークはスノークの息子、最高の魔導師だ全ての力を持っていても不思議はない。

 そしてまた皆で日記を見始めた。



   18面


 どれくらいの時間が経っただろうか。五人は黙々と日記を見ていた。

 サジアルが 「ここ、この日の日記……」


”ここ一週間雨が降り続いている、今までこんなに降り続いたことはなかった、しかもまだ冬には早いがいつもよりは遥かに気温が低い。寒いのだ……まさか雪は降らないよな?”


”あれから二週間、あの時思った事が現実になった。雪が降った、うっすらとだが国中が白くなった。どうなっているんだ? 雪が降ったことで作物にも影響が出ている収穫前の作物が駄目になっている”


「この頃から気候に異変が起きてるんだな」

「何年まえだ?」

「棚の色が紫だから四百年前か……」

「何が原因なのかな?今までは無かったんだよなこんな事」

 イクシスは何か感じたにか 

「一度コーライズに帰ろうと思う、皆んなはこのまま日記読み進めて重要なポイントを探しといてくれ」

「ああ、分かった」


 ここコーライズでは。

 

 移時日記を調べていたカロナ達三人は南の国の日記の中に気になる記述を見つけた。


”なんだ!!今まで見たことのない?髪の色が、瞳の色が見たことない色をしているこんな事があって良いのか?国王に報告しなくては”


「ねぇーここ見て、これって俺達と同じ姿ってこと?でしょ?」

「うん?……そうだな」

「フィヨルド国以外で印を持った者のことが書かれているとはな」

「で、南の国でその後どうなったか書かれてるか?」

「うん」

”国王にあの容姿のことを話した、国王はかなり驚かれていたようだ。だがその容姿がもたらすものは何なのかが国王が知りたいようだ。少しフィヨルドに探りを入れる必要がある、式典の後間諜を置いて国に帰る事にした”


「今もフィヨルドに間諜は残っているんだろうか?」

「気になるね」

「イクシス達の方はどうなってるかな」

 

 シュー 風と音ともに現れた イクシスが帰ってきた。

 あまりのタイミングの良さに言葉が出なかった、半笑いの三人を見てイクシスの目が点になった。

「何?この雰囲気」

「今ちょうどイクシス達の話をしていたんだ。どうしてるかなってすごいタイミング」

「で、フィヨルドの方で何か動きがあったからか帰ってきたんでしょ」

「簡単に言えば絵本の話は実際にあった事にようだ、それが約三百年前の話だそうだ私はてっきり千年前の話かと思っていたんだが……それとフィヨルドから南の国に嫁いで行った王女がいたみたいなんだ」

「それ!!南の国に?」

「ああ」

「イクシスこれ見て」

 そう言ってカロナが見せた。

「この先どうなったか分かった?」

「まだこれからって時にイクシス登場ったやつ」

「何だそれ」

 顔を見合わせ皆んなで笑みを浮かべてまた調べ始めた。



   19面


 ここまででわかった事は、絵本は事実で三百年前の出来事であること。

 更にもう百年前には南の国にフィヨルドから第一王女が嫁いで行った。

 更に約千年前には、あの出来事からリズがコーライズを出てフィヨルドに移り住んだ事もわかった。

 その後子孫が今の時代まで続いていることも分かった。

 そして……印持ちが生まれなくなっている事、気候の変化で作物の育ち、国の主要な産業である鉱山の産出量の変化が落ちてきている事もわかった。


「だが鉱山は無限に産出できるわけではないから量が減っても不思議ではないと思ってる。以上がフィヨルドで分かった大まかな事だ」

「そうだイクシスは何で帰ってきたの?」

「ただ……今までの事をお互い共有しといた方が良いかと思って。ウィーゴ達の方はどうだ?」

「僕はコーライズの方を調べててリズがコーライズを出た事は書かれていたよ、でもその先はリズのことは書かれてなかったリリアーヌのことは書かれていたね。リリアーヌはあの事件の後スノークが残した手紙を見てかなり後悔をした様だった再婚をする事なく別れた後に生まれた女の子と三人で暮らしたって書いてあったよ。更に長男は父親であるスノークと同じ最高の魔導師だったらしい」

 カロナの方は?

「ちょうど南の国の日記を読んでいた所だよ。印を持った者のことが書かれているにはいるんだが……何故フィヨルドから嫁いだのか詳しく書かれてなくて」

「フィヨルドの方にも書いてないか?」

「うんそうなんだ書かれてない」

 

 これはどういう事なんだろうか?どちらの国にも書かれてないとは。いや、待てよ日記は日記でも雪の森の日記には書かれているかもしれない。

 少ししてイクシスは……

「ちょっとフィヨルドに帰る」

「え!!さっき来たばっかりだけど、もう?」

「ああ実は今フィヨルドの雪の森というところにいてそこにはリズの子供達がその後どうなったかとか王室にどうやって印持ちが誕生するようになったかが書かれた日記が置いてあるんだ、だから北と南の国に書かれてないのなら雪の森に書かれているかもしれない」

「帰る」

「ああ〜わ 分かった、気をつけて」

 イクシスはあっという間に消えた。

「嵐のようだな」

「帰るってどっちが家だよ」

 カロナが苦笑いしていた。

 

 フィヨルドの雪の森に帰ってきたイクシスはフィヨルドから第一王女が何故南の国に嫁いでいったのかを調べる事にした。


「帰ってくるの早くないか? で、どうだった」

「何かわかったのか?」

「南の国に第一王女が嫁いでいっただろ、その経緯がちょっとわかった。向こうの日記にはこの髪色と瞳の色を偶然どこかで目にしたんだと思う。だがそれ以上は書かれていなくて、だからこっちの日記に理由が書いてあるんんじゃないかと思って……」


「この印が他の国に知られたとは書いてなかったか?」

「そう急に他国へ嫁がせたのがおかしいと思ったから何かそれに関して書いてないか探したんだけどそれらしいことが書いてないんだ」

 ここで行き詰まったイクシス達。

「やはり王への謁見がどうしても必要だな」


 長期戦は間違いないようだ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