4話.離別(中)
固有魔法を習得してから訓練の内容は大幅に変更された。
あの後、力加減を間違えて折れてしまった足と手首の骨を治してもらい、お兄様達に見てもらいながら色々と試してみた結果、私の魔法は肉体強化の魔法である事が分かった。
クリスのものみたく特殊で面白い魔法を使いたいと思っていたから最初は少しがっかりしていたが、複雑なものだったら私に扱えるとは思えないので結局はこれで良かったのだと思う。
実のところ肉体強化は私の近距離戦をモットーとする戦闘スタイルに非常によく適合していて、その名の通り魔法の発動中に身体能力の上昇を引き起こす――単純であるが故の強さ。それを感じる事ができた。
訓練内容も至って単純だった。固有魔法を習得したからと言って選択肢が劇的に増えると言う訳ではなかった。以前より早く動け、力強く技を繰り出せる、それだけだった。
しかし、その振れ幅が大きすぎるが故に自分自身の肉体をも破壊してしまうため、力の調節から始めて行った。
始めたばかりの内は、どうやっても力を込めただけで体のどこかしらを負傷してしまうため発現したものの無意味な魔法だと思い毎晩枕を濡らしていた。
けれども、強化の有効範囲が筋肉だけでないという事にふと気がつき、理解してから出力をある程度抑えれば怪我を伴わずに魔法を使用できる事が分かった。
「それで、貴女は天下無敵の脳筋魔法使いになってしまったのかしら?」
「いや、意識したところしか体は強化できないし力が入りすぎてもダメね。今はとにかく体を制御する為の訓練で、少しでも精度と出力を上げようと頑張ってるところよ!」
「なるほどねぇ。まぁ精々これ以上私たちのお世話にならないように努力するといいわ」
「それは…まだしばらく治療をお願いすることになるとは思うけど。減らせるようにはするわ!」
「そうね、私も貴女の体が嫌な方向にぐにゃぐにゃ曲がっているところ、もう見たくはないもの」
「別に私も好きでやってるわけじゃないんだけどね…」
手の上にクリスを乗せ、上下させながら会話を続ける。
この様に落ち着いている時にはある程度の高い精度で体を操作する事が可能となってきた。
しかし、このままクリスを乗せながら戦ったりや戦っている最中に咄嗟に特定の場所を強化することなどはまだできない。
全て無意識のまま扱える様になるまで特訓していく他ない。苦痛を伴う訓練ではあるものの、目標が明確であり成長していることが分かりやすい分やる気は比較的保ちやすいため、このまま続けていけるはずだ。
………………
そんな日を半年ほど重ねた。
未だ十全には使う事が出来ないものの、出力を極端に上げすぎて自傷してしまうことはほとんどなくなってきた。
ある程度制御できる様になってきたと言うわけで、最近は別々に行なっていた固有魔法の訓練とこれまで行なっていた訓練とを同時に実施するようになった。
習得初期に言われた時はよく分かっていなかったが、正直この魔法は私にピッタリだ。性格上でも、これまで鍛えてきた魔法や戦闘の能力を鑑みても。
相手を視界の中に補足したら直接、あるいは間接的に魔法で動きを阻害させつつ煙幕や壁を作り身体強化を組み合わせ一気に距離を詰めて近接戦に持ち込む。
このような所謂勝ちパターンも大分板についてきて、まごつくことなく動く事ができるようになってきた。
これならば、相手が余程私を上回る魔法の使い手でもない限り戦うことができる。近距離での戦闘の差し合いで勝てなかっだ場合はどうしようもないが、その時は同じような手を使い尻尾を巻いて逃げる他ない。その様なことはそう起きないと思うけど。
この間町の南にある冒険者街に用事があり、そこにいた人たちを見て思ってしまった。私は雑多な人間より強いと。
小金を稼ぎに地方から上ってきた真新しい装備を身につけた少女達よりも、手入れのよく行き届いた格好をしている物腰の鋭い様子の中堅剣士よりも、体中に傷跡を残しそれを見せつけるかのごとく上半身を晒し大声で騒ぐ野蛮な男よりも、一目で自分の方が強いと分かって分かってしまったのだ。
その時同時に思った、このまま固有魔法を完全にマスターする事が出来たら最強の魔法使いになれるのではないかと。誰しもが一度は憧れる最強に。
