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01 独身禁止法違反

昔話パロディシリーズ第二弾です。独身差別的な表現、虐め表現等がありますので、ご注意ください。

          ♡



 21XX年。日本の合計特殊出生率はついに0.5を下回った。この国家存亡の危機に、政府は異次元の少子化対策を打ち出した。『独身禁止法』ーー全国民に結婚を義務付けたのである。


 それから数十年後。カフェ店員・月出輝夜(つきでかぐや)は、子供家庭庁 少子対策課に呼び出された。そこで独身である理由を根掘り葉掘り訊かれ、心底ウンザリしていた。


 担当の中年女性は、婚活ログを見ながら言った。 


「去年、DNA婚の案内もしましたよね? 会うだけ会えば良かったのに」


 遺伝的に相性の良い異性との官製見合いのことだ。輝夜は無愛想に答えた。


「相手が知り合いだったので…断りました」


「いつの知り合い?」


 しつこく訊かれ、渋々、子供の頃の話をした。紹介された男は、その昔、有名私立小を追い出され、輝夜が通う公立小に転校してきたクソガキだ。大人の見ていない所で嫌がらせをする天才だった。思い出すだけで吐き気がする。


「虐められてたんです。そいつに。だから絶対に嫌です」


「なるほど…。月出さんは現在、30歳。交際相手もおらず、性的少数者でもなく、シングルマザーでもないので、残念ながら独身禁止法違反です。この後、結婚の素晴らしさと、文明的な社会を守る意義を学んでいただきます。試聴時間は約3時間と長いので、お手洗いを済ませてからVR室に行ってください」


 そう言って、担当者は面談を打ち切った。



          ♡



(頑張れ。あと一息だ)


 輝夜は、トイレの鏡に映る自分を励ました。好きで独り身なわけではない。婚活だって頑張っている。良いご縁に巡り会えないだけだ。にも関わらず、30になった途端、この仕打ち。男性は40歳まで猶予があるのに。差別だ。


 だが、この圧迫面談と講習をクリアしないと、罰金が科される。彼女は深いため息をついてから、トイレを出た。


 VR室で椅子に座り、頭をすっぽりと覆うゴツいゴーグルを着けた。普段ゲームなどしないので、どんな映像なのか想像もできない。噂では昔話風の世界に没入するらしい。係の人はナースコールのようなスイッチを渡してきた。


「では開始します。途中で気分が悪くなったら、手元のボタンを押してください」


「はい」


 視界が真っ暗になる。輝夜の意識はそこで途切れた。


 

         ♡



 輝夜の両親はDNA婚だ。遺伝子以外は全く合わなかったらしく、団欒の記憶は無い。父は常に不在で、母は早々に育児を放棄。娘はAIシッターに育てられた。奨学金で大学を出た後は、実家と縁を切っている。


 だから、好きでもない男とは、絶対に結婚しない。


 

         ♡



 目が覚めると、薄暗い天井が見えた。VRの途中で眠ってしまったようだ。ゴーグルを外そうとして手を動かしたら、柔らかな何かが顔に触れた。周囲には円筒形のカプセルのような狭い空間が見える。


(青々した臭いまである。すごいなぁ。最近のVRって)


 輝夜は大人しく続きを観ることにした。しかし何分待っても映像に変化がない。少し不安になってきたので、緊急呼び出しボタンに手を伸ばした。しかし、


(無い!!)


 手探りで何度も探したが、ぷにぷにした自分の下半身しかなかった。怖くなって、大声で助けを求めた。


「オギャーっ!!オギャーっ!!」


 なぜか赤ん坊の泣き声しか聞こえない。音声もバグっている。外には聞こえていると信じて叫び続けたら、体が揺れ始めた。やがて、鉛色のギザギザした刃が、カプセルの上部を切り取った。


(!!)


 差し込む強烈な光に、思わず目を瞑る。


「おおっ!?」


 野太い声がすぐ近くで聞こえた。大きな影が光を遮ったので、恐る恐る目を開けると、赤い髪と赤い目の巨大なおっさんが見下ろしていた。


「ギャーっ!!」


 輝夜は絶叫した。デカい。デカ過ぎる。おまけに頭に2本の角が生えている。


「小さくて可愛いなぁ!」


 大鬼は彼女を布で包み、片腕に抱いて歩き出した。持って帰って食う気? 恐怖で矯正しようなんて、あまりに酷いプログラムだ。ぶるぶると震えて声も出ない。


 竹林を抜けた先に、世界遺産・白川郷の茅葺き屋根の家みたいなのが見えてきた。


「おーい!ローズ!見てみ!」


 おっさんが大声で外から呼びかける。すると家の中から若い女が出てきた。デカいからきっと鬼の妻だ。大女は輝夜を見て歓声を上げた。


「まああっ!()()()()()()()()()()()()()


(今、何て言った?)


「竹から泣き声が聞こえてよ。切ったら中にいたんだ。人族っぽいけど可愛いだろ?」


 赤いおっさんは輝夜を妻にそっと渡した。よくよく見ると女に角は無く、金髪碧眼で、妙に尖った耳をしている。怖いほど美しい顔が微笑みながら語りかけてきた。


「今日から私があなたのママよ!」


 違う。これ、VRじゃない。輝夜は再び意識を手放した。



 

 

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