それからと言うもの一層自分の戦闘スキルを磨き上げることに邁進した。
もちろん午後には暇そうにしているメイド達や姉弟を捕まえてのんびりお茶会を開いたりだとか遊ぶこともあったが、日々の訓練を怠る日はなかった。
そんな私の雰囲気を察してか、クリスは言うまでもないがメルファとロリスまでも最近は真剣に訓練に臨んでいる様子が伺える。
クリスはかれこれ数年研究している使役魔法の進行状況が良好らしく、月に何日かは難しい顔をしていることがあるがこの頃は午後も顔を出す事が多い。
お兄様はどうも忙しいらしく訓練にも余り参加できていない。
去年からベルクリン大陸北部全域で魔物が頻出しており、その力も徐々にではあるが増しているらしくその問題解決に奔走しているそうだ。
原因はまだ分かっていないらしいが、一部には大陸全域で土地に基づく魔力濃度が上がってきているいるからだと言われているとお兄様が説明してくれた。
先日冒険者街に行ったのもその件で、冒険者や騎士団でも手が回らない仕事があるそうで我が家の腕の立つ使用人に依頼が舞い込んできたと言うわけだ。
ちなみにそこでは近場の村や森に出現した魔物の討伐や賊の排除をはじめ、無くし物や人探しなどの色々な仕事が募集されるらしい。
その他にも近場のダンジョンなどで入手した物品の買取、それらの加工品とダンジョンに向かう際に必要な道具や日用品など様々な物の販売まで行われていた。
私は南の町へ行ったことがなかったので我儘を言い、ついて行かせて貰った。その後流石に任務の同行は危険だからと家に帰らされてしまったが。いつか行ってみたいものだ。
そんなことを考えていたら気づけば夕食を食べ終えていた。もったいない、もっと味わって食べたかったのに。
そんな風に思いコップの底に残っていたスープを集めて飲み込んでいると、同様に食事を終えたメルファがこちらへ歩み寄り声をかけにきた。
「食べ終わったなら、そろそろ行きましょうかタキセルお姉様」
「?、何か用があったっけ?」
「もう、今日は夕飯の後みんなでお風呂に入りましょうって今朝話したじゃないですか!もう忘れちゃったんですか?僕は楽しみにしていましたのに」
両手をあげ怒った顔をして不満を言う。むくれたようなそぶりも可愛いらしい。
拍子で服の隙間から脇とおへそがちらちらと見える。吸い寄せられるようにそちらを見てしまう。
何となく罪悪感を覚え、目線を下に向け言い訳を述べる。
「いやいや、まさか私がメルファとの約束を忘れるわけないじゃない。むしろ楽しみすぎて言い出しにくかっただけよ。何なら今すぐこのまま行っても良いわ。ここで服を脱いで行っても良いくらい」
慌てて意味の分からないことを言ってしまった。
というか、よく考えたらこれから一緒にお風呂に入るのだからおへそくらい見ただけで何だと言うのか。
「ちょちょちょ。だめですよ、脱衣所に行ってからにして下さい!」
メルファが顔を赤くし服の裾を掴む私の手を押さえる。
か、顔が近い。折角だから近くで良く見ると、肌がきめ細かくつるつるのモチモチであることが分かる。睫毛も長く唇もぷるぷるだ。
何か未知の物質で顔が作られてるのではないだろうか。
そんな気さえする。
「冗談よ。クリスたちもそろそろ向かう頃かしらね。私たちも行きましょう?」
「だから、そう言っていますのに…」
すっかり呆れてしまっているメルファの手を引き一緒に食堂を出ていく。
その手はマメが多く出来ていて、つるつるとしたその腕や手の甲からは想像のつかないものだ。
私たち兄妹の掌――努力の証のようなものだ。不恰好ではあるけれど、私はこの感触が好きだ。
………………
「ふぅー…。やっぱりお風呂は最高なの!」
「文字通り身体中に熱が染み渡って行くようね…。
タキセル達もさっさと入りなさい」
「うるさいわね、私だって入れるもんなら入ってるわよ。
最近髪が随分と伸びてきて洗うのにも時間がかかるのよね…
いっそのこと切っちゃおうかしら」
「駄目よ。髪を伸ばすのは魔法使いの基本よ、特に貴女はあまり得意じゃないのだから短くするなんてもっての外ね」
「分かってるわよ。言ってみただけ」
文句を言いながらも洗う前に十分髪を梳かし、その後髪を温かいお湯で丁寧に流していく。
この作業だけでも時間がかかる。以前はもっと適当に洗っていたのだが、毎度クリスが指摘してくるから逆らって喧嘩する方が余計に時間がかかるし疲れるので言われるまま、きちんと洗うようになった。
ちなみに、魔法使いの大半が髪を伸ばしているのは単にファッションという理由だけではなく、髪の毛が魔力の通りが良いため体を覆い隠す程の長い髪が魔法の安定化を促すためでもある。
そのため、髪の有無が誤差になる位魔力の操作に余程自信がある、あるいは髪の毛など体の一部を代償とする魔法を扱うものでもない限りは魔法を使うのであれば往々にして長髪となるので、髪の手入れは魔法使いとしての宿命でもあるのだ。
当然隣に座っているメルファも腰より下まで髪を伸ばしている。
白みのかかる金の髪は絹のように柔そうで艶があり、水を含んで鏡のように輝き、その綺麗さに惹かれ思わず手に取ると見た目の通りふわふわとしており、さらさらと手から溢れていった。
つい、そのまま顔へと持っていき匂いを嗅ごうとしてしまったが、思い直し自分の髪の世話に戻ることにした。
そんなこんなで髪と身体を洗い流しゆっくりと湯船へ浸かる。
全身を沈めると温度差によってか手足の先にぴりぴりとした感覚を覚えた後、体の力が抜けていく。
思わず気の抜けた声が漏れてしまうのも仕方のないことだ。
続いてメルファも身体を洗い終え私の隣へと座る。
長い髪が浮力に負け水面に浮かぶ。そのままでは髪が痛む原因にもなるため、結ってやろうと髪を手に取ると、普段陽の光を受けていない白いうなじが見えた。
毎日外で訓練や遊びを繰り返すことで小麦色に焼けた肌とは対照的なその肌を横目に、髪を頭の上へと団子上にして纏め終える。
なお、髪を結っていた間メルファの視線はずっと私の胸周辺へと向けられていた。いくらなんでもこの至近距離で注視されると照れてしまう。
「ちょっと……、流石に見過ぎよ!」
「おっと、申し訳ありません。ついつい釘付けになってしまいましたね…」
「ついって…、あんまり女性のそう言う場所をじっと見ちゃいけないわ、失礼よ。
と言うか、もしかしてあなたメイドと入る時にもそうしてるの…?」
「い、いえまさかそんなことは…ないですよ?お姉様とお風呂にゆっくり入るのが久しぶりだったので。」
「本当かしら?」
「当たり前じゃないですか!…たまに触らせてくれたりはあったりしますけど」
「ハァ?胸を?!」
「たまにですよ、たまに!
もちろん僕の方から無理にと言う訳じゃなくて、あちらの方から進んでですよ。今日はそういう気分だからどうぞって言われた日はこちらも遠慮せず」
「だからって言いわけないじゃない!完全に変態の所業よ、許せないわ!」
可愛い弟の純潔の危機を察知し思わず声を荒げてしまう。
そもそも10歳以上も歳の離れた子にさせていい所業ではない。
いくら本人が望んでるとは言え、到底許容できるものではない。
「これからは、メイドとの入浴は無しよ!私たちと入ってもらうから!」
「そんな、殺生な!せめて月に2度、いや1度だけはお許し下さい…」
涙で潤む円な瞳に懇願され、心が揺らぐ。
でも、まぁ確かに本人が嫌がっていないし相手が同意してるなら、私の判断で厳しく抑えつけてしまうのは返って良くないのかも。
「そっ、そうねやっぱりそれくらいなら別に良いのじゃないかしら…」
「駄目に決まっているでしょう」
いつの間にか隣に座っていたクリスが口を挟んでくる。
「あら、聞いていたの」
「そんな話をこれだけ大きな声でしていたら、聞こうとしなくても勝手に耳に入ってくるわよ。
…それでお風呂の話だけど、良いわけがないわ。
そのまま関係をその続けてメルファが大きくなった時に子供ができるような事があれば大変じゃない。
話を聞いた様子じゃメルファも成長したらそう言うことに興味を持つでしょうし、メイドも断ることもなさそうでしょう?」
「それは!そう…かもしれませんが」
クリスに注意されメルファがしょんぼりと肩を落としてしまう。
突然話に割って入ってきた上での強い物言いについムッとしてしまう。
「何よ急に、お風呂に入っておっぱいを触る話と子供の話に何の関係があるって言うの?
意味不明な事を急に並べ立てないで欲しいわ、クリスらしくもない」
「関係無いことはないでしょう?」
「無いわ。そもそも、子供って男の人と一緒にベッドで寝るとできるものなんでしょう?」
「それだけじゃないわ、貴女はまた話を適当に聞いて…」
クリスがため息混じりに私を見つめてくる。
この顔は説教をする時の顔だ。私が話半分に講義を聞いているのは事実なので反論ができないのが余計に面倒だ。
「この際私が教えて…」
「ま、まぁ今は折角お風呂に入っていることですし、ゆっくりしましょうよ!
僕のことはまた今度相談して決めさせてください」
メルファがこちらへ向かってくるクリスと私の間に入り彼女を鎮める。その向こうではロリスが湯に浸かり我知らぬ顔で天井をのほほんと見つめている。
「……そうね、メルファの言う通り今日の所は見逃してあげるわ。
でも、授業をきちんと聞かないといけないことも確かよ、損するのは貴女なのだから戦闘の事ばかりだけでなく、その方もちゃんとしなさい」
「はぁい以後気をつけまーす」
「全く…、メルファも今度メイドも交えて話し合いをするからそれまでにどうするか考えておきなさい」
「はい……肝に銘じておきます」
少しげんなりとした後、兄妹4人でのんびりと会話を楽しんだ。
………………
「それじゃあ、私達2人は先に出るから貴女達ものぼせる前に上がるのよ」
「お先なの〜」
先に入浴を始めていたクリスとロリスが髪を絞り、ハンドタオルで体を軽く拭きながら脱衣所へと帰って行く。
私も後少し温まってたら戻ろうかな。
腕を上へと伸ばし湯船の中でゆっくりと全身をストレッチしていく。
「さっきはありがとね」
「?、何のことですか?」
「私たちが喧嘩しそうになった時に仲裁してくれたことよ、メルファが間に入ってなかったら絶対口論になって最後にはクリスが床に打ち上げられるところだったわ」
「あれは…そもそも僕が撒いた種でしたから」
「まぁ確かにそれもそうね…ま、お礼は言っておくわ
それにしても今日のクリスは何だったのかしらね。
急に変なイチャモンつけてきて。
お風呂で子供なんてできるわけないわよね?」
「そっ、そうですよね!今日のクリスお姉様はどうしちゃったのかなー」
「よね!それはそうとメイドに変なことしちゃダメよ。そこについてはクリスと同意見よ」
「それは…気をつけます」
「立場上断れない子もいるかもしれないし権力を笠に振る舞うことは恥ずかしいことよ!」
「それはもう!分かってます。
僕からは頼むことはありませんし、触ることになったのも僕が見ていたら触ってみない?と聞かれたからなので」
「そ、そう。積極的な子がいるのね……。それにあなた」
「とっ、ところでこの前執事の方々が話していたのを耳にしたのですが」
「随分強引に話を逸らしたわね。まぁいいわ、どうしたの?」
私もついつい可愛い弟のためと思い説教臭くなってしまった。これじゃあクリスのことを悪くは言えないわね。慌てて話題を変えようとするメルファの仕草も可愛いなぁ。
「少し前から我が家の使用人が魔物の討伐の依頼受けている、と言う話を覚えていますか?」
「ええ、この前ギルドに行った時にソラフィニが周りの人たちに持て囃されて緩み切った顔を見せてたわね」
「ははは。絵に描いたようなニヤケ顔でひっそりとこちらの様子を伺ってましたね。
そのソラフィニさんは参加していなかったそうなのですが、うちの使用人とギルドの職員の複数人で僕たちの屋敷の北にある森に討伐の任務へ向かったら返り討ちにあい敗走したそうなんです」
「そんなまさか。そんな様子の人はいないように見えたけど」
我が家の使用人がボロボロになって帰ってきたところは全く見ていない。
任務に駆り出されそうな人と聞いて想像出来る中で何日か休養している人もいない筈だ。
「幸い死者も後遺症を負うような怪我をした人もいなかったそうですからね。
大方ここまで順調に任務を達成してきたことからの慢心と冒険者の方々からの尊敬の眼差しを受け良いところを見せようと躍起になってしまって考え無しに戦ってしまったんでしょうけど」
「なるほどねぇ、あの人たちでも失敗することがあるのねぇ。
それで、どんな魔物が相手だったのかとかは聞いてないの?」
「そうですね、大型の蜥蜴のような見た目をしていて動きは緩慢ながら背中などの皮膚は刃が通らないほど硬かったそうです」
「他には何か言ってなかった?」
「すぐに分かる特徴はそれくらいで傷を負わせることのできそうな腹側を何とか攻撃しようとしていたら、口から刺激性のある毒霧を吐かれ、それをもろに受けてしまったそうです」
「それでそれで?」
「突然の行動に慌てていたところに舌を使って素早く刺突をされ、そこに追い討ちをかけるように新しく獣型の魔獣の群れも現れたため逃げ出したそうです」
「へぇすごいわねぇ、まるで小説に出てくるような話ね!」
「そうでしょう、そうでしょう!」
本でしか聞いたことのないような体験を聞かされ思わずうきうきとしてしまう。
その話を語っているメルファも目を輝かせ、頬を紅潮させている。
「それで良く誰も欠けずに逃げられたものね、運が良かったわね」
「運が良かったのも勿論あるでしょうが、そこまで魔物が強くなかったのもあるでしょうね。
落ち着いて戦えていれば、毒も浴びることはなかったでしょうし、そんな状況でも逃げられるような魔物であれば楽に返り討ちにできたはずです」
「確かにそうねぇ、やっぱり油断はいけないのね」
「それはそうです。ほんの少しの気の緩みが死に繋がりますからね。
今回だって相手が弱かったから良かったものの、そうじゃなければ大惨事になっていたことでしょう」
メルファとうんうんと頷き、それから自分の好きな冒険譚について語り合った。
「…おっと話が長くなってしまいましたね。そろそろ出ましょうか」
「そうね、あんな話があった後だもの変に勘ぐられたりしたら嫌だものね」
「ハハハ…あまり笑えない話ですね…」
そう言い、メルファと一緒に湯船から出ようとした時に私は天啓を得た。
「そうよ!私たちでその魔物を倒しに行きましょう!」
「えぇ!?さっき話していた森のをですか?
無理無理、無理ですよそもそも勝手に屋敷の外に出ることすら許されていないのに、危険な森に、それも彼らですら討伐し損ねた魔物ですよ?許可される訳ないですって」
「許可なんて要らないわ、話を聞いてくれそうな子にこっそり話してバレる前にサッと帰ればいいのよ。
それに言っていた通り油断さえしなければ簡単に倒せるわ。だって弱点もその対策も分かっているじゃない!」
「もし黙って出たことが分かれば大変なことになっちゃいますよ?」
「うちの使用人たちが倒せなかった魔物よ?
叩きのめして持ち帰ってみせれば、きっと文句なんてないわよ」
「そうですかね…」
「そうよ!大丈夫、大丈夫。そもそも気づかれなければ良いのよ、無理そうならさーっと帰ってくればいいわ。
北にある森よね?
急げば行って帰ってくるのに3時間もかからないわ!」
「でも…」
「何よ、怖いの?それだったらやめておこうかしら」
「そんなこと、無いですよ。
これまでずっと訓練を続けてきたのですから、僕とタキセルお姉様にかかれば、蜥蜴なんてイチコロです」
ちょっと挑発してあげたら簡単にノってくれた。
そんなチョロいところも可愛いポイントだ。
「それで、クリスお姉様とロリスお姉様はどうするんです?」
「クリスは頭が硬いからダメね。戦力的には来てくれた方が嬉しいんだけど…、行きたいって言ったらきっと反対するに違いないわ」
「それもそうですね」
「ロリスはきっと皆に話してしまうわ、あの子お喋りだもの。
それに魔物との戦闘はロリスには少し厳しいと思うわ。そもそもあの子あまりこう言うのは好きじゃ無いし」
「では、2人でさっと行きましょう」
「そうしましょう。スッといってちゃっと倒しちゃえば何も問題ないわね
では近いうちに機会を探って北の森へ出発進行よ!」
「ヨーソロー!」
完璧な計画が建てることができ、ウキウキと湯船から上がると各々コソコソと自室へ帰って行った。